第7話 悪のX
Mindcontrolの刀で天雅リンを洗脳する? 一応原作通りの展開にはできるだろうがバレたら洒落にならない。
ZZZの刀で天雅リンを眠らせ続ける? 問題の先送りにしかならない。
俺の正体を斬月ムサシロウと葉隠ナデシコに明かして協力を要請する? 信じてもらえるわけがない。
Criticalの刀で説得ロールを大成功させて強引に信じてもらう? そのために宝田姉弟を手にかける覚悟があるのか?
「詰んだ」
OK、一旦落ち着こう。状況は限りなく悪い。サブヒロインが主人公を爆殺する、二次創作でもようやらん前代未聞の急展開だ。
それを阻害するために俺にできることは何か? 天雅リンの命を奪う? それをやると斬月ムサシロウと致命的な敵対関係になってしまう。
サムライバー斬月を庇ってあの攻撃を防ぐ? その後はどうすればいい? 考えろ。考えるんだ俺!
「邪魔、しないでください!」
「Butterfly! エンゲェージ!」
「ポイズンストーム!」
「うわああああ!?」
『t-reX! Inferno! ダブル・エンゲェージ!』
「インフェルノファング!」
「きゃああああ!?」
考え抜いた結果、思った。俺が悪者になればすべて解決するのでは?
空中に浮かんだまま猛毒の鱗粉を粉塵爆発させて地上で大爆発を引き起こすというえげつない必殺技を放とうとしたサムライバー花月の背中を、いきなり斬り付ける。
羽を切り落としてしまわないように慎重に慎重に。
「天雅さん! お前は何者だ!?」
「御覧の通り。君らと同じサムライバーさ」
背中から斬り付けられたせいで必殺技をキャンセルされ、地べたに叩き落とされる憐れな蝶。そんな彼女に向かって俺は赤紫の炎をまとった紫の刀を振り上げる。
「危ない!」
当然、目の前でクラスメイトが斬られそうになれば庇わずにはいられないのが主人公のサガ。彼の赤い刀が俺の一撃を防ぎ、鍔迫り合いになる。
「何故邪魔をするんだい! そんなにも彼女の刀を横取りされたくないのかな!」
「違う! 僕は彼女を守りたいだけだ!」
「何故だい! 刀の奪い合いがサムライバーのなすべきことだろう!」
「違う! 僕たちはコロシアイなんかするべきじゃないんだ!」
「斬月くん!」
一度は殺そうとさえしたのに、それなのに命懸けで自分を守ってくれるクラスメイトの姿に、背中を斬られて息も絶え絶えに這い蹲るサムライバー花月が感動した声で叫ぶ。
「斬月!」
「葉隠さん!」
彼といい感じに斬り合っていると、サムライバー三日月こと葉隠ナデシコも駆け付けてきた。
「さすがに3対1では分が悪いね!」
『Inferno! エンゲェージ!』
「レイジオブインフェルノ!」
「待て!」
「危ない!」
ドオン! とすさまじい火柱が屋上駐車場に立ち昇り、猛烈な熱波で3人が怯む。安心して頂きたい。攻撃は空に向けたものだから、被害はほぼないよ。
俺は3人が怯んでいるうちに屋上から退散し、変刃を解除して非常階段から素早く建物内にすべり込んだ。防犯カメラはないな。よしよし。
「これで軌道修正が図れるといいんだけど」
俺が悪者になることであの3人が仲よくなれるのならそれに越したことはない。
後は信じるだけだ。斬月ムサシロウの主人公力を。一度失敗した分、今度こそ名誉挽回を頼むよ。
サムライバー図鑑
Ace 赤 斬月ムサシロウ/サムライバー斬月
Butterfly 青 天雅リン/サムライバー花月
Critical 緑 宝田エル/サムライバー満月
Fumble 赤 宝田エタ/サムライバー新月
Inferno 赤黒 円城フレア/サムライバー炎月
Joker 黒 葉隠ナデシコ/サムライバー三日月
Mindcontrol ?
t-reX 紫 竜崎ディノ/サムライバー竜月
todaY セピア 木野ギンジ/サムライバー古月
ZZZ ?