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第45話 わけありIX

 斯くして世界は2度目の修復を迎えた。


「マルチバースって知ってる?」


「おいやめろ。映画館で一番聴きたくないワードランキングナンバーワン(令和最新版俺調べ)やぞ」


 マルチバース。パラレルワールド。多次元宇宙。平行世界。呼び方はなんでもいいが、とにかくよく似た別の世界ってこった。


 放課後の木野珈琲店。珍しくちゃんと学校に行った俺は、ホイップクリーム山盛りの熱々ウインナコーヒーに口を付ける。


 厨房からは木野の爺さんが頑張って開発している新メニューのスパゲッティ・ナポリタンの香ばしい匂いが漂ってきて、期待に胸が膨らむね。


 喫茶店と言えばナポリタン! とのことだが、俺に言わせれば理解はできるけどあんまピンと来ない。チェーンの喫茶店ではケーキとかが主流だからさ。そもそも学校帰りにわざわざカフェでパスタ頼まんし。


「この世界をすべてのページに同じ絵が模写されたスケッチブックだと仮定するなら、僕のような特異点は千枚通しでスケッチブックに空けられた穴のようなものかな。みんなとは存在の前提が違うんだ」


「ふーん。だからこの世界で生きてない判定を食らったってわけ?」


「どこの世界にも同じ僕がいるけれど、どこの世界の住人でもない。紙に描かれた絵の内容と、絵が描かれている紙に空いた穴は、直接的には関係ないからね」


「それなら俺は、穴の空いた画用紙に後から書き足された落書きみたいなもんか。それとも名画にぶちまけられたスープとかかな?」


 俺も夢野も等しく紙に干渉された異物だけれど、その性質は異なると。


 それなのに死者と誤認されてスーパーニンジャソードの契約者に選ばれるなんて皮肉なもんだ。


「それならなんで俺がtodaYの刀を使うのを妨害したんだよ。なんの意味もねーじゃんか」


「意味ならあるよ。だって君、時を遡ったのに僕が記憶を継続していたら警戒するだろう? 君と僕が友達になったという事実を、なかったことにされたくなかったんだ」


「お待ちどおさん。喫茶店のスパゲッティ・ナポリタンお待ち」


「わあ、いい香りだね」


「美味そー! いただきまーす!」


 ちなみにナポリタンの代金はタダ。常連客を集めての試食会みたいなもんだ。俺と夢野が選ばれたのは現役の中高生だから。今時の若者に正直な感想をもらいたいそうで。


「どうだ? 美味いか?」


「調理実習で学生が頑張って作ったような味。不味くはないけど普通。店で800円出してこれなら400円の冷凍パスタでよくね?」


「でも、これはこれで味があっていいんじゃない? 僕は好きだよ」


「うわ、紙ナプキンで口を拭いた後だってのに、それでもコーヒーカップがオレンジ! 洗い物の手間増えるぜ?」


「うーむ、ナポリタンはやめておくべきか。喫茶店と言えばナポリタンだと思ったんだがなあ」


「そもそも学校帰りに学生が喫茶店でパスタ頼まんて。SNS映えするお洒落なカフェに行きたい女学生ならなおさら」


「お店の客層的には常連のお爺さんお婆さんがメインだから、お年寄り向けのご飯として出してみるのはどうかな。ランチメニュー限定で出せば、お昼ご飯を食べに来てくれるようになるかも」


「そうだな、それもいいかもしれん。そのためにもまずは料理の腕をみがかねば」


「あ、俺どうせならペペロンチーノ食べたい!」


「喫茶店でニンニクを出せるか阿呆!」


 ニャーン、と店の前を白猫が通りすぎていく。彼女が何を願ったのかは不明だが、世界は修復され、俺たちは無事日常に回帰できた。


『死刑囚・円城フレアの死刑実行される。遺族ら喜びの声』


『専業主婦刃物で腹部を刺されるも自力で通報。姉を現行犯逮捕』


『女子高生自宅で感電死。風呂場にスマホ持ち込み』


『元議員自宅で未成年淫行中に心臓麻痺で死亡。児童買春容疑で家宅捜索』


『部活動中に熱中症で緊急搬送の中学球児、意識不明の重態も奇跡的に回復』


『日系外国人女性飛行機内で服毒自殺。飛行機Uターン』


 スーパーニンジャソード争奪戦参加者たちは、順当に死んだ者もいれば死なずに済んだものもいる。


 あの白猫が何かを願ったのか、それとも世界が辻褄合わせを行ったのかは不明だが、とりま俺はライタ兄貴があの地雷女と結婚せずに済んで万々歳だ。


 心田イデアに関してはそもそも交通事故に遭わなかったことになったようで、すべての記憶を失い元気にしている。


 連鎖的に彼女を撥ねずに済んだトラック運転手も、何事もなく仕事を続けていることだろう。


「他のバースにもいろんなオーパーツがあるんだ。中にはそんなものが一切ない平和な世界もあるけどね」


「俺はもうやだぞ。いきなりデスゲームに巻き込まれてあたふたするのは二度と御免だね」


「そのわりには謎の宇宙忍者の忘れ形見を掠め取ったみたいだけれど?」


「朝起きたら枕元に転がってたんだよ! 心臓が止まるかと思ったわ!」


『XIII-TIME! t-reXIIIega!』


『ニンジャガ・ジャック! ニンジャッカー! ティーレックス・メガ! サメエイガ・デ・ゴザール!』


 陸の王者ティラノサウルスと海の王者メガロドンが奇跡の超融合! 両者のいいとこ取りを実現した無敵のティラノシャークが爆誕してしまった。


 確かに最後の戦いで、俺はあいつを斬った。でもだからって、こんなとんでも戦利品(ドロップアイテム)はいらん!


 スーパーニンジャソードは誰かの『死』に寄生する。どうやらこいつは俺の頭の中にある『前世の死の記憶』に寄生したようだ。


 細かい理屈は知らんがそーゆーことなんだろう。深く考えたら負けだ。


「フフ。僕は世界でたった独りの特異点だと思っていたのだけれど、君も僕と同じ、この世界にとっての仲間ハズレなんだね」


「嬉しそうに言うなや」


「だって嬉しいんだもの。真の意味で解り合える本当の友達に出会えたのだから。これからもよろしくね、竜崎ディノくん」


「友達料1億万円。ローンも可。ちなみに月額だかんな」


「それなら、毎月100円ずつ分割払いでお願いします」


 反省会も試食会も終わったので、俺は会計を済ませ店を出る。


「ごちそーさまでした。ナポリタンがメニューに並ぶようになったら兄貴と一緒に食べに来るよ」


「ああ、兄貴によろしくな」


「またね、竜崎ディノくん」


 夕暮れ時の谷欠市にはいい風が吹いていた。亡月市にはなんの思い入れもなかったからなあ。やっぱ生まれ育ったこの街のが落ち着く。


 それにしても、今回は本当に疲れた。原作知識のない戦いなんかもう二度とやりたくねー!


(兄貴、俺決めたよ。今度こそ死ぬまで親の、いや兄貴のすねをかじりながら、穀潰しのニート生活を満喫してやるんだからね!」




我竜転生~少年漫画の悪役噛ませ犬に転生しちゃった俺の恐るべき生存戦略~

今度こそ完?

∀rc 黒 方舟を司るスーパーサムライソード

XIII-TIME t-reXIIIega 青紫 サメ映画を司るスーパーニンジャソード

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