第42話 ヤバイヤバイVII
『アアアアアアアア!』
『ニンジャガ・ジャック失敗! VITal! エラー! エラー! エラー! マズゥーイ!』
「クソがよ! 暴走しやがったのか!」
脂身でできた巨大な肉人形が、赤ん坊のような形を作る。あまりにも気持ち悪いバケモノ。そいつはどんどん肥大化しながら膨張し始めた。
「ホラー映画は大嫌いなんだよお! ビビリを舐めるんじゃねーぞテメー!」
『フィーバータァーイム! t-reX! XUeen! 忍法キョーリューモオモワズゼツメツシチャウホドノヒョーガキ! の術! イエー!』
「コールドファング!」
無尽蔵に肥大化していくのではないかと恐ろしくなるほど膨張を続ける奴の巨体を瞬間凍結させ、忍者刀を叩き付けてバラバラに砕く。
『ニンジャガ・ジャック失敗! VITal! エラー! エラー! エラー! マズゥーイ!』
だが叩き割ったそばからその白い肉片が再生、いや復活? そのどちらでもない! そこから細胞分裂を繰り返して新たな人型になろうとしている!
クソがよ! アメーバよろしく無限増殖されたら堪ったもんじゃないぞ! どこまで膨張し続けるのかは知らんが、地球がこいつに呑み込まれてジ・エンドは勘弁だからな!
「だったらこいつだ!」
『サムライバル! ∀rc!』
「持っててよかった完全ガード! 神様仏様夢野様!」
「どういたしまして」
すべての攻撃を無効化する最強の方舟。そいつを俺ではなく、怪物に対し使ってやる。奴の白いブヨブヨの巨体が余すことなくすべて光の方舟に包まれる。
だが、増殖は止まらない。バイタル。名前からしておそらくは生命力を司る忍者刀か何かなのだろう。
それが暴走してあんなことになってるのなら、みずからの圧で自壊させてやればいい。
どんな攻撃も防ぐ最強の守りは、内側からの攻撃も防ぐ。無限に膨張し続けるパン生地を絶対割れないガラス瓶の中で発酵させたらどうなるか。
「あっ、ぶなかったあー!」
咄嗟の機転とひらめきにより、俺はなんとかブヨブヨ野郎を撃破することに成功したのだった。すげー恐ろしい決着だったな。最後の方なんか直視してらんなくて思わず目逸らしちゃったもん。
『IV-TIME! dIVa!』
『VII-TIME! VITal!』
『VIII-TIME! VULcan!』
『XI-TIME! jaXItheripper!』
ウルトラ平和同盟の仲間の形見である2本のスーパーニンジャソードと、ジャックの持っていた2本のスーパーニンジャソード。
一挙に4本もの忍者刀をゲットした俺は、夢野に不意打ちされないよう警戒しながらそれらとの契約を急ぎ済ませる。幸いにも奴が俺に攻撃してくることはなかった。
「イデア先輩……甲先輩……仇は取ったぜ」
甲シエン、15歳。3年生。俺、14歳。2年生。オーケー?
「いやいや。何イイハナシ風にまとめようとしているんだい?」
「なんだよ夢野。怒ってんのか?」
「まさか。僕にそんな権利はないよ」
「よくわかってるじゃないか。文句があるならお前が助けてやりゃあよかったんだ。俺は俺のやり方でやる。お前に指図されるいわれも、お前の顔色をうかがう必要もない」
とはいえ今回のピンチを切り抜けられたのは間違いなくこいつのお陰だ。
夢野が俺に∀のスーパーサムライソードをくれなければ、俺はどうやってあいつを倒せばいいのかわからず途方に暮れてしまうところだったのだから。
そんな恩人さえも斬らなきゃいけないかもしれない、というのは本当に辛い。涙が出そうになる。
最初は友達(笑)だったけど、俺だって人間だ。嫌でも付き合ってるうちに、こいつに友情めいたものを感じなかったのかと言われれば嘘になる。
「さっさとこんなくだらん戦い終わらせるぞ。黒幕をぶった切って、また文句なしに最高のハッピーエンドをもぎ取ってやる」
ニンジャッカー図鑑
I-TIME Inferno 赤 煉獄 円城フレア/ニンジャッカー炎星 死刑
II-TIME ?
III-TIME boIIIber 黒 爆弾 厚木サチヨ/ニンジャッカー爆星 刺殺
IV-TIME dIVa 銀色 歌姫 心田イデア/ニンジャッカー音星 轢き逃げ
V-TIME Voltage 黄色 雷 上石神井アゲハ/ニンジャッカー電星 感電死
VI-TIME VIper 緑 毒蛇 近藤ムネヒコ/ニンジャッカー毒星 腹上死
VII-TIME VITal 乳白色 契約者不明/ニンジャッカー乳星
VIII-TIME VULcan 赤 火山 甲シエン/ニンジャッカー溶星 熱中症
IX-TIME cIXlone 青緑 嵐 夢野メシヤ/ニンジャッカー風星 ?
X-TIME t-reX 紫 恐竜 竜崎ディノ/ニンジャッカー竜星 隕石直撃?
XI-TIME jaXTheripper 灰色 切り裂き魔 津久田トラジロウ/ニンジャッカー霧星 自殺
XII-TIME XUEEN 藍色 氷の女王 ルリエ・F・森/ニンジャッカー凍星 服毒自殺




