第39話 ウルトラ平和同盟とは
『IV-TIME! dIVa!』
『VIII-TIME! VULcan!』
ふたりは誠意の証だと、みずからのスーパーニンジャソードを開示した。心田イデアのディーヴァは知ってたけれど、甲シエンのは初見だ。
バルカンって火山のことだよな? てことは溶岩? 円城フレアのインフェルノとかぶってない? 大丈夫?
「ウルトラ平和同盟ってことは、おめーらは戦わねーってことか?」
「そうです! コロシアイなんてとんでもない!」
「確かに生き返りたいのは山々っスけど、だからって他人を殺してまで自分だけ、ってのはちょっと。息子が人殺しになったら父ちゃん母ちゃん泣いちゃうッス」
「人殺しになってでもいいから生きて返ってきてほしい、と思うと思うよ。普通の親なら」
「うちの親、そんなことしたらなんて恥知らずな子なんだい! 母ちゃん情けないよ! って猛烈にビンタすると思うッス」
随分人道的な親御さんのようだ。
「お前も同盟に参加しているのか」
「うん。平和的に話し合いで解決できるのなら、その方がいいじゃない? 誰だって好き好んでコロシアイなんかしたくないでしょ?」
俺の手持ちがI、III、V、VI、X、XIIの6本。こいつらの手持ちがIV、VIII、IXで3本。ジャックザリッパーがXIだったから、残るはIIとVIIか。あと設定ばかりでほんとにあるかはわからないXIII。
(ここでこいつらを一網打尽にできれば、ほぼ勝ち確の状態に持っていけるわけだが)
夢野を除けばこいつらにまともな戦闘経験があるとも思えん。やってやれないことはないだろう。人道には悖るが。
「生き残れるのはたった独りだけ。最後の独りになるまで争い合うバトルロワイヤル。それは理解してるんだろうな?」
「もちろんです! でも、それっておかしいじゃないですか! どうせ生き返れるのなら、ケチケチしないで全員生き返らせてくれてもいいのにって思いません?」
「それができないからこその争奪戦なんだろ」
「そんなの試してみないとわからないじゃないですか! 生き返れる権利を誰かが独り占めするんじゃなくて、みんなで平等に分け合う! やってみる価値はあると思うんです!」
臆面もなく堂々と言いきられてしまうとなんだか本当にできそうな気がしてくるから不思議だ。主人公だから説得ロールにバフがかかっているのだろうか。
「私たちは敵同士なんかじゃなく、急にこんなことに巻き込まれて迷惑してる仲間同士です! みんなで協力して全員で生き返れる方法を探しましょう!」
偽善的とは言うまい。いきなりこんな事件に巻き込まれて、それでも笑顔でそう言える善性は立派なものだ。
もし俺が異世界転生者でなくサムライバーとしての経験ないただの一般人であったならば、喜んで彼女の提案に飛び付いただろう。
「俺はイレブンの忍者刀を持つジャックザリッパー野郎に殺されかけたが、そいつとも話し合いができると思うか?」
「もちろんです! きっとその人も恐かったんじゃないでしょうか。先に殺さないと自分が殺されちゃうかもって。恐くなって武器を握り締めちゃう気持ちは私にもよくわかります! でもだからこそ、平和的に話し合いましょうよまずは!」
「俺も同意見ッス。いきなり俺らは全員死んでるとか、スーパーニンジャソードがどうたらとか、生き返りたいならほかの参加者を殺せとか、突然そんなことばっか言われても正直困るッス」
「ダメかもしれないけれど、ダメじゃないかもしれない。協力できるうちはして、君もしておいて損はないんじゃないかな。選択肢は多い方がいいだろう?」
「お前らの言い分はわかった。それに協力してやるのもやぶさかじゃあない」
「ほんと!?」
「だが初対面のお前らをいきなり信用するのは無理だ。だから、外部協力者として手を貸してやる。同盟に入るかどうか決めるのはその後だ」
可能性はないわけじゃない。サムライバー斬月の物語を思い出せ。最終的にあの谷欠大空洞に集まった時点で、俺らはみんなまだ生きていたにも関わらず、欲望の悪鬼ゴルディオニが現れた。
原作でもそうだ。斬月ムサシロウ、葉隠ナデシコ、そして木霊ノゾムの3人が力を合わせて最終決戦に挑んでいた以上、重要なのはあくまですべての刀を一か所に集めることであって、契約者の死は必ずしも全員分必須ではないのかも。
或いは作者である漫画家先生が、細かい整合性よりもノリと勢いを重視する作風だったってだけの可能性もある。いわゆる『そんなん面白けりゃどーでもえーやん!』の精神。
「俺は6本のスーパーニンジャソードを持ってる。その意味がわかるか?」
「え!? もう6本も集めたの!? すごいね!?」
「でも、それって!」
「ああ、『そういうこと』だ。言ってる意味がわかるよな?」
能天気な心田イデアと、青褪める甲シエン。
「どういうことッスか! ダイナソーマンは正義の味方じゃなかったんスか!?」
「正当防衛だ。あっちから殺しにかかってきた以上、抵抗しなけりゃ俺が殺されてた」
大嘘である。スーパーサムライソードの時より率先してスーパーニンジャソードを狩り集めている。でもこいつらに、俺の嘘を見抜く術はない。ないよな?
「それはそうかもしれないッスけど! でも、だからって!」
「誰かを殺すぐらいなら自分が殺された方がマシだって思うのなら、お前はそうすればいい。俺は止めん」
「……すんません」
「まあまあ。価値観は人それぞれだから」
「そうだよ! 大事なのはこれまでどうしてきたかより、これからどうしていくべきかだと思うの!」
夢野の仲裁に心田イデアも乗っかる。甲シエンは納得できないけれどぐうの音も出ないって感じ。青いな。俺と同じ中坊だから当然か。
「俺の6本とお前らの3本、俺を襲ってきた切り裂きジャック野郎のを合わせれば全部で10本。残るは『II』と『VII』。誰か心当たりのある奴は?」
「2と7……私は知らないかな」
「俺もッス」
「僕も心当たりはないね」
「まあ、そうだろうな。となれば俺らのやるべきことはふたつ。ひとつは『XI』の刀を持つジャックザリッパーと交渉する。もうひとつは残る2枚の忍者刀を探す。それができれば事件解決だ」
「すごい! 一気に話がまとまるね!」
「そうだな。こんなふざけたコロシアイ、願わくばさっさと終わらせちまいたいもんだ」
「頑張ってみんなの力を合わせて、全員で生き返ろうね! えいえいおー!」
「「「おー!」」」
満面の笑みで拳を突き上げる心田イデア。それに頷く甲シエン。いつも通りの胡散臭い笑顔で拳を突き上げる夢野。適当に調子を合わせる俺。
甘っちょろい話だが実現できればリターンはデカい。少なくとも敵対されるよりははるかに気が楽だ。
今回のラスボスがどんな奴なのかはわからんが、頭数が多いに越したことはないはず。最悪戦えなくとも弾避けぐらいにはなってクリオロフォサウルス。
ニンジャッカー図鑑
I-TIME Inferno 赤 煉獄 円城フレア/ニンジャッカー炎星 死刑
II-TIME ?
III-TIME boIIIber 黒 爆弾 厚木サチヨ/ニンジャッカー爆星 刺殺
IV-TIME dIVa 銀色 歌姫 心田イデア/ニンジャッカー音星 轢き逃げ
V-TIME Voltage 黄色 雷 上石神井アゲハ/ニンジャッカー電星 感電死
VI-TIME VIper 緑 毒蛇 近藤ムネヒコ/ニンジャッカー毒星 腹上死
VII-TIME ?
VIII-TIME VULcan 赤 火山 甲シエン/ニンジャッカー溶星 熱中症
IX-TIME cIXlone 青緑 嵐 夢野メシヤ/ニンジャッカー風星 ?
X-TIME t-reX 紫 恐竜 竜崎ディノ/ニンジャッカー竜星 隕石直撃?
XI-TIME jaXTheripper 灰色 切り裂き魔 ?
XII-TIME XUEEN 藍色 氷の女王 ルリエ・F・森/ニンジャッカー凍星 服毒自殺




