第37話 魔法が解けるXII
「笛吹サチコ級の地雷女は勘弁って俺言ったよな?」
"跪け、(差別用語につき規制)"
(ライタ兄貴の婚約者として来日した女がニンジャッカーだった。意味がわからん。いや確かにスーパーニンジャソードは宇宙から地球に降り注いだよ? 日本以外の国にも落ちた可能性はゼロじゃないけどさ)
『X-TIME! t-reX!』
『XII-TIME! XUeen!』
「変忍!」
"Ninjack!"
(なんだってよりにもよって兄貴の婚約者が選ばれるの!? どんな天文学的確率なの? 俺が転生者だから引き寄せてしまうのトラブルを?)
『ニンジャガ・ジャック! ニンジャッカー! ティラノ・デ・ゴザール!』
『ニンジャガ・ジャック! ニンジャッカー! ヒメサマ・ト・オヨービ!』
決戦の舞台は成田空港に重なったスーパーニンジャフィールド。聖地巡礼待ったなし。
竜崎ディノがここにいるのは偶然ではなかった。彼は母親と死ぬ程折り合いが悪い。そのため顔を合わせたくはなかったのだが、兄の婚約者がどんな奴なのかは気になる。
そこで遠巻きにコッソリ確認すべく見物に来ていたのだ。来て正解だった、と彼は飛行機の総重量よりも重たいため息を吐く。何故なら彼女はニンジャッカー。彼の敵だったのだから。
"目障りな(差別用語につき規制)め!"
「うるせー! (差別用語につき規制)なのはお互い様じゃろがい!」
実は外国語が聞き取れるが喋れない彼は、互いに放送禁止用語を連呼しながら差別的スラングの応酬とともに刃を交える。
"この、日本人風情が!"
ルリエ・フランボワーズ・森の死因は服毒自殺である。
『日本人と結婚するぐらいなら死んだ方がマシだわ』
日本人と結婚して日本に住む。それは愛国心の強い彼女にとって耐え難い屈辱だった。
彼女は自身が黒髪黒目であることや、アジア系の顔立ちが原因で幼少期にイジメられたことがきっかけで大の反日家に育ってしまった。
日本人である母親とも折り合いが悪く、親日家である父とは人種差別的な言動を咎められ喧嘩ばかり。
そんな父の紹介で引き合わされた婚約者が日本人であると知った時、彼女は躊躇いなく有言実行の女となることを選んだ。
だが皮肉にも彼女は蘇ってしまった。スーパーニンジャソードの契約者として。
『どうして私が死ななければならないの? 死ぬべきはライタ・竜崎の方なのに』
彼女がおとなしく来日した目的は、竜崎ライタの暗殺である。彼を殺してしまえば婚約は破談になるだろう。表向きは行方不明。だが実際にはスーパーニンジャフィールド内に引きずり込んでそこに始末し死体を放置する。
いとも容易く完全犯罪が成立する超能力に彼女は感謝した。唯一忍者という単語だけは心底気に入らなかったが、これであんな奴と結婚せずに済む。
奇しくもそれは、竜崎ディノの見解と一致していた。
"凍り付け! 砕け散れ!"
「炎、雷の次は氷か! 夢野も風だし、意外性がないね!」
彼女はクールな氷の女王。寒さはt-reXの弱点だった。だが、今は違う。冷たい炎をまとった化石に寒さは通用しない。
とはいえ古今東西能力バトルで氷結系の能力者が弱かったためしはなく。
彼女は空港全域を絶対零度の極寒領域に変え、あたればたちまち瞬間凍結する寒波と氷の投げ槍による波状攻撃で竜崎ディノを仕留めにかかる。
(持っててよかったインフェルノ! 前回も今回も、円城フレアって実は俺の命の恩人なのでは?)
相手が氷ならば炎で対抗だ。氷の投げ槍を炎の忍者刀で切り払いながら、彼は氷を乱暴に踏み砕く。
あくまで優雅に、華麗に。白いスーツに藍色の装甲。雪の結晶めいた美麗な仮面。氷の女王は床を凍らせアイススケートでも楽しむかのように表情を舞い踊る。
氷と冷たい炎のぶつかり合い。空港内はたちまちふたりの戦いの余波でボロボロに破壊されていくが、スーパーニンジャフィールド内で起きたことが現実に干渉すること一切はない。
"ここを貴様らの墓標にしてやろう!"
「上等じゃねーか! お前の墓石にしてやんよ!」
『フィーバータァーイム! クゥイーン! 忍法ゼッタイレイドッテツカイフルサレスギテシンセンミノカケラモナイヨネ! の術! イエー!』
『フィーバータァーイム! ティー・レェーックス! イーンフェルノォーウ! 忍法クチノナカデコンガリヤキアゲテオイシクイタダイテヤルゼェ! の術! イエー!』
"時間よ凍れ!"
「ローストファング!」
氷の女王が放った必殺の一撃。氷の刃で敵をズタズタに切り裂く猛吹雪が吹き荒れながらディノに迫る!
だがディノもまた赤紫の炎をまとって大口を開けたティラノサウルスの化石型のオーラを飛ばし、その刃で吹雪を一刀両断する!
"だからこんな国、来たくなかったのよ!"
「炎を凍らせられるようになってから出直してきな!」
ドオン! と青白い炎にその身を焼かれながら灰の塊と化してドサリと崩れ落ちた彼女の遺灰の山に、藍色の忍者刀が突き刺さる。彼はいつものようにそれを引き抜いた。
『XII-TIME! XUeen!』
『ニンジャガ・ジャック! ニンジャッカー! ヒメサマ・ト・オヨービ!』
「ジャックザリッパーや他の忍者は来ない、か。さすがに早朝の空港だしな」
藍色の忍者刀。すべてを凍結させる『クイーン』の力。これで12本のスーパーニンジャソードのうちの6本。実に半分を竜崎ディノが独占したことになる。
「ルリエ・フランボワーズ・森! 貴様との婚約は破棄する! これ、一度は言ってみたかった台詞なのよね!」
ニンジャッカー図鑑
I-TIME Inferno 赤 煉獄 円城フレア/ニンジャッカー炎星 死刑
III-TIME boIIIber 黒 爆弾 厚木サチヨ/ニンジャッカー爆星 刺殺
IV-TIME dIVa 銀色 歌姫 心田イデア/ニンジャッカー音星 轢き逃げ
V-TIME Voltage 黄色 雷 上石神井アゲハ/ニンジャッカー電星 感電死
VI-TIME VIper 緑 毒蛇 近藤ムネヒコ/ニンジャッカー毒星 腹上死
IX-TIME cIXlone 青緑 嵐 夢野メシヤ/ニンジャッカー風星 ?
X-TIME t-reX 紫 恐竜 竜崎ディノ/ニンジャッカー竜星 隕石直撃?
XI-TIME jaXTheripper 灰色 切り裂き魔 ?
XII-TIME XUEEN 藍色 氷の女王 ルリエ・F・森/ニンジャッカー凍星 服毒自殺




