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第33話 登場するIV

「いっけなーい! 遅刻遅刻ー!」


 亡月(なつき)私立第3高校。ジャック・ヲー・ニンジャの主人公である心田(しんだ)イデアが通う千葉県屈指の進学校だ。谷欠学園高等部は私立のマンモス校だから学生のレベルが幅広く、偏差値だけなら亡月第3に負けている。


 そんな第3高校に通じる通学路を朝から全力疾走する女子高生。間違いない。心田イデアだ。何故俺が朝っぱらから女子高生のストーカーまがいの監視をしているのかと言うと、言うまでもなく彼女を探るためである。


 心田イデアはごく平凡で善良な一般市民だ。ちょっとドジで泣き虫だけど、優しくて元気な女子高生。


 ある日空から降る綺麗な光に見惚れていた彼女は、大型トラックに撥ねられ死んでしまう。


 だがその綺麗な光の正体である死の流れ星、『IV』のスーパーニンジャソードに選ばれたことで契約者として蘇る。


 何がなんだかわけがわからずスーパーニンジャフィールド内でアタフタしていた彼女は、謎のイケメン・夢野メシヤに助けられ、スーパーニンジャソード争奪戦に巻き込まれていく。


『立って』


『え?』


『死にたくなければ立つんだ。心田イデアさん』


『どうして私の名前を?』


『説明は後だよ。もしも君がまだ生きていたいと願うなら、立ち上がって僕の手を取るんだ!』 


 本当は戦いたくない。でも戦わなければ殺される。だからやるしかない。


 情け容赦ない熾烈なコロシアイ争奪戦に純粋な女子高生の心は傷付き、精神的にも肉体的にも追い詰められていく。


 そんな彼女を献身的に支える謎のイケメンが夢野だ。本当に謎なのやめてくんね!?


「やあ」


「うお!?」


 いきなり背後から声をかけられ飛び上がって驚いてしまう。振り向けばそこに夢野がいた。心臓に悪い。


「おはよう、竜崎ディノくん」


「お、おう! おはよう夢野! つーか、なんでお前はしれっと俺のこと覚えてるんだよ!? スーパーサムライソード事件は最初から起きなかったことになったはずだろうが!」


「朝から女子高生をストーキングかい?」


「ちげーし! お前こそなんだっていきなりこんなとこに現れるんだよ!?」


「さて、どうしてだろうね?」


 臭うぜ、夢野メシヤ! お前からスーパーニンジャソード特有の死臭がプンプンしやがる! てことは逆に、あっちにも俺の忍者刀の死臭を嗅ぎ付けられたのだろう。


 つーことは夢野もいっぺん死んだの? いつなぜどうやって?


「フフ。朝からそんなにも情熱的な視線を向けられると照れてしまうよ」


「悪いな。今の俺はおめーらから目を離せねーんだよ」


「僕ら?」


 あざとく首を傾げる夢野。そういう仕草が女性読者からの人気の秘訣だろうか。俺が真似してもムカつかれるだけで終わりそー。


「すっとぼけるなよ。お前もあの女にお熱なんだろ?」


「なんの話?」


「だからとぼけるなって……いや待て、お前まさか本当に知らんの?」


 ジャック・ヲー・ニンジャ第1話。空から降る謎の光に見惚れていて大型トラックに撥ねられ死亡した心田イデアは、スーパーニンジャフィールド内で目を覚ます。そこでわけもわからず彷徨っているうちに、燃え盛る炎の怪物に襲われるのだ。


 このままでは殺される! と直感的に理解した彼女は、IVの忍者刀の力でニンジャッカー音星に大変忍。


 だがド素人の女子高生が凶悪死刑囚に太刀打ちできるはずもなく、彼女は炎の怪物……ニンジャッカー炎星こと円城フレアに追い詰められ絶対絶命のピンチに陥る。


 そこで颯爽と助けに入るのが、ニンジャッカー風星に変忍した夢野メシヤ。


 つまりは、そう。俺が馬場警部の家族を再び救うべく円城フレアを真っ先にぶっ殺しにいっちまった結果、またも運命が変わってしまったのか!? ふたりが出会うきっかけを俺が潰してた!?


「どうしたんだい。そんな今すぐにでも屋上から飛び降りてしまいたい、と言わんばかりの自己嫌悪に満ちた顔をして」


「ナチュラルに人の心的確に言い当てるなし」


「何があったのかは知らないけれど、僕でよければ相談に乗るよ? 困っている時に手を差し伸べてこそ本当の友情なんだよね?」


「言いたいことは山程あるが、もうそれでいいよ。助けてくれよ。俺ら友達なんだろ?」


「もちろんだよ」


「じゃあまずは。なんで世界が修復された後なのにお前は俺のこと覚えてるわけ?」


「友情パワー?」


 嘘吐け! と言いたいところだが、こいつに限っては本当に友情パワーとかいうわけわからん力を使えそうで恐い。


「ところで話は変わるんだけど、お前最近死んだ?」


「それはスーパーサムライソード事件のことを言ってるわけではなさそうだね」


「ああ、それとは別に。なんかしか死んだんだろ? 正直に言ってみ?」


「君が本当に訊きたいのはそこじゃないんじゃない?」


「なら単刀直入に。今回の事件はお前の仕業か?」


「違うよ。僕も驚いているんだ。何せ朝目が覚めたら唐突に死んでいたからね。どうやら夜寝ている間にいつの間にか死んじゃったみたいで、気が付いたら頭の中に忍者刀があったんだ」


 いきなりストレートに打ち明けられて正直面食らってしまう。


「俺もお前もスーパーニンジャソードにぶっ殺されて巻き込まれたくちか」


「どうもそうみたいだね。あはは。同じ境遇の仲間がいてくれると心強いよ」


「仲間、ね。俺とお前、生き返れるのはどっちかひとりだけなんだぜ?」


「ゴルディオニの時もそうだったじゃないか。でも、僕らはこうして変わらずふたりともここにいる。今回もそうなるかもしれない」


「そう願いたいもんだがね。12本の忍者刀。全部集めたらまたゴルディオニみたいなのが現れるのはもう確定事項みたいなもんだろ。やっとあの事件が終わったってのに、また巻き込まれてウンザリだ」


 夢野の笑顔は相変わらず飄々としている。読めない奴だ。


「夢野。お前のことは嫌いじゃない。むしろ本当はいい奴なんじゃないかとと思ってる」


「嬉しいね。でも、友達とは呼んでくれないのかい?」


「俺とお前、どちらか一方しか生き残れないとしたら、俺は俺が生き返る道を選ぶ。だから、そんな俺がお前を友達とは呼べない」


「僕はそれでも構わないのに」


 それはある種の宣戦布告だった。夢野に助けを求めることもできただろう。だけど、俺はそうしない。


「生き物である以上、誰だって死にたくはないだろうね。君が君の命を優先することは、生物学的に正しい」


「お前は違うのか」


「うん。ひとつしか席がないのなら、それを君に譲るのもやぶさかではないよ。僕は君に好意を抱いている。君は実に好ましい人間だ、竜崎ディノくん。僕と君なら、君が生きるべきだ」


 真顔でそういうことをのたまうから薄い本で頻繁にお呼びがかかるんだぞお前。


「お前が嫌な奴だったらよかったのに」


「君がいい人でなければ僕も嫌な奴になったかもしれないね」


 平成のレジェンド声優さんの声は伊達じゃない。打ち切り漫画の世界でも、声帯は変わらないらしい。


 含み笑いを残して、奴はビルの屋上から飛び降りた。駆け寄ってやる必要もない。どうせあいつは無事だ。


 それにしても、夢野メシヤはやはりただ者ではなかった。スーパーニンジャソード争奪戦がどうなるにせよ、奴の動向にはこれからも注意が必要だな。

ニンジャッカー図鑑

 I-TIME Inferno 赤 煉獄 円城フレア/ニンジャッカー炎星 死刑

 III-TIME boIIIber 黒 爆弾 厚木サチヨ/ニンジャッカー爆星 刺殺

 IV-TIME dIVa 銀色 歌姫 心田イデア/ニンジャッカー音星 轢き逃げ

 V-TIME Voltage 黄色 雷 上石神井アゲハ/ニンジャッカー電星 感電死

 VI-TIME VIper ?

 IX-TIME cIXlone 青緑 嵐 夢野メシヤ/ニンジャッカー風星 ?

 X-TIME t-reX 紫 恐竜 竜崎ディノ/ニンジャッカー竜星 隕石直撃?

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