第28話 間違I探し
千葉県・谷欠市にある閑静な住宅街。そこに馬場シゲオ警部の自宅がある。彼は谷欠署に勤務する叩き上げのベテラン刑事だ。
『I-TIME! Inferno!』
『ニンジャガ・ジャック! ニンジャッカー! ホノオ・デ・ゴザール!』
そんな彼の自宅、愛する妻と娘が父親の帰りを待つ一軒家に迫る黒い影。いや赤い影。
「ヒヒヒ。地獄から帰ってきたぜ警部さんよ。今度は俺があんたとあんたの家族を死刑にしてやる番だぜ!」
円城フレア。かつて谷欠市を恐怖のどん底に陥れた連続放火魔だ。
わざと人のいる時間帯、それもほとんどの住民が眠っているであろう深夜帯を狙って放火し、火災現場を動画に撮影するのが生き甲斐という最低最悪の愉快犯。
かつて馬場警部に逮捕され、谷欠刑務所に収監されていた彼は死刑が執行された後で刑務所の遺体安置所に降り注いだ『I』の忍者刀の契約者となった。なってしまった。
一時的に蘇った彼は炎を操るInfernoの力で看守や他の囚人たちを焼き殺し、刑務所を大炎上させた彼はそのまま脱獄。
自分が死刑になる原因を作った馬場警部に復讐すべく、彼の妻子を焼き殺して復活の狼煙をあげる。というのが原作における放火魔編の始まりだ。使い回しすぎて逆に清々しいまであるな。
(そりゃあ打ち切られるわ。なんでこれで人気が出ると思ったんだ?)
確かに円城フレアは人気キャラだった。だからといって何も考えず続編に出したらそりゃあ批判されるってばよ。
一応構図は違うから……原稿使い回しの完全コピペではなく、きちんと全ページ新たに描きおろしてはいたから。
『フィーバータァーイム! イーンフェルノォーウ! 忍法イキタママカソウシテヤンヨ! の術! イエー!』
「出所祝いだ! 精々派手な花火を打ち上げてやろうじゃないの!」
「させるかよ! どりゃあ!」
「があ!?」
ニンジャッカー炎星。黒いスーツに赤黒い装甲。燃え盛る炎をまとったドクロの仮面のサムライバー。炎をまとった赤い忍者刀を馬場警部の自宅に向けて振り下ろそうとした奴の背中に、背後から強烈な一太刀を食らわせる。
一撃で仕留められなかったのは残念だが、それでもいきなり背中から斬り付けられた奴は少なからずダメージを負ったようだ。
「なんだテメエは! 俺様の邪魔をするんじゃねえよ!」
「お前の邪魔をしに来たんだよ!」
『X-TIME! t-reX!』
「変忍!」
『ニンジャガ・ジャック! ニンジャッカー! ティラノ・デ・ゴザール!』
「チ! 忍者刀目当てのザコかよ! ウゼエな! もっぺん死ね!」
「死ぬのはお前じゃい!」
円城フレアは二度死ぬ。いや、今回は死刑が執行された後なのも含めれば三度目か?
紫の忍者刀と赤い忍者刀がぶつかり合う。前作でもそうだったがInfernoの刀はかなり凶悪な代物だ。純粋な戦闘能力だけで比較するなら12本の中でも最上位に数えられるだろう。いや知らんけど。
なにせ12本中5本の刀の知識しかないからね! 残り7本がもっと強い可能性も十分にあり得る。そうであってほしくはないが。
だがやはりと言うべきか、円城フレアはつい数時間前に契約者になったばかりで、そのおそるべき能力をまだ十全には使いこなせていない。
そのため馬場警部の自宅を焼き払った後は、しばらくの間能力を習熟させるため谷欠市内に潜伏し建物を放火して回るようになる。
「オラア!」
「どりゃあ!」
幸い俺には打ち切られるまでの間の限られたものではあるが原作知識と、前の戦いで最後まで生き抜いたという経験に裏打ちされた自信や精神的余裕があった。
それでも油断は禁物だが、今の円城フレアならば決して勝てない相手ではない。
「フィーバータァーイム! ティー・レェーックス! 忍法マルノミトマルカジリダッタラドッチガイヤ? ドッチモイヤー! の術! イエー!」
「ネクロファング!」
紫に輝くティラノサウルス……の化石のオーラをまとった強烈な斬撃と、赤い炎渦巻く強烈な斬撃がぶつかり合う。なお技名を考えたのは俺だ! 本作には竜崎ディノの出番はなかったからな!
ニンジャッカーの弱点は忍者刀=脳である。脳と融合した忍者刀がある限り、たとえ首を刎ねられようが以下略。
そもそも死体が動いてる状態だからね。死体は死なないから。
「そろそろ怒られそうだから、真面目にやるぜ!」
「バカな!? この俺様がこんなザコに!?」
「はあ! はあ! 勝ったー!」
ニンジャッカー炎星の体がドオン! と青白い炎に包まれ、変忍を解除された円城フレアの肉体が灰の塊となってドサリと崩れ落ちる。
後に残るのは遺灰の山に突き刺さった赤い刀。これが謎の宇宙忍者と契約してニンジャッカーになってしまった者の末路だ。
なお宇宙忍者の正体は一切明かされないまま連載が打ち切られてしまったせいで、わからない模様。
原作知識もYの刀もない今、未来がわからないことが俺を酷く恐怖させる。これぞまさに宇宙的恐怖、って言っとる場合か!
「I-TIME! Inferno!」
ひとしきり感動を噛み締めた俺は、躊躇いながらIの忍者刀を鞘から引き抜いた。こちらも1人1本という制約はないため併用できる。できるんだけど、恐いよね。
心臓に刀を刺すのと頭に刀を刺すのとでは、後者の方が恐くない?
どんな副作用があるかもわからないのに、得体の知れない代物を取り込むのはかなり大変だ。
「ぐがあ!?」
だが使わないわけにはいかない。何故なら今回は原作知識が途中までしかないのだから!
『ニンジャガ・ジャック! ニンジャッカー! ホノオ・デ・ゴザール!』
「よし!」
黒いスーツに紫の装甲。ティラノサウルスの化石型の仮面のニンジャッカー。あえて名乗ろう。我が名はニンジャッカー竜星だと!
紫の装甲に赤紫の炎が宿る。体表で炎が燃えても熱くないどころかむしろ冷たい。死者だから冷たい炎なのだろうか。
前回は体温が急上昇して冷気に弱いという弱点を克服できたが、今回は冷たい死体なのでその心配はなさそう。
「さて、取り急ぎやらなきゃいけないことは終えたし、スーパーサムライソードとスーパーニンジャソードを二刀流するとどうなるかの実験でもしに行くか」
馬場警部が帰宅する前に、とっとと退散する。残る刀は10本。うう、気が重いにゃあ。
ニンジャッカー図鑑
I-TIME Inferno 赤 煉獄 円城フレア/ニンジャッカー炎星 死刑
IV-TIME dIVa 銀色 歌姫 心田イデア/ニンジャッカー音星 轢き逃げ
VI-TIME VIper ?
IX-TIME cIXlone 青緑 嵐 夢野メシヤ/ニンジャッカー風星 ?
X-TIME t-reX 紫 恐竜 竜崎ディノ/ニンジャッカー竜星 隕石直撃?




