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第25話 決めろA

 紫、赤、黒、茶、青、緑、そして虹。7人の超人が遂に揃い踏みする。世界の平和を守るため、欲望の悪鬼ゴルディオニを倒すべく今舞い降りた7人の侍戦士たち!


「目障りな虫けらどもめ! まずは貴様らから血祭りにあげてやろう!」


 欲望の悪鬼ゴルディオニの咆哮とともに、3階建ての建物程の背丈を持つ巨大な鬼が動き出す。


『Tempest! Revolution! Engagement! t-reX! ハイパー・エンゲェージ!』


『Hunter! Unite! Nightmare! Tempest! Engagement! Revolution! ハイパー・エンゲェージ!』


『Ace! Critical! Engagement! スーパー・エンゲェージ!』


『Joker! Ox! Knight! Engagement! Revolution! ハイパー・エンゲェージ!』


『Ox! t-reX!  スーパー・エンゲェージ!』


『Butterfly! Unite! Tempest! Engagement! Revolution! Fumble! Love! todaY! ハイパー・エンゲェージ!』


『ZZZ! ZZZ! ZZZ! トリプル・エンゲェージ!』


 それぞれの刀から一斉に鳴り響く電子音声によるけたたましい爆音と光の洪水。まるで超変刃のバーゲンセールだな。すべての刀の力が無尽蔵に渦巻いているため、今だけはスペルかぶりを気にする必要はない。


「さあ来い人間ども! 実は俺様は黄金の角を両方同時に折られない限り何度でも蘇るぞおおおお!」


「ジュラシックファング!」


「シュヴァインフルトスライサー!」


「真・エースストライカ!」


「ハイパーパンチ!」


「マンモスホーン!」


「え? これ僕も叫ばないとダメなの?」


「そうです! ポイズントルネード!」


「えっと……ゼータアロー!」


 特撮ヒーロー番組の最終回あるある。最終話でようやく登場したラスボスがAパートでアッサリ倒されBパートを後日談に使われる。


 尺の都合がね。それなら最終話の1話前をラスボスの見せ場にしてあげるぐらいの活躍を与えてあげてもよかったんじゃないの? と思う時もあるのだけれど。そこはまあ番組による。


「ガアアアア!? バカな!? 大妖怪たる我が、またしても人間如き虫けら風情に破れるだとおおおお!?」


 すさまじい攻撃を一斉に浴びせられ、黄金に輝く欲望の悪鬼ゴルディオの二本角が同時に粉砕される。


「俺たちは虫けらなんかじゃない! 今も昔も! お前は人間に勝てないんだ!」


 異世界転生者俺という異物が原作の物語を台無しにしてしまったせいで、これまで微妙に影が薄かった斬月ムサシロウだけれど、最後はバシっと決めてくれるのはさすが主人公だね!


『Ace! Butterfly! Critical! Dream! Engagement! Fumble! Gold! Hunter! Inferno! Joker! Knight! Love! Mindcontrol! Nightmare! Ox! Pierrot! Question! Revolution! Star! Tempest! Unite! Voltage! Wild! t-reX! todaY! ZZZ!』


 古の大妖怪・欲望の悪鬼ゴルディオニを封印していた26本の刀。古の侍戦士たちがいつかの未来のため、戦うべき子孫らのために後世に遺してくれた祝福の神器。


 再び空中に浮かび上がった26本の刀が虹色に輝きながら高速回転し、虹色の光の輪を描き出す。光の輪でその両腕を締め付けられ身動きが取れなくなった欲望の悪鬼ゴルディオニをまっすぐ見据えるサムライバー斬月の手に、すべての刀が融合した運命の一振りが宿る!


『AtoZ! オール・エンゲェージ!』


「これで! 終わりだ!」


「Final-Striker!」


「グオオオオオオオ!?」


 一閃。虹色の剣閃が欲望の悪鬼ゴルディオニの心臓を一刀両断する。古の侍戦士たちが命懸けで封印し、永きに渡る封印で弱体化した悪しき大妖怪を、今度こそ封印ではなく完全に退治するのだ。


「そんなバカなあああああ!?」


 ドオン! と虹色の炎に焼かれながら、鬼の巨体が爆散した。大量の塩が谷欠大空洞に降り注ぎ、大きな砂山を作る。戦いを終えた俺たちは目もくらむようなまばゆい虹色の光に包まれ、そして……


(あー、これで本当におしまいなんだなあ)


 スーパーサムライソードの力が失われていく。永きに渡るお役目を終えた刀は、なんの力も持たないただの古美術品になる。


『勇敢なる侍の末裔よ。よくぞ欲望の悪鬼・業泥鬼(ごうでいおに)を退治した。そなたのお陰でこの世は救われた』


 俺たちの脳内に直接過去からのメッセージが届く。今頃みんなまばゆい虹色の光の中でこれを聴いているのだろう。 


『その褒美を受け取るがよい。どんな願いもひとつだけ叶えられるであろう。願わくば、これを聴いている者が善良なる者であらんことを』


 願いを叶える権利を得るのは、欲望の悪鬼ゴルディオニを倒した者。今回の場合は最後の一撃を決めた斬月ムサシロウ。


 彼の前に、虹色に輝く酒杯が現れ……おかしいな。なんか俺の目の前に浮かんでるように見えるんですけど?


「いやいやいやいや! なんで俺!?」


 酒杯は返事をくれない。虹色の光に包まれているせいで他の誰かと言葉を交わすこともできない。グズグズしてたら刀が力を使い果たして酒杯も消えてしまうだろう。


「えーと、あれだよあれ! その、なんつーか! 最高のハッピーエンドをくれ!」


 慌てすぎて咄嗟に口から出てきた言葉がそれだった。どれだけ陳腐であろうと大団円に優る終わりはない。いいじゃん御都合主義でも。ハッピーエンド最高じゃん?


 斯くしてサムライバー斬月の物語は終わりを告げる。


(ああ……でも……正直名残惜しいな。いつまでも超能力者でいられたらいいのに……できれば俺だけ……)

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