第24話 終わりのζ
『グハハハハ! 遂に! 遂に我は蘇ったぞおおおお!』
地下大空洞に高らかに響き渡る、欲望の悪鬼ゴルディオニの哄笑。その姿は黄金の二本角を持つ巨大な鬼だ。かつて世界を滅ぼしかけた伝説の大妖怪の復活に、一同戦慄する。
これまでの戦いはあくまで等身大のサムライバー同士、或いは怪人相手の戦闘だった。だがここにきて、見上げる程の巨人の登場はさすがに想定外だったらしく、皆呆然としている。
無理もあるまい。3階建ての家ぐらいの背丈を持つ巨大な敵を相手に、人間がどうやって戦えと言うのか。踏み潰されて蹂躙されるのがオチだ。
「素晴らしい。実に素晴らしいぞ竜崎少年。本物の妖怪に出会えるとは。私の浪漫回路はフル稼働だ。研究者魂が未だかつてなく大炎上している」
「何言ってるんだよ博士! こんな時に!」
「こんな時だからこそだ斬月少年。君は浪漫を感じないのか? 私たちは本物の、生の妖怪と出会ったのだぞ? 歴史に残る快挙だ」
「ふざけるな! 貴様の身勝手なエゴのせいで、一体どれだけの人間が不幸になったと思っている!」
「知らんな。科学のために犠牲は付き物だ。封印された妖怪を復活させるために生贄が必要ならば、私は喜んで生贄の供物を集めよう。人間などごまんといる。だが本物の妖怪は現状独りしか確認できていない。ならばどちらに重きを置くかなど比べるべくまでもないと思うが。この記録を後世に遺すためなら、私は喜んで人類史のための生贄になることも辞さない所存」
「貴様あ!」
「おどれら! 今は喧嘩しとる場合じゃなかろうが!」
「番長の言う通りですよ! 早くあいつをなんとかしないと!」
「でも、どうやって!? 俺たちの刀は全部あいつに奪われちゃったんだよ!?」
家族を取り戻せないと知って戦意喪失し項垂れる葉隠ナデシコに肩を貸しながら、斬月ムサシロウが叫ぶ。
26本すべての刀は欲望の悪鬼ゴルディオニの復活のために使われてしまい、今は奴の体内に吸収されてしまった状態だ。
でも大丈夫。ちゃんと抜け道はあるよ。
「みんな聞いてくれ! この大空洞には今、スーパーサムライソードの力が無尽蔵に渦巻いている! それを使えば変刃して奴と戦えるはず! みんなで力を合わせて奴を斬るんだ!」
「何故貴様が仕切っているのだ竜崎ディノ! そもそもこんなことになったのは貴様が招待状を出して皆を集めたせいだろうが!」
「あいつを呼び出さなければあいつを倒せないだろうが! つべこべ言わずに戦え! さもないと、本当に世界が滅ぶぞ!」
俺は手をかざして刀を呼ぶ。すると俺の手の中にすっかり馴染んだXの刀が現れた。大丈夫、やれるはずだ! シチュエーション的には原作の最終決戦と同じ!
しかも本来なら主人公とヒロインふたりきりの最終決戦だったはずが、総勢8名もの人間が勢揃いしているのだから!
仮に博士が裏切って欲望の悪鬼ゴルディオニに味方しても7対2なら勝算は十分にある!
『ハイパー・サムライバル! Tempest! Revolution! Engagement! t-reX! T-REX! T-REX!』
『超絶変刃!』
『オープン・ザ・ハイパーサムライソード! ティラノサウルス・レェーックス! ゲンシ・ノ・ヨアケゼヨ!』
「サムライバー餓竜月! 推して参らせてもらうぜ!」
白いスーツに赤紫の装甲。ティラノサウルスの顔を模した仮面。虹色に輝くXの刀。名残惜しいが本物の超能力者として戦えるのもこれが最後だ! 色々あったけど異世界転生して本当によかった!
後はこいつをぶっ倒して、最高のハッピーエンドを迎えるだけ! そうすりゃもう戦わずに済むし、後は一生兄貴に養ってもらって夢のニート生活が待ってる! うおおおお! 頑張れ俺! やれるぞ俺!
「く! 貴様も後で逮捕して事情聴取してやるからな!」
『ハイパー・サムライバル! Hunter! Unite! Nightmare! Tempest! Engagement! Revolution! HUNT-ER! HUNTER!』
「とにかくやるしかないよみんな! 今はまずゴルディオニを倒そう!」
『スーパー・サムライバル! Ace! Critical! Engagement! A-C-E! ACE!』
「よくも! よくも騙してくれたなあああああ!」
『ハイパー・サムライバル! Joker! Ox! Knight! Engagement! Revolution! JOKE-ER! JOKER!』
「ええい! とにもかくにもやるしかないわい! あいつをぶちのめした後で、博士と竜崎ディノをとっちめてやるんじゃあ!」
『スーパー・サムライバル! Ox! t-reX! O-X! OX!』
「みんなで生きて帰りましょう!」
『ハイパー・サムライバル! Butterfly! Unite! Tempest! Engagement! Revolution! Fumble! Love! todaY! BUTTER-FLY! BUTTERFLY!』
「微力ながら僕も頑張らせてもらおうかな」
『スーパー・サムライバル! ZZZ! ZZZ! ZZZ! Z-Z-Z! ZZZ!』
「「「超絶変刃!」」」
「「超変刃!」」
「超変刃!」
『オープン・ザ・ハイパーサムライソード! ハンタァー! ゲッツ・チャァーンス!』
『オープン・ザ・スーパーサムライソード! エース! ショーリ・ハ・テノナカ!』
『オープン・ザ・ハイパーサムライソード! ジョー・カー! レッツ・ショウタァーイム!!』
『オープン・ザ・スーパーサムライソード! オーックス! クロガネ・ノ・ボーソーキカンシャ!』
『オープン・ザ・ハイパーサムライソード! バタファーイ! オレッテ・ソーユー・ヤツサ!』
『オープン・ザ・スーパーサムライソード! スー! グッナイ・ハバン・ナイスドリーム!』
「サムライバー朱斬月牙! 行くよ!」
「サムライバー烈風月! いざ参る!」
「サムライバー逆三日月! 参る!」
「サムライバー彼我岩月! 行くぞ!」
「サムライバー散花月! 行きます!」
「サムライバー夢月。頑張ろうか」
なお博士は変刃せずスマホで欲望の悪鬼ゴルディオニを撮影するのに忙しい模様。お前も戦え! と言いたいところだが、邪魔をしないだけヨシ!




