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第22話 乙女Wの秘密

「あんた、こいつは」


「今の私に差し出せる精一杯の誠意だ。どこからどう見ても本物だろう?」


 どういうことだ。プロフェサー・Gはその名の通り、Gの刀の契約者じゃなかったのか?


 それとも刀を保持しているだけで、未だ契約はしていなかったのだろうか。


 原作では彼女が刀を抜きサムライバーになるのは物語の終盤。黒幕としての正体を明かす場面で初めて変刃(サムライブ)する。


 そう考えると今の彼女が刀と未契約状態であるのは左程おかしなことではない。


「何故俺に?」


「言っただろう。私の目的はスーパーサムライソードの研究だ。そのためにはより多くの刀を集める必要がある。現状最も多くの刀を集めたのは君だろう?」


「どうかな。あんたのお気に入りの子たちもかなりの数集めてるみたいだし。総数で言えば負けてるかも」


「彼らは努力している。だが、遅々としてサンプルは集まらない」


「だから俺のことも利用してやろうって?」


「今更隠す必要もないだろうからぶっちゃけるが、その通りだ。彼らには期待していたのだが、君の方が上手だった。中学生に負ける高校生というのも情けない話だが」


 一瞬の沈黙。それを破ったのはコーヒーを運んできてくれた木野の爺さんだった。


「お待ちどおさん。クリーム大盛りのウインナーコーヒーと熱々のエスプレッソお待ち」


「ありがとう店長」


「感謝する。ああ、いい香りだ。徹夜明けの眠気も吹き飛ぶ」


「徹夜は体によくないぜ。睡眠不足とカフェインの過剰摂取は死を招くぞ」


「そうならないよう精々気を付けるさ。天才の私が早死にしてしまえばそれは世界的損失だ」


 乾杯でもするか? という彼女の言葉に、俺は首を横に振る。


「そう身構えずともよい。安心したまえ。言っただろう? 私もこの店の常連になったと。店内で揉めるつもりはない」


「いいだろう。常連同士のよしみで内緒話に付き合ってやる」


 山盛りのホイップクリームをスプーンですくって頬張る。うん、甘くて美味い。甘いホイップクリームと苦いブラックコーヒーの組み合わせがいい味出してる。


 茶道のわびさびにも通じる甘みと苦みの組み合わせ。茶道なんて人生で2回ぐらいしか経験したことないけど。


「私の目的は、26本の刀をすべて集めた際に何が起こるのかをこの目で観測することだ。本当に願いが叶うのか。誰がどんな理由でどのように叶えるのか。実に興味がある」


「願いを横取りするつもりはないと?」


「無論だ。私の目的はあくまでオーパーツの研究。研究予算などはいくらあっても困らないがね。現状金銭には不自由していない」


 嘘は言ってないんだよな。何せこいつの目的は、欲望の悪鬼ゴルディオニなんてものが本当にいるのなら一度会ってみたいってそれだけの好奇心と探求心なんだから。


 食うなと言われたリンゴがあったら逆に食べてみたくなるし、開けるなと書かれたパンドラの箱があったら開けずにはいられないのが人間の業。


 俺だって、超能力者になれるのならなってみたい気持ちはあった。興味は恐怖を凌駕する。


「自慢じゃないが私は弱い。殴り合いの喧嘩など一度もしたことがないからな。適材適所だ」


「餅は餅屋に。喧嘩は不良少年にってか。いつかあんたが契約者を解剖して中身がどうなってるのか確認してみたいとか言い出さないか心配になるね」


「可能ならばそれも試しておきたいな。契約者の肉体は常人の肉体と何が違うのかをぜひ調べてみたいものだ」


「おっかない女だなあんた」


「君ほどではない」


 目的のため既に手を血に染めた男と、目的のためなら躊躇なく手を血に染められる女。乾杯、とろくでなし同士カップを突き合わせる。


「あんたがどういう人間なのか、大体わかった」


 カウンターに置かれたGの刀に手を伸ばす。黄金に輝く悪趣味な、いや綺麗な刀。


「あんた、嘘吐きだな。俺も大概だけど」


『サムライバル! Gold!』


「いいぜ。嘘吐きはお互い様だ」


『サムライバル! Gold! ゴゴゴGold!』


 刀を鞘から抜いた俺が正体を暴くと、偽りの金メッキは砕けて散った。だが偽金の破片が店内を汚すことはない。


『サムライバル! Wild!』


 白く輝く『Wild』のスーパーサムライソード。その力はまさにワイルドカード。すべてのスーパーサムライソードのコピーになれる。


 何食わぬ顔で偽物を差し出しやがったなこの野郎! いや本物ではあるのだけれども!


「あと1本。あと1本で欲望の悪鬼ゴルディオニが復活する」


「素晴らしい。やはり君を見込んで正解だった」


「あいつに世界を滅ぼさせて堪るか」


 長かったこの戦いももうすぐ終わる。その果てに何が待ち受けているのか。俺は決意を新たに、Wの刀を己が心臓に突き刺した。

サムライバー図鑑

 Ace 赤 斬月ムサシロウ/サムライバー斬月

 Butterfly 青 天雅リン/サムライバー花月

 Critical 緑 宝田エル/サムライバー満月

 Dream 虹色 夢野メシヤ/サムライバー夢月

 Engagement 銀色 笛吹サチコ/サムライバー恋月

 Fumble 赤 宝田エタ/サムライバー新月

 Gold 黄金 プロフェサー・G/サムライバー望月

 Hunter 緑 木霊ノゾム/サムライバー風月

 Inferno 赤黒 円城フレア/サムライバー炎月

 Joker 黒 葉隠ナデシコ/サムライバー三日月

 Knight 銀色 契約者不明

 Love 桜色 愛原ヒカリ/サムライバー愛月

 Mindcontrol 水色 犯罪者A

 Nightmare 灰色 密輸人/サムライバー歪月

 Ox 茶色 牛島ウメオ/サムライバー岩月

 Pierrot ピンク 大道芸人/サムライバー笑月

 Question 藍色 犯罪者B

 Revolution 金色 剣ソウヤ/サムライバー嘘月

 Tempest 黄緑 嵐山キョウスケ/サムライバー嵐月

 Unite 黄色 契約者不明

 Voltage オレンジ 契約者不明

 Wild 白 契約者不明

 t-reX 紫 竜崎ディノ/サムライバー竜月

 todaY セピア 木野ギンジ/サムライバー古月

 ZZZ 虹色 夢野メシヤ/サムライバー夢月

 ∀rc 黒 谷欠シン/サムライバー神月

 Zero 透明 レイン・ロゼ/サムライバー無月


竜崎陣営 ∀ E I L M Q R W X Y

斬月陣営 A B C F J K O P V

木霊陣営 H U N T

博士陣営 G

夢野陣営 D Z

残り S 0

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