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第17話 友達のZ/友達の友達のG

『市内アパートに住む母子3名行方不明。高額宝くじ当選か』


『男性ばかりを狙った連続殺人事件。遺族は精神錯乱状態に』


『谷欠ダイナマイトタワーに露出狂? 防犯カメラに不審な人影』


 木野珈琲店のいいところは上手いコーヒーと美味い飯が安く楽しめることだけでなく、最新の新聞とローカル新聞もタダで読めるところだ。


 最近はもっぱらネットニュースばかりが主流だが、谷欠市内で起きた事件について詳しく知りたいならやはりローカル新聞を読むのが一番いい。


「やあ、竜崎ディノくん」


「げ」


「初めまして、竜崎少年」


「うげ」


 そんな俺の聖地に厚かましいアルカイックスマイル野郎が現れた。何故か物語の黒幕であるプロフェサー・Gことモンテスキュー・クリス博士同伴で。実にゆるし難い。


 プロフェサー・G。ダボダボの白衣を羽織った気だるげダウナー系の三十路美女。ボサボサの長髪とむちむちボディが多くの読者の性癖を狂わせたマッドサイエンティスト。


 作中でもトップクラスの問題児2名が何食わぬ顔で連れ立って現れたものだから、俺が盛大に顔を顰めてしまったのも無理ない。


「紹介するよ。竜崎ライタくん。彼女はモンテスキュー・クリス博士。スーパーサムライソードの研究をしているモンテスキュー・クリス・オーパーツ研究所の所長さんなんだって」


「その通り。私は愛と正義と世界平和のため危険なオーパーツを調査・研究している善良な市井の天才科学者。初対面だが母親同然に全幅の信頼を寄せてくれて構わない」


「お前、その変人と知り合いだったのかよ」


「変人とは心外だが構うまい。天才とは常に理解され難き存在だからな」


「ショタコン趣味の危ないオバサンがいるから興味本位であの研究所に近付いちゃいけませんってこの街の子供なら誰でも親に言われて育つんだわ」


「それは本当に心外だ」


 露骨に嫌そうな顔をしながら、俺はアイスコーヒーの残りを飲み干して席を立つ。


「爺さん、お愛想頼むわ」


「あいよ」


「おいおい、どこへ行こうというのかね」


「場所を変える。店内で騒ぐと迷惑だろ」


「大袈裟に騒ぎ立てるつもりはないが」


「つべこべ言わずついてこい。俺と話がしたいんならな」


 木野の爺さんに迷惑をかけないよう店を出た俺たちは、近所にある大きな運動公園にやってきた。


 谷欠運動公園は市役所の裏に広がる大きな運動公園で、家族連れや散歩に連れてこられた犬などが楽しそうに遊んでいる。


 俺は公園の自販機で天然水を買うと、空いていた適当なベンチに腰かけた。真ん中は嫌だったので端っこに座ると、隣に夢野が、その向こう側にプロフェサー・Gが座る。


「それで? 夢野。お前は俺に喧嘩を売りに来たのか?」


「やだなあ、そんな恐い顔をして。友達に友達を紹介しただけじゃないか」


「俺らがやってるのはスーパーサムライソード争奪戦。平たく言えばコロシアイだ。何が命取りになるかわからない。それなのに友達の素性を見知らぬ第三者にバラすのがお前の友情の形なのか? ん?」


「誤解するな、竜崎少年。私は君に協力したいと考えている」


「協力だと?」


「そうだ。私は呪われた秘宝・スーパーサムライソードを研究したい。すべて集めるとどんな願いでもひとつだけ叶えられる万能の願望器。そんなものが実在するなら非常に興味深い研究材料だ」


「そのために夢野と結託して、俺の持ってる刀を奪い取ってやろうって魂胆か?」


「だから誤解だと言っている。私はあくまでオーパーツに浪漫を夢見る研究者。刀の研究そのものが目的であって、叶えたい願いはない」


 嘘は言ってない。こいつの厄介な点は、事件の黒幕でありながら欲望の悪鬼ゴルディオニを復活させる目的が願いを叶えることではない点にある。


『呪われた秘宝に封印された欲望の悪鬼! 実に素晴らしい! そんな存在がいるのなら、是非一度会って言葉を交わしてみたいものだ!』


 極論彼女はそれだけのために、裏社会の運び屋を雇ってスーパーサムライソードを日本に密輸入させた。すべては研究者らしい好奇心によるもの。


 誰でも超能力者になれるオーパーツがあるなら取り寄せて研究してみたい。超能力者になれるのならなってみたい。


 妖怪が本当に実在するのなら会ってみたい。どのような存在なのかを研究したい。それ以上の理由などない。


 純粋な知的好奇心と探求心だけで、世界を滅ぼしかねない危険な悪鬼を平然と復活させようとする危険なマッドサイエンティスト。


 バカと天才をハイブリッドさせた傍迷惑の権化。それがプロフェサー・Gの正体であり、サムライバー斬月の物語が始まった原因なのだ。


「お近付きの印にこれをプレゼントしよう。ウルトラデラックススーパーサムライソードチェンジャー。これを使えば刀を心臓に融合させることなく刀の力を引き出せる優れものだ」


「見た目は子供の玩具みたいだが、それが本当ならすげー発明品だな。いらないけど」


「遠慮はいらない。これも調査・研究のためだ。無料で進呈する」


「本当にいらない。年に3回ぐらいしか行かない飲食店のスタンプカードぐらいいらない」


 受け取りを拒否するが本音を言えばすごく欲しい。だってプラスチックで再現された玩具(メーカー希望小売価格5980円)じゃない本物のUDXスーパーサムライソードチェンジャーだよ?


 そんなの欲しいに決まってる。でも受け取るわけにはいかない。何故ならその内部には盗聴器と発信機が組み込まれているから。


 彼女はそれを使って斬月ムサシロウたちの動向を探り、会話を盗み聞きしている。たとえ呪いの毒素を薄める成分が本物だったとしても、俺は使わない。


「それで? 君は今、どれぐらい刀を集めたのだろうか」


「初対面の怪しい女に教えてやるわけねーだろ」


「意地悪しないで教えてくれたまえよ君。科学の発展のためだとも」


「嫌だ。おい夢野、なんとかしろよ。お前が連れてきたんだろ、この傍迷惑な成人女性」


「僕にも無理だよ。博士をどうにかできる人間なんて、地球上のどこにも存在しないんじゃないかな?」


「ありがとう。美少年に褒められると照れるな」


「なんでそんな奴を連れてきたんだよ本当に。すげー迷惑なんだけど」


「はは。友達に友達を紹介するのは男子高校生としては普通のことかなと思って」


「少なくとも俺は、二枚舌女と友達になるつもりはないね」


「ふむ。それはどういう?」


「その玩具、随分気前よく配り歩いてるみたいじゃないか。利用できる道具は大いに越したことはないもんな。俺はあいつらみたいに、あんたに都合よく利用されてやるつもりはない」


「特別な玩具をもらったのが自分だけではないと知って、ヘソを曲げてしまったか?」


「俺はあんたを信用できないし、あんたが作った道具も同じ。こいつは夢野にでもくれてやりな。喜んで装備してくれるだろうよ」


「え? 僕?」


 天然水を飲み干した俺は、空のボトルをゴミ箱に捨てるためベンチから立ち上がる。


「竜崎少年。ひとつだけ教えてほしい。君はなんのために刀を集めている?」


「決まってるだろ。自由に『生きる』ためだよ。俺は誰かに養われながらか不労所得でスローライフを満喫するのが夢なんだ」

サムライバー図鑑

 Ace 赤 斬月ムサシロウ/サムライバー斬月

 Butterfly 青 天雅リン/サムライバー花月

 Critical 緑 宝田エル/サムライバー満月

 Dream 虹色 夢野メシヤ/サムライバー夢月

 Engagement 銀色 笛吹サチコ/サムライバー恋月

 Fumble 赤 宝田エタ/サムライバー新月

 Gold 黄金 プロフェサー・G/サムライバー望月

 Hunter 緑 木霊ノゾム/サムライバー風月

 Inferno 赤黒 円城フレア/サムライバー炎月

 Joker 黒 葉隠ナデシコ/サムライバー三日月

 Knight 銀色 契約者不明

 Mindcontrol ?

 Nightmare 灰色 密輸人/サムライバー歪月

 Ox 茶色 牛島ウメオ/サムライバー岩月

 Pierrot ピンク 大道芸人/サムライバー笑月

 Revolution 金色 剣ソウヤ/サムライバー嘘月

 Tempest 黄緑 嵐山キョウスケ/サムライバー嵐月

 Unite 黄色 契約者不明

 Voltage オレンジ 契約者不明

 t-reX 紫 竜崎ディノ/サムライバー竜月

 todaY セピア 木野ギンジ/サムライバー古月

 ZZZ 虹色 夢野メシヤ/サムライバー夢月

 ∀rc 黒 谷欠シン/サムライバー神月

 Zero 透明 レイン・ロゼ/サムライバー無月

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