第5話 勇者覚醒
ハルトリー=グランデルムはその日勇者となっていた。
魔獣襲撃から7日。あの日2人の勇者が到着してから驚く程にあっさりと自体は沈静化した。あの規模の襲撃にしては被害も少なく正しく勇者の力が正しく発揮されたという快挙であった。破壊のメルテッタは終始不満気な態度であったが王国からの報酬で気を良くしたらしく、そのまま帰って行ったそうだが。
そもそもメルテッタがあの場に居たのも謎だった。破壊の勇者が治める地は王国からは比較的遠い。最初に到着できるとは思えなかったが本人曰く
「偶々近くで遊んでいたんだ。この辺はいい感じの熊が取れるからな!」
とのこと。お陰様で正門側の被害は突破された時の被害者のみに抑えられた。
絶魔のフィーペは最も王国に近い所で活動している勇者である。今回王都の人達が最初に到着すると思っていたのは彼女だ。歴代勇者の中でもかなり上位の強さを誇る1人。彼女が到着するのがもう少し遅れていれば王城はどうなっていたか分からない。
あの日、勇者育成機関の生徒にも批判が集まった。無理もないだろう。勇者候補と言うだけあって戦闘能力は比較的高いのだ。それらが我先にと王城の中へ向かっていくのが確認されていた。あまつさえ、自分達は勇者になれるかもしれない逸材なのだと、自分達を守ることこそ国民の勤めでは無いのかと騒ぎ立てる者も居たらしい。
勿論全員その場で育成機関でのありとあらゆる資格が剥奪された。そんな中
「ハルトリー=グランデルム! 貴殿の活躍により我がギルドでは1人の犠牲者も出なかった! 一般人も逃げ込み混乱の最中、勇気ある行動によって助けられた命は数多い。よってここに表彰する!」
僕はギルド長から表彰を受けていた。
「ハルトリー! 君さえ良ければ、王国ギルドの冒険者となってはくれないか!?」
それはギルド長の表彰後、直接声をかけられた時のセリフ。正直とても嬉しい。勇者候補から外れたあと、一から仕事を探すのは骨が折れると思っていたから。
「僕で良ければ是非お力になりたいと思います」
「そうか! それは良かった! では!早速登録をしよう!」
この人すごくうるさいな。
その後僕は別室に連れていかれた。中には随分と大掛かりな装置があり、ギルド職員もかなりの人数が部屋の中にいる。
「ハルトリー=グランデルムさんですね。ギルド長からお話は伺っております。コチラの装置は冒険者登録に必要な情報を書き出す装置となっております。
職業、スキル、ステータスその他が表示されるステータスプレートを作成する装置で、最初に血液が必要なのですが」
血液……ねぇ? こんな大掛かりな装置で血液を取られたら全部抜かれるんじゃないのか?
「コチラの同意書に同意していただけたなら装置の中にお入りください」
うっわぁ。長い。とても長い。1枚にびっしり文字が書いてある。白い部分無いんじゃないかな? それが4枚。
とりあえずパラパラと捲って読んだ気になる。
「大丈夫です。よろしくお願いします」
僕は今日から冒険者だ!
〜〜〜〜〜〜
「ギルド長……これは」
「やはりな。間違いない」
「ですよね……となると育成機関は」
「あぁ。あそこは恐らく……既に」
〜〜〜〜〜〜
この日世界に新たな勇者が誕生した。新しき風、新星の勇者 ハルトリー=グランデルム
第7の勇者 フィーペ=ノルン 通称 絶魔の勇者。
聖剣は聖杖 アステルダムド
始祖を除き、歴代最強と謳われる正真正銘の勇者。魔法を極めし者。圧倒的魔力保有量と魔法生成速度、精度は正しく世界最強。魔族に対する並々ならぬ憎悪を抱いており、魔族相手の戦闘では異常なまでの嗜虐性を発揮することもある。