88.死んでもエエんか?
○月〇日。
俺は、呆れた。しょうが無いとは思ったが。
俺は、浮気調査の仕事で打ち合わせに行った帰り、倉持とまともに?殺人事件に遭遇した。
被疑者は、信号機が青信号(緑信号)になってから、ゆっくり発進。
被害者は、スマホを見ながら、交差点に進入。ゆっくり歩いていたらまだ良かったのだが、早足で歩いていた。
スマホの画面に目が戻る前は、点滅青信号か黄信号だったのだろう。それにしても・・・。
「危ない!!」後続車を運転していた倉持は、思わず叫び、ブレーキを踏んだ。
被害者の女性は、若かったが、まともに体の側面から車に弾き跳ばされた。
倉持が110番をするのを確認してから、クラクションを鳴らしながら前に出ようとする車に仁王立ち、車のドライバーに向かって叫んだ。
「今、人身事故が起きた。あんたが殺したことにしてもエエぞ。」
クラクションは鳴り止み、ドライバーは車の中で身を強ばらせていた。
誰しも、我が身に降りかかるまでは『他人事』なのだ。
間もなく、パトカーが、継いで救急車が来た。
俺と倉持は、交通整理をした。
俺は、やって来た警察官に事情を説明、名刺を差し出した。
「南部興信所って言うたら、横山先輩の・・・。」
途端に、警察官は柔和になった。警備会社や興信所は警察官出身が多い。
ウチの花ヤンも横ヤンも例外ではない。
「つまり、被害者の前方不注意ですね。加害者側のドライバーの話とも一致します。あ。ドラレコ積んではりますね。向こうのドラレコも回収しますが、こちらの・・・。」
「勿論、映像は提出しますよ。」
俺は、その場でドラレコのSDを予備と交換し、その警察官に渡した。
「ご協力感謝します。私は、草野と申します。」
草野刑事は、名刺をくれた。
興信所に帰ると、所長に報告。
草野刑事から、救急病院の郷原病院に被害者が収容されたが、間もなく亡くなった、と報告してくれた。
「思い込みは恐いな。」帰ってきた横ヤンが言った。
名刺を横ヤンに見せると、「ああ。四條畷署にいた頃の後輩や。お。巡査部長か。出世したなあ。」と、横ヤンは顔をほころばせた。
家に帰って、澄子に交通事故の話をすると、「仏さんには悪いけど、自業自得やん。お客さんにもな。癖の悪いのがおって、ここで飲んでないのに帰り道の自販機で買って飲んで酒気帯び。『飲むなら乗るな、乗るなら飲むな』ってナンボ言っても気かへん。正確やな。」と返した。
目の錯覚だろうか?一升瓶の中が精力剤に見えた。
―完―




