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86.強盗殺人の理由

「借金で金銭目的」の強盗殺人起訴されたのだが、本庄先生の「何か隠している」と言ったことで、裏事情があるのではないか?と思った。

 ○月〇日。

 俺は、何となく「山勘」が働いた。

 新聞で、東大阪市在住の国交省の職員、増岡弘樹氏が殺された事件が「借金で金銭目的」の強盗殺人起訴されたのだが、本庄先生の「何か隠している」と言ったことで、裏事情があるのではないか?と思った。

 被疑者の大本源太には、確かに借金があった。

 だが、調べて行くと、介護施設で寝たきりの母親がいて、借金が嵩んだ、と分かった。

 ひょっとしたら、と調べたら、介護施設は、所謂『サ高住』の施設だった。

『サ高住』とは、『サービス付き高齢者向け住宅』の略である。

 極めて形態が似ている『有料老人ホーム』や『グループホーム』とは大きく違う点がある。

 世間では、あまり知られていないが、サ高住の管轄は『厚労省』ではなく、『国交省』である。

 協同アパートを賃貸し、そこに介護会社が派遣される、という名目だが、実際は、多くは運営会社と派遣会社が同じだ。違法である。

 コロニーの時は、『厚労省直轄』でない為、サ高住には、所謂『安倍ちゃんマスク』すら配布されなかった。一時、廃棄したとか在庫を抱えているとか言っていたが、『配っていなかった』のだ。

 介護保険は厚労省で、施設は国交省なのだ。極めてアンバランスで、コロニーの頃の政策は無視され、所謂『囲い込み』も横行し、訴訟も起こった。

 でも、マスコミは政府に忖度して問題化しなかった。『報道しない自由』とか言う、憲法にも無い理屈で。

 コロニーというビールスの予防接種やOBQ検査の『儲け』に群がった媒体の一つだったからだ。

 いつまでもいつまでも儲ける為に、予防接種で体調を崩した母親は、施設によって、無理矢理コロニー病棟に送られてしまった。

 大本は、施設と病院に2重に支払いを続けなければいけなかった。

 その前から、施設の訪問医師以外は、面会がなかなか許可されなかったが、病院は更に厳しかった。

 やっと、大本が母親に会えたのは、遺体の状態の母だった。

 3回忌を終えた大本は、ある日、たまたま仕事仲間と寄った居酒屋で、増岡と出会った。

 正確に言うと、隣のテーブルにいたのが、増岡と仲間だった。

 たまたま帰省していた増岡は、酔いも手伝って饒舌だった。

 国交省では、前述の『囲い込み』に対して厚労省に横槍を入れ、まともに対処させなかった。「ウチの縄張り」と言った、と言う。それが増岡だった。

『囲い込み』とは、施設利用者が通っていたデイサービス、通院先などを全て、施設の関連会社に切り替えさせることである。勿論、バックマージンが入り、違う名目で利用者から徴収する。介護用手袋等、利用者に用意させずに施設がバックマージン込みの手袋を使うのだ。

 施設で虐待されていたことも分かっていた。

 借金は、友人知人からのもので、返済は可能だった。

 大本は、自分で増岡の住所を調べることが困難なので、興信所を利用した。

 それが、南部興信所だった。

 何ということだ。

 俺は、本庄先生の報告書の末文にこう書いた。

 大本は、施設を憎み、国交省を憎んでいたから犯行に及んだのだ、と。

 施設は、脱税がばれて、もう解散していた。

 増岡を血祭りに上げることが、母親への供養だったのだ、大本にとっては。

 夜。このことを話したら、澄子は「法廷に行ってあげて。」とだけ、言った。

 ―完―




現実の事件を題材にしていますが、フィクションです。

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