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62.公認不倫

「旧型コロニーやな。詰まり、風邪や。幸田。ウチのベッド使ってええぞ。ワシは目をつぶる。」

言うことが世間離れしすぎや。辻先輩と言い、藤島院長と言い、藤島ワコとの不倫を勧める。


 ○月〇日。

 南部興信所で、前回のEITO東京本部の『枝』、つまり小幹部が全員逮捕されたことを知った俺は、今日『浮気調査』の依頼人がドタキャンしてきたので、早退して、藤島病院に来た。

 午前診療が終った後で、タイミング良かった。

「旧型コロニーやな。詰まり、風邪や。幸田。ウチのベッド使ってええぞ。ワシは目をつぶる。」

 言うことが世間離れしすぎや。辻先輩と言い、藤島院長と言い、藤島ワコとの不倫を勧める。

 結婚を早まったか、という気持ちがないでもない。

 だが、こう見えても俺は常識人や。なんで「公認不倫」しなくちゃならんのか?

 当人がまた、その気になっているような素振りを見せる。

 絶対、フェイクや。ワコはカレシを知られたくないから、俺を『ダシ』に使っている。

 かといって尾行する気にはなれん。『ミイラ取りがミイラになる』になる。

 こう見えても、俺は誘惑に弱い。自慢にはならんが。

 風邪薬の処方箋を貰い、精算する時、ワコは胸元を大きく開け、ルージュを真っ赤に引いていた。そして、ウインクしながら言う。

「兄ちゃん、今度いつ来てくれるン?」

「け。怪我した時。」

 ワコは口をとがらせながら「お大事に。」と言った。

 隣の提携薬局で薬を貰い出てくると、花ヤンと横ヤンの乗った車が来た。

「幸田さん、乗ってく?」「花園町の案件は?」

「チンピラの抗争や。ヤクが関係してないみたいやから現役の駐在らに任せて、帰るとこ。」

 興信所の調査員は、喧嘩の仲裁の応援に行くこともある。地域に根ざした職業やから。

 俺は送って貰うついでに、人生の先輩方に相談した。

「澄子さん次第やろな。代理母は。アメリカじゃ普通やが、『赤の他人』が条件や。後で揉めるサカイな。」

「横ヤン。代理母って、日本ではまだ認められてへんがな。まあ、これからどう変わるか判らんが。」

 アカン。2人とも勘違いしてる。藤島院長も辻先輩も不倫、詰まり浮気を推奨してるんや。

 俺は、浮気せんといかんのか?公認で。そもそも、澄子が知ったら、血イ見るやないか。

 出来るだけ努力せんとアカン。

 まあ、風邪やったら、今日の『お勤め』は免除かな。

 よう判らんが、風邪が治りにくくなるのは事実やから。澄子も心得ている。

「ただいまー。」

 俺は、開けた玄関をまた閉めた。

 風邪で早退するって電話したのに。

 地獄や。

 澄子は、薄いキャミソールで出迎えた。

 あ。風邪薬の処方箋しか出てないのに、ビタミン剤の試供品がたんまり入っていた。

 こういう悪戯するのは、ワコだけや。そんな相手と不倫しろてか。

 俺は、深呼吸して、玄関を開けた。

 澄子は素早く戸締まりをした。

 次の日。俺は、辻先輩の治療院に『腰痛』の治療に行くことになった。

 だ、誰か、助けてクレー!!

 ―完―




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