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【熱中症】

 ○月〇日

「ホンマ、腹立つわあ。澄子。一本付けてくれ。」

 店仕舞いをして、澄子は言った。「どないしたん、あんた。頭から湯気出して。」「俺はやかんか。」と、俺は返した。

「去年の5月な。あっつい日、あったやろ。」「そう言われれば、あったなあ。コート脱いで汗拭いて。」

「その日、ある小学校では遠足やった。母親が言うのには、体調崩してるから、遠足休ませてくれ、って電話で欠席を届けたそうなんや。ところが、担任と副校長が、熱ないんやったら、学校行事やから出て下さい、って言うたんや。お友達も寂しがるよ、って。母親は、次の日、水筒が小さいから、お金をその子供に持たせたんやけど、引率の先生はお茶買いたいって言うその子に『遠足でお金使ってはいけません』って言って受付けへんかった。帰宅まで、その子の命はモタヘンかった。救急隊員は、すぐに『熱中症』と判断した。救急病院に着いた途端、息を引き取った。数日前から、気象予報士達は、気象庁の指導通り、熱中症対策を呼びかけていた。『まだ5月』。そんな予断があったんや。」

「それで?ああ。本庄先生の調査?」「うん。お仲間の弁護士さんが担当するんや。市役所相手取っての損害賠償保障や。学校や教育委員会は自分らの非を認めへんに決まってるやろ?どうせ、はげ頭下げることになるのに。子供は正直や。暑かった、ってみんな言った。熱中症になりかけの子もいた。俺ら5人がかりで父兄と子供に聞き取りした。裁判になるから、学校側も指くわえて見てた。問題はや。何で、前日に欠席届けているのに、拒否したかや。本庄先生は『未必の故意』による殺人に等しい、ってカンカンや。」

「そか、人口が1人減った訳やな。」

 晩酌しながら食べていた俺は、嫌な予感がした。

「人口1人でも増やさな。」澄子は、強引に2階に俺を引きずっていた。

 俺は後悔した。澄子の前では『子供関係』の話はタブー。そう決めた。


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