③桜子の妄想と異変
「それじゃ、また明日!今日は付き合ってくれてありがとう桜っち!」
「どういたしまして!また明日!」
ミカとはお隣さんの中である。
&幼馴染でもある。
さて、家に帰ったら、お待ちかねの妄想タイムだ。
今はもう立派な高校生で、あと3年もしたら、大人になるので、外では妄想を抑えている。(たまに抑えきれてないが。)
桜子は2階の自分の部屋に入って、直ぐに妄想の世界に入った。
桜子は絵を描くのが苦手だから、妄想でしか描くことができない。幼い頃に絵を上手に描こうと練習したとき、同い年の子に笑われて以降描くことは無くなった。
いや、絵というか、桜子は芸術センスな圧倒的に無いのだ。コーデセンスもなく、音痴でもある。
唯一できる芸術は書道。でも、書道は昔字が汚くて、親に無理やり書道教室に入れられて、よく分からないけど上手くなったのだ。(字は相変わらず汚い。)
あれ?なんか桜子のモノローグになってる。早く妄想ワールドに行こ。
最近桜子はドラゴンなどの怪獣にハマっている。とは言っても怪獣映画などは観ていないが・・。
桜子は怪獣をカッコいいではなく、可愛いの視点で見ているのだ。
机の上には、可愛いモササウルスのぬいぐるみ
(自作)を置いている。ちなみに、モササウルスは海生爬虫類であり、恐竜では無いのだ。
ー妄想中ー(現実ではありません。)
ぬいぐるみの小さなモササウルスが一瞬ブルっと身震いし、宙に浮いた。
小さい体なのか、ピィーという小鳥のような鳴き声をして、小さなヒレでペチペチと宙を泳いで桜子の手に乗った。
うぅ〜ん、かぁんわいぃ!
桜子はこのモササウルスをモサちゃんと名付けた。
モサちゃんは宙を海中を泳ぐかのようにヒレで優雅に泳いでいる。そして、机の上に着地し、まんまるキラキラの瞳で桜子を見た。そしてキュッと鳴いた。
うん、分かってる。そろそろ妄想の世界から出なきゃね。
そろそろ定期テストがあるから、勉強しないとね。
妄想終了!
ー現実ー
「ん?」
苦手な数学の勉強中、桜子は自分の体に何かあると感じだ。断じて、勉強したくないから言い訳しているのではないのだ。
なんだろう?桜子の中にあの無くした鍵があるような気がする。
「う〜ん、なんか心臓から右手に移動している感覚がある。」
右手を見てみると、なんと!右手が淡く光っていたのだ!
「うわっ!?光ってる!?もしかして鍵が桜子の身体の中に入ってたの!?」
もう、これしかないだろう。急に無くなったことといい、右手が光ったことは絶対あの鍵が原因だ。
コトンっ!
「わっ!?」
光る右手をしばらく振っていると、ついにあの鍵が出てきて、勉強机に落ちた。
「あれ?なんかあの時見つけた鍵とはなんか違う?・・・でも、一緒っぽい?」
見つけた時は黒い金属の鍵だったが、今はガラスで出来たような鍵になっている。
どゆこと?
桜子はこれは夢なのかと思い、頬を強くギュゥウとつねった。メチャクチャ痛かった。
つまり、、現実である・・・。
「夢じゃないのかぁ〜、え?じゃ、どういうことなの?何なの、この鍵!?」
現実であることに実感すると、桜子はパニックになった。
「ん?」
桜子がパニクっている間に鍵はその先端から、光をビームのように一直線に放ち、桜子の最高傑作である。モサちゃんに綺麗に命中した。
「も、モサちゃーーん!」
桜子は焦った!大事な宝物が壊れると思った。
しかし、モサちゃんは何事もなかったかなように机で可愛く口を開けていた。
「何も起こってない?・・・よかったぁああ!」
桜子は緊張が解けて、床にペタンっと座り込んだ。
「じゃあ、あの光は何だったんだろう?明らかにモサちゃんにヒットしたけど・・・。
「何だったんだろうね、モサちゃん。ま、でもモサちゃんが無事で良かったよぉ〜。」
桜子は指でぽんぽんとモサちゃんの頭を人差し指で優しく撫でた。
「あぁ、中々驚いたぜ。まさかこの俺様が喋れるようになったとは・・・。」
「!?」
桜子は聞き覚えのない声を聞いた。
周りを見渡したが、誰も声を発する物はない。まさかと思い、ゆっくりとモサちゃんの方を見ると・・・。
「おい、お前に聞きたいことがある。俺様は誰なんだ?そしてお前は誰だ?つーか、何が起きている?」
「・・・。」
桜子は人形になったかのように、喋れなくなっていた。目の前の状況が間違いなく原因だろう。
「おい!聞いてんのか?」
声の主はその前足みたいなヒレでペチペチと机を叩いた。
「モサちゃんが、しゃべったぁぁあああああ!!!!」
桜子はおそらく人生最大の悲鳴を上げた。
ーーー
久城市の1番高いビルに、1人の青年が入って行った。
夜だからなのか、ビルの中に人は見当たらない。青年はロビーのエレベーターに乗り、最上階のボタンを押した。
青年は綺麗な顔立ちに、青い瞳、そして短い銀髪を持っていた。
青年はグングン上がるエレベーターの中で、暇つぶしなのか、スマートフォンを取り出し、メッセージアプリを開いた。
ー先週、違法魔法使いの集団が
久城市に現れたらしい。ー
ーそういえば、そいつら
無色の違法鍵を待ってたらしいな。ー
ーそんで、なぎさ様の部下
がそいつらの集団で先入
調査したんだっけ?
ーええ、そうよ。でも、
今日の夕方、彼女の魔力が
消えたの。ー
ーお、おい!つまりそれって!ー
ーえぇ、死んだわ。おそらく
バレたんでしょうね。私との
最後の電話で、無色の違法鍵を
入手したから、商店街の路地裏で
落ち合おうって約束したの。
でも、、。ー
ーレーナはスパイだとバ レて殺された。ー
青年は慣れない手つきでメッセージを送信した。
ー!?ー
ー!?ー
ーえ?アラスター?ー
ーうっそ! あいつようやく
スマホ扱えるようになったのか!T^T。
ーまだ慣れていいないが、一応送信 することはできた。ー
ーそんなことより、
アラスター、今どこにいるの?
あと、「い」が一つ多い。ー
ー訂正感謝する。
ー今<火消し屋>本部にいる。
ー本部ぅ〜?マジ?ー
ーあぁ、本当だ。写真を送 ろうか?
ーいや、必要ないわ。
そういえばアラスターは、
連合長に呼ばれたって聞いたわ。
ーあぁ〜、なんか言ってたな。ー
ーなんかヤバいこと
でもしたのか?ー
ー分からない。最上階に 着いたら分かるだろう。
ーそうね。健闘を祈るわ。ー
ー俺も祈るぜ!ー
ー同じく祈るー
アラスターと呼ばれた青年は最後のメッセージを見た後、アプリを閉じて、スマートフォンをポケットに入れた。
「ふぅ〜。」
エレベーターはまもなく最上階に着くようだ。
アラスターは息を吐き、気持ちを整えた。
エレベーターの扉が開いた。アラスターの目の先には1人の男が立っていた。