原罪 Original Sin
原罪
自転を止めて 1秒でいいの
遠心力で 大気圏から吹き飛ばして
愛の汁は
大地に散って
昇る蒸留塩に
渇した土は割れる
恵みの汗は
ここには来ない
雲はどこに行ったって?
黒いおそらに溶けたのさ
ノアの舟は
ただ渦を見守る
「嵐を越えたいかい?
ならば見返りをおくれ」
自転を止めて 1秒でいいの
遠心力で 大気圏から吹き飛ばして
「さようならみなみなさま」
舌無き精霊たちは
石膏像となり
腹話術師に語られる
突然家にきた奴を
運命の夫と人は言う
「こんな女じゃタタナイね」
三月で三行半くだる
「貴方の為に生まれてきたの
この血も皮も
全てを貴方に
たとえ病に冒されても」
自転をとめて 1秒でいいの
背中の汗を 大気圏から吹き飛ばして
貴方の両手は
今も誰かの首をしめる
でも安心して
首には私の手がまわる
地に耳着けて目を閉じて
次の世界を夢見ても
夢見る床も失われ
残るは炎の子守唄
食べ物も無い水も無い
次の世界に居場所はない
でも安心して
貴方は誰かの贄だから
自転を止めて 1秒でいいの
背中の汗が 吹き飛べば落ち着くから
リンゴを忘れたイブの子ら
皆口々にこう叫ぶ
「私達には罪がある」
「しかし私に罪は無い」
リンゴを忘れて子供らは
木を切り倒してなおも言う
「私達には罪がある」
「しかし私に罪は無い」
リンゴを無くして子供らは
木すら忘れてなおも言う
「私たちには罪はない」
「全ては定めの時のうち」
地球はまわる 1秒も休まず
青い願いを
その胸に隠しながら
私は仰ぐ
東京に立って宇宙を仰ぐ
足の下の原罪を感じながら
4等星を探す
青い願いを
全て無視しながら
地球は回る 1秒も還さず