表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/15

拒絶

 吾朗は出社すると、秘書の求め(・・)を拒否した。

 一人きりで窓の外の街を見下ろしていた。

 自分は何を求めているのか。

 この会社の成功だろうか。成功の結果、経済的に裕福になることだろうか。

 ……違う。

 この耐え難い孤独を救ってくれる(ひと)と過ごすことだ。

 吾朗は佳純の居場所を探した。

 そして、祈るように目を閉じると、社長室から体が消えた。


 佳純は焼き上がったパンを店に並べていた。

 店は客が大勢入っていて、長い髪の男が必死にレジを打っていた。

 店の扉が開くと禿頭の男が入ってきた。

「繁盛しているんだな」

 声が大きいわけではない。見つめあっている訳でもない。

 だが、大勢の客の声を飛び越えるように、禿頭の男の声が佳純の頭に入ってきた。

 佳純は大きな憎しみが湧いてきた。

 禿頭の男が指を鳴らすと、店の客が消えた。

 だが、レジを打っていた男は消えていない。

「ちょっと待て、お前、今、何を!」

 レジを打っていた長髪の男が禿頭の男に近づいてくる。

「このモデルには欠陥がある」

 禿頭の男がそう言うと、長髪の男の手首を握りつぶした。

「OFFだ」

 長髪の男の顔から、怒りが消えた。

 禿頭の男はレジを指さして、言った。

「いいか、俺はこの女に用がある。お前は下がっていろ」

 そして佳純を振り返る。

「いい加減、この男とは別れろ。俺の元にこい」

「……」

 佳純の記憶には存在しないはずのこの男(・・・)のことを、突然思い出した。

 湖畔の食事処で、夜のバーの中で、料亭で、カフェで。

 いや、ずっとこのパン屋を経営していたはずだ。

 なぜ、そんな場面が思い出されるのか。

 ずっと拒否してきたから?

「俺は神だ」

 どうして聞いた覚えがあるのか。

 佳純には分からなかった。

「あんたみたいなのが、神なわけないでしょ」

「いいから俺を受け入れろ」

 佳純は怒りに任せて言い返そうとしたが、違和感があり出来なかった。

 違和感がわかってきた。

 それは吐き気だった。

 吐き気があるだけで、吐いてはいない。

 だが、吐き気のせいか、佳純は突然、何も見えなくなった。

 今、彼女は上も下も、前も後ろも識別できないほど黒い世界にいる。

 その黒い世界の遠く、遥か遠くで、見えないが赤いランプの点滅が感じられるだけだった。

 暗闇の中で、自らの体だけが感じられる。

 私のおなか……


 強い拒絶。

 その瞬間、佳純が吾朗の目の前から消えた。

 いや、姿は存在する。しっかり目に見えている。

 吾朗は何も(・・)しないうちに佳純が勝手に『OFF』になったことを感じた。

 何が起こったのかを探っていく。

 この世界の出来事ではない。

 と言うことは?

「まさか……」

 思いをめぐらせる。

 もしそうなら……

 吾朗はある決断をした。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ