#5 新たな魔法
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「次は魔導学の授業ですわね!」
「セリーちゃん、やっぱり楽しみなんだ?」
「それはもう! 私は魔導騎士を志す者ですからね!」
昼食を食べ終えたクローフィア達は午後の魔導学の講義を受けるために移動していた。
「ですが、教科書も無ければ場所もまた訓練所なのが少々気になりますわ? お姉様が使っていた過去の教科書をお借りして予習をしてきたりもしましたのに……」
「お姉様って第一王女様?」
「そうですわ。 お姉様は前衛タイプですが、魔法も使えて、私にとってクー様に並ぶくらいの憧れなのです♡」
「そうなんだ? あれ、でも確か第一王子様と王女様は双子だよね? 王子様には何か聞いたりしなかったの?」
「あぁー…… お兄様はその…… ちょっとアレでして……」
「アレって?」
「口では説明しづらいのです…… 私と同じ魔法使いで、腕は本当にすごいんですのよ? ですが、魔法のことになると天才肌というか話が通じないと言いますか…… かつて使っていた教科書には、よく分からない文字のようなものが書き殴られていてとても読めませんでしたし……」
「へぇー、どんな人なんだろ?」
「お二方ともこの学園の3年生ですから、その内会える機会はあるかもしれませんね」
「そっか! そう言えばクーちゃんって魔法は使うの?」
「……………………」
「あれ? おーい、クーちゃん?」
「……んぇ? あ、なに?」
「どうしたの? なんか心ここに在らずって感じだったけど」
「……なんでもない。 いや、無くはないけど……」
「ええ?」
「……言ってもしょうがないし、すぐ分かるから」
「わ、分かった?」
そんな風に話していたらクローフィア達は訓練所に着いた。
訓練所には先ほどはなかった簡易的な長椅子と長机がたくさん並べられていて、手元で書いたものを大きく浮かび上がらせる魔法のスクリーンまで用意されていた。
生徒達は当然席に座っていくのだが、何故かそこにはおそらく教師と思われる人達も座っていき、そして更になぜか……
「なっ、なっ、なんでお兄様がここにっ!?」
「おや、セリーじゃないか? そうか、お邪魔するのはセリーのクラスだったか」
セリーが目線を向けた先には、体の線は細く、全体的に優しげな印象を与えさせる雰囲気を醸し出す、この国の第一王子のエクスヴィオ・フォン・グラセリアが、さも当然かのように最前列に座っていた。
「お兄様、自分の講義は!?」
「え? あぁ、僕もう実践訓練以外の単位は全部取ってるから」
「なんでここに!?」
「この講義はとーっても歴史に残る講義になるってリリーフィア先生に言われてね? 魔導学の先生達は全員来るし、なんならほら、あそこに魔導騎士団のメンバーもいる」
「ほ、本当ですわね……」
しかもその来ている魔導騎士団のメンバーも、魔導騎士を目指す者達にとっては憧れを抱くような有名人ばかりだった。
「い、一体何が始まりますの……?」
「なんかすごい事になってきたね、クーちゃん…… あれっ? クーちゃん?」
アカネはクローフィアの事を呼んだが、つい先程まで隣にいたクローフィアは姿を消してしまっていた。
「お花摘みかな……?」
「生徒の皆さん、そして他にもこの講義を受けに来た皆さん、間も無く講義を始めますのでお席へどうぞ〜」
すると、教壇の方から拡声器を使ったリリーフィアの声が響き、生徒達も他の者達も席についた。
生徒達には講義をメモする用の紙とペンも渡され、いよいよ魔導学の講義が始まろうとしていた。
「今回の講義は少なくとも我が国においての魔法の常識を大きく覆すものとなります〜。 これからはそれが新しい魔導学となるので、今年は新入生達には教科書を用意していません〜。 今までの魔法の常識に囚われず、全く新しい知識を学ぶつもりで臨んでくださいね〜。 それでは、講師をお呼びします〜、どうぞ〜♡」
「……特務騎士のクローフィア、です。 よろしく、お願いします……」
「く、クーちゃんっ!?」
教壇に立っていたのは先程まで隣にいたはずのクローフィアだった。
「生徒達の驚きはもちろん、先生方や騎士団の方々の驚きは最もです〜。 ですが、まずはお話を聞いてみてください〜♡ きっと驚かれますので〜♡」
「……今回話すのは、私が創った……? 開発した……? 新しい魔導学についてお話し、します……」
「クーちゃん、無理に畏まらなくて良いわよ〜♡ 皆さん優しいから気にしないわ〜♡」
「……ん、分かった。 えっと、まずは前提知識として、今までの魔法について話す」
そう言ってクローフィアは手元の板に簡単に図示した魔法陣と詠唱文を書いた。
すると、それが大きく魔法のスクリーンに映し出されていく。
「……これは初級魔法って呼ばれてるファイアボールの魔法陣と詠唱文。 この魔法陣は三分割された二重の円の中に三角形が描かれているような形になってる。 ……セリー?」
「は、はい? なんですの?」
「……魔法はどうやって発動する?」
「えーっと、詠唱をして魔力を杖に込めたら魔法陣が出てきて発動という流れかと」
「……んっ、それが正しいとされてきた知識。 今までは詠唱によって魔法は作られると考えられてきた。 けど、それは合ってるようで合ってない」
クローフィアの言葉に生徒達はハテナマークを浮かべていたが、魔法に深く通じている者達は早くもクローフィアの言葉に引き込まれ始めていた。
「……詠唱はあくまでも魔法がどういったものとして発動するかのイメージ。 ファイアボールだったら『火球よ、眼前の敵を燃やし尽くせ』になるけど、これを実際に起こる事象として言い換えると『火の球が、前方方向の対象へ飛んでいき、燃える』となる。 ここまでは分かる?」
クローフィアは意外にもしっかりと生徒にも分かるように説明してくれるので、生徒達も言いたいことは伝わってきていた。
「……それで、改めて魔法陣を見て欲しい。 今、私が唱えたファイアボールの魔法で起こる事象は3つ。 対して魔法陣の内側の図形は三角形。 周りの分割された円の数も3つ。 ……他の例を挙げると、同じ火系統で中級魔法とされているファイアジャベリンの魔法陣と詠唱文はこれ」
クローフィアは今度は四角形が中心に描かれた魔法陣と、『炎槍よ、全てを貫く矛となりて、眼前の敵を燃やし尽くせ』という文を書いた。
「……こっちは内側の図形は四角形で、さっきみたいに詠唱文を言い換えると、『炎の槍が、対象を貫く形になって、前方方向の対象を、燃やす』になる。 こんな感じで全ての魔法と魔法陣の形には因果関係があった。 けど、これだけじゃない」
ここまでの話でも魔法に通じる者達の顔はギラギラと輝いてきているのだが、まだ続きがあるらしい。
「……またファイアボールの魔法陣を見て欲しいんだけど、ここ。 今度はこの三角形の外側の円の部分。 円は二重になっててその内側に文字のようなものが書かれてると思うけど、これは魔術式と呼ばれるもの。 ……これが魔法を構成するものだという説は今までもあったらしいけど、それは実は大正解。 魔法で1番大切なのは実はこの部分だった」
そう言ってクローフィアは知識のないものからしたら幾何学模様にしか見えない魔術式をスラスラと当たり前の様に板に書いていく。
この時点で先生や魔導騎士団の面々、そして第一王子のエクスヴィオは思わず驚きの声を上げたが、クローフィアは説明を続けていく。
「……読めないとは思うけど、これがファイアボールの魔術式。 ありがたいことに文法は私達の言葉と似てて、ここが詠唱で言うところの『火球よ』、真ん中が『眼前の敵を』、そして最後が『燃やし尽くせ』、になる。 ……そして、今日1番伝えたいことは、この魔術式を理解さえできれば、魔法はいくらでも姿を変えられるということ」
クローフィアはそう言い放つと、近くに立っている的の前に立った。
「……『火球よ、眼前の敵を燃やし尽くせ』」
すると、まずは今まで通りのファイアボールを放った。
そのファイアボールの魔法は見事に的に当たり、爆ぜた。
「……これがファイアボールの魔法。 この魔法の魔術式を少し変える。 詠唱するとしたら…… 『火球よ、眼前の敵を捕えよ』」
今度は別の的に向かってクローフィアは魔法を放った。
一見先ほどと全く変わらない火球に見えたが、それが的に着弾した瞬間、火球は爆発せずに的を包み込んで捕らえたかと思うと、その的を静かに燃やし尽くして霧散した。
「……これが魔法の可能性。 魔術式さえ理解すれば魔法はいくらでも形を変える。 そして……」
クローフィアは更に隣の的を見据えると、突然一つの魔法を放った。
それは今度は細い炎の縄のような形になり、的を燃やしながらぐるぐるーっと拘束してしまった。
「なっ、む、無詠唱だと……!?」
「……そう。 魔術式を理解してイメージさえ作れれば詠唱なんていらない。 詠唱は魔法を作るものじゃなくて、あくまでも魔法をイメージするための補助でしかなかった」
そう最後に締め括ったクローフィアは、教壇に戻った。
「……ここまでが私が今日伝えたかった事。 ……ちゃんと理解できた?」
ちょっと不安そうにクローフィアがそう尋ねると、一瞬の静寂の後、訓練所内は万雷の拍手の音が響き渡るのであった。
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