五十五、クリスの元仲間達
ダンジョンから出て町へと戻ってきた俺達。かなりいいペースで攻略していたこともあり、まだ夕方であった。町に入ってすぐ、依頼から戻って来た他の冒険者を見かけてた。
「まだこんな時間だったのですね」
クリスがそんなことを言う。確かにダンジョンの中にいると、時間の感覚を忘れてしまい実際に過ぎた時間よりも長い時間いたのではないかと思ってしまう。
俺達は少し不思議な感覚に包まれながら冒険者ギルドへと向かっていたのだが、
「お前クリスか?」
俺達に声を掛けてきた者がいる。聞き覚えはない。俺は、誰だか確認するために声のした方を向くと、俺と同じくらいの男二人と、女一人の冒険者が立て俺達の方を指さしている。
その声に対して、
「皆!」
クリスが少し驚いたような声を上げる。
「知り合いか?」
「はい。私の元パーティーメンバーの人達です」
彼らは一週間前、ダンジョンでモンスター達に襲われた際に、クリスを囮に逃げた者達であった。確かにそう言われると、ダンジョンですれ違った者達であったと思う。
しかも彼らは、助けを呼ぶでなく、クリスがダンジョンで死んだ扱いにしてギルドに報告していた。
「お前生きてたのかよ! そうならそうとさっさと戻って来いよな」
「そうね。でもまさか、クリス一人であれだけのモンスターを倒したなんて少し驚いたわ。あなた、そんなレベル高かったかしら?」
彼らはクリスを見ながら好き勝手言っている。クリスはあの日の一件で心に傷を作ってしまっている。今は少し回復したが、それでもまだ残っている。
クリスは彼らに会いたくなかっただろうな。
「それで君達は何なのかな?」
今度俺達に視線を向けてくる。ただ、俺とは目を合わせずにアリスとミラーさんを見ている。
「おいおい、あれって冒険者ギルドで受付をしているミラーって女じゃないか?」
「そうね。なんでもギルドでそこそこ力を持っているんでしょ。なんでそんな人がクリスといるのかしら?」
俺達の事を無視して、仲間内で話している。質問しておいて俺達そっちのけで話すなよと思う。
「え~と、それで俺達に何か用ですか? もし用がないなら、失礼したいんですけど」
いくら最低な冒険者でも、一応クリスの元冒険者仲間で同郷の友達である。ケイル達のような扱いをするわけにもいかないため少し下手に出てみる。
すると、
「お前に口をきいてないんだよ! 俺達が話してるのはそこにいるクリスなんだよ!」
おいおい、お前らが話しかけてきたんだろう。それに、俺達は何なのかって質問してきたじゃないか! こいつらは少しばかなのか?
「え~と、この人達は今の私のパーティーの仲間です」
クリスが一歩前に出て言う。堂々としている。
「おいおい、お前が所属しているのは俺達のパーティーだろうが! 勝手にパーティーを抜けれると思っているのかよ!」
クリスの言葉に対して、少し切れ気味に言ってくる男。
「その件ですが、クリスさんは既にあなた方のパーティーを脱退扱いになっていますよ」
男に言い返すミラーさん。顔が少し怒っているように見える。
「どういう事だよ! いくらギルド内で力があるからってそんなこと勝手にしていいのかよ!」
こいつはマジでそんなことを言っているのか。
「勝手ではありません。あなた方一週間前、クリスさんがダンジョンで死んだとギルドに報告されましたよね」
「ああ、したな。あの時は流石にもう駄目だと思った。だから、死んでしまったと報告したんだ。だが、こうしてクリスが生きていた。つまりあの報告は無効だ! クリスは俺達のパーティーメンバーのままだろうが!」
「いいえ違います。あなた方一週間前あの報告をした時点でクリスさんは死んだ扱いになります。そうなると、自動的にパーティーから抜けた扱いになるのですが、後に本当は生きていたと分かった場合でも一度抜けた扱いになると、改めてそのパーティー登録が必要になります。もし、その人が他のパーティーに入りたいと希望すれば入ることも可能です」
ミラーさんが胸を張って言う。その言葉には説得力しかなく、言い返す隙が無い。
「そ、そんなの嘘に決まってる。もし本当だとしても、こんな出来損ないを欲しいパーティーなんているはずないだろう」
「私は既に、マイルさんが率いる冒険者パーティーの一員です」
今度はクリスが言う。
「誰だよそのマイルって、聞いたことないぞ」
「マイルさんはこの人です」
三人の視線が俺へと集まる。
そして、
「っふハハハハハ、おいおい俺達を笑わせるなよ。そんなひょろっとした冒険者のパーティーだ~、まじで言っているのかよ! まだ俺達のパーティーにいた方がましだぜ」
三人は笑っている。そしてバカにしてくる。別にバカにされるのは正直慣れているが、見ず知らずの奴らにそこまで言われる筋合いもない。
「なあお前ら、二週間前のモンスターの大群がこの町を襲いに来た事件は知っているか?」
「それが、どうしたんだよ。今は関係ないだろう」
「そこで活躍した冒険者がいたことを知っているか?」
「ああ、知ってるよ。何でも今はSランク冒険者になったんだって聞いたが、それがどうしたって言うんだよ!」
「それが俺だよ。この町のSランク冒険者、マイル=マイヤーだ」
「はぁ~、嘘はやめとけよ。いくら俺達がその時、この町にいなかったからってそれが嘘だってことくらい分かるぞ」
俺達が少し大声で話していることもあり、周りに人が集まって来ていた。そして、今の男の発言を聞いて、町の人達が少し驚きの表情をしている。たぶん、「こいつそんなことを本当に言っているのか?」などと思っているのだろう。
それは、町の人達だけでなくアリス達も同じであった。まあ、名前を聞いても気づかなかったし仕方がないとも思うがまさかここまで残念な奴らだとは思わなかった。
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