五十二、九階層 2
「マイルさん! 何処へ行っていたんですか!?」
俺の姿を見るや、アリスが俺の元へとやってくる。
「ああ、後ろから三体のモンスターが近づいてきていたから倒しに行っていただけだよ」
「そうだったのですか! 私全く気付きませんでした」
ミラーさんが少し落ち込んでいるが、
「気にしなくていいよ。元々俺達のいた場所からは見えない位置にいたし」
鑑定の魔眼がなければ見つけることが出来なかっただろう。
「ですが」
「三人は正面にいたモンスターを倒しただろう。それでいいじゃないか。それに、俺もそろそろ体を動かしとかないとなまって来るしな」
俺はミラーさんを励まそうと声を掛ける。
「マイルさんがそうおっしゃられるなら」
俯いていた顔を上げてくれた。
そのことにほっとしていると、
「理由は分かりました。ですが一言くらい言ってから行ってください。じゃないと心配するじゃないですか」
アリス少し顔を俯けながら言ってくる。一瞬だけアリスの悲しそうな顔が見えた。そんな顔をされてはと思い俺は、
「ごめんな。別に心配を掛けたいとかじゃなかったんだ。それよりも、俺も何かできないかと思ってただ動いただけなんだよ。だけどそのことでアリスに心配を掛けてしまったのならごめんな」
俺は俯いているアリスの頭をポンポンと叩いてやった後、少し撫でる。
「じゃぁもう、私の傍から勝手にいなくならないでくださいね」
「分かったよ。もし一人で何処かに行くときはアリスに伝えてからにするよ」
「本当ですか?」
「約束だ」
俺がその言葉を言った瞬間、アリスが顔を上げた。その顔は物凄くいい笑顔であった。
「そろそろ動きませんと、モンスター達が集まってきますよ」
「そうだな」
ミラーさんの言う通り、こんな所に長居していても良いことなんてない。
十階層の階段目指して歩き始める。
それからモンスターと遭遇することなく歩いているが、十階層に繋がる階段がまだ見つからない。だが、俺の記憶が確かなら、もうすぐその階段があるはずなんだが。
俺は辺りをキョロキョロと見渡す。すると、
「皆さん、前に何かの入り口があります!」
クリスが指を挿した先を見て見ると、確かに入り口らしき物がある。
「何でしょうか? 他の階層では見たことがありませんね」
アリスが顎に指を当てて頭を捻っている。後ろ姿しか見えないが、凄く可愛い。
「あれが十階層に繋がる階段のあるところだ」
ミラーさんは当然知っているが、アリスもクリスも初めて見るためか少し驚いている。
「あれがですか?」
クリスが見つけたのは壁に少し豪華な扉が付いている場所である。
「そうだよ。次の十階層はボスフロアだからね。少し豪華なつくりになっているんだ」
二人は、「へ~」と言った顔をしている。一応は納得してくれているのだろう。
「とりあえず、下へ降りよう」
俺達は扉を開けて階段を下りていく。扉は確かに豪華だったが、階段は他と何も変わらない。
「そう言えば、このダンジョンのボスってどんなモンスターなのですか?」
「ここのボスモンスターはゴブリンキングだ。Bランクの中でも下位のモンスターだがそれでも強い」
そうは言っても、レベル差が有りすぎるがな。
「そうですね。それに、取り巻きにゴブリンライダーが五体います。その上、ボスを倒さないとゴブリンライダー達は復活します。これはどこのダンジョンでも一緒ですが、かなり厄介です」
ミラーさんの言う通り、ダンジョンのボスモンスターとの戦いは、普段のモンスター達との戦いとは少し違う。取り巻きのモンスター達は、ボスを守るために動き、倒してもボスがいる限り復活してくる。かなり厄介な相手だ。
「そうだな。力押しだけで勝てるとは限らない。しっかりとミラーさんの指示を聞いて動かないと、やられる恐れもあるぞ」
「分かりました」
「頑張ります」
アリスもクリスも気合は十分のようだ。
「今回は俺も戦闘に参加する。ミラーさん指揮をお願いしますね」
「いいのですか? フォレストガーディアンのパーティーリーダーはマイルさんなのですよ」
「いいんです。ミラーさんの方が俺よりもしっかり周りが見えています。それに、俺よりも経験が上です。ですので、よろしくお願いします」
「分かりました」
ミラーさんは俺からのお願いを聞いてくれた。少し強引にはなったかもしれないが、これがこのパーティーの最善であると俺は考えている。
そんな話をしている内に十階層へと到着した。ここは九階層までとは違い、周りが岩の壁で囲まれた洞窟のようになっている。ただ少し違うのは、天井がかなり高い。
目の前には大きな扉がある。
「凄く大きな扉ですね。どうやって入るんですか?」
当然の質問がアリスから出る。
「前に立つだけでいいんですよ」
アリスの疑問に答えたのはミラーさんだった。
「前にですか?」
アリスの疑問に対して俺は答えを示そうと扉の前に立つ。すると、大きな扉が自然と開き始める。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ!
大きな音と共に開ききり、俺達は中へと入って行くのだった。
最後までお読みいただきありがとうございます。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「今後どうなるのっ……!」
と思ったら
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!
ブックマークすると更新通知が受け取れるようになります!
ブクマ、評価は作者の励みになります!
何卒よろしくお願いいたします。




