五十、二階層での戦闘
二階層を探索し始めて十分程でモンスターと遭遇した。出会ったのはレッドウルフ二体。レベルはそれぞれ二十。今の三人なら余裕で勝てる相手だ。そのことにはミラーさんにアリスも気づいている。
二人は経験的に分かったのだろう。だが、そんな二人は別にクリスだけは気づいていない様子。一階層で戦ってきたのは、一体ずつのモンスター。ダンジョンで複数体のモンスターと戦うのは、一週間前のあの時以来だろう。そのためか、少し肩に力が入っている。
「二人ともポジションについてください」
ミラーさんから二人に指示が飛ぶ。その指示を聞き、アリスとクリスはいつものポジションに、
「アリスさん、魔法で牽制してもらえますか」
「分かりました。お姉ちゃん」
アリスはこちらの様子を伺っているレッドウルフに対して、火魔法のファイアーボールを放つ。
「クリスさんは、ファイアーボールの着弾と同時に二体に攻撃を仕掛けてください」
「わ、分かりました」
クリスはミラーさんの指示を聞き槍を構える。いつもに比べると少し硬いように思える。
アリスの放ったファイアーボールが、攻撃を仕掛けようするタイミングでレッドウルフの足元に命中。それにより体勢を崩す。
「今です!」
ミラーさんの一声でクリスが向かって行く。そのことにはレッドウルフも気づいてはいるが、体勢を崩しているため、その場から動くことが出来ない。そこへクリスの素早い突きが二回放たれる。
クリスの正確な突きでレッドウルフの脳天に穴が開き動かなくなる。
「お見事ですよクリスさん」
「はい。お姉様」
クリスの攻撃を褒めるミラーさん。彼女も一応、もしもの時のために、弓をすぐに放てるように準備していたようだ。
「それにアリスさんも、ナイスコントロールです」
「これくらい余裕です」
アリスは自信満々に胸を張っている。自分の想像以上にうまくいったんだろうな。
「三人ともお疲れ様、余裕の戦闘だったな」
俺が三人に声を掛ける。
「そうですね。私達にかかれば、あの程度のモンスター余裕だよマイルさん」
少し調子に乗っているアリス。
「アリスさん。どんな時でも油断はダメですよ」
俺が注意しようと思ったところでミラーさんがアリスを注意した。流石はベテラン冒険者、しっかりと分かっている。
それに対してアリスも少し反省した様子。これなら問題ないだろう。
「クリスも良い突きだったぞ。後はもう少しリラックスして戦えたらなおいいな」
俺の言葉に対して少し俯いているクリス。
「俺は別に怒ってないぞ。どうしたって複数のモンスターと出会うと、一週間前の事を思い出してしまうんだろう。それはしょうがないことだ。だが、そのままだといつまで経っても成長できない。だから、少しずつ慣れて行こう」
「は、はい! 私の事を助けて下さったマイルさんのためにも私頑張ります」
「俺のためじゃなくていいから、自分のために頑張れよ」
「分かりました」
クリスから元気のいい返事が返ってくる。これなら問題ないだろう。
「ミラーさんも冷静な判断流石でした」
「いえいえ、私なんてたいして何もしてないですよ。二人がしっかりと意図を読み取ってくれたおかげです」
謙遜をしているが、相手の行動の一手、二手先を読む行動。仲間の安全を考慮した指示、流石だとしか言えない。たぶん俺が指示を出していたら、一番最初に力んでいたクリスを突っ込ませていただろう。そういう意味でも、しっかり周りが見えているミラーさんがいてくれることは頼もしい。
「謙遜しないでください。俺はミラーさんの事を頼りにしているんですよ」
「そう言っていただけると助かります。ですが、マイルさんでも私と同じ判断、いえそれ以上の判断をされたと思いますよ。」
「そんなことはないさ。俺の知識は本の中での物で、明らかに実践が経験が少なすぎる。だから、ミラーさんを見て色々と学ばせてもらってますよ」
「マイルさんは口がお上手ですね」
クスクスと笑っているミラーさん。俺は、
「先へ進もうか。ここに長居していてもしょうがないしな」
「そうですね。出来るだけ早めに三階層に向かう階段まで向かいましょう。そこで、一度休憩を取りたいと思います」
「そうだな。こんな階層で体力を使いたくもないしな。俺は良いと思うぞ」
「私もお姉ちゃんの意見に賛成です」
「私もです」
ミラーさんの意見に反対する者はいなかった。まあ、戦闘回数なんて少ない方がいいに決まっているからな。今回俺達の目標としているのは十階層にいるボス。そこにたどり着くまでにどれほど体力を残せるかどうかが攻略のカギになる。まあ、レベルの差がかなりあるためにあまり気にしなくてもいいだろうが、将来的な所を考えた判断だろう。
俺達はそこから数回の戦闘はあったが、ミラーさんの指示の元、クリスとアリスが攻撃を仕掛けてモンスターを倒して行った。レベルの差は勿論だが、戦闘技術もかなり向上していることもあり、ダメージを受けず、最低限の体力の消費だけで済んでいる。
「マイルさん見えてきました」
「そのようだな」
二階層から三階層へと降りる階段へと到着した。
「それではここで少し休憩にします」
ミラーさんの指示で俺達は休憩を取ることになった。
最後までお読みいただきありがとうございます。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「今後どうなるのっ……!」
と思ったら
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!
ブックマークすると更新通知が受け取れるようになります!
ブクマ、評価は作者の励みになります!
何卒よろしくお願いいたします。




