追放サイド6
あの忌まわしい日から既に二週間が過ぎた。少しでも気を抜けば何日経ったか忘れそうになる。
スキルを持たない出来損ないの無能に負けたあの日、俺達は町の自警団に捕まり、クリセント王国が王都、クルリトにある監獄へと収容されている。なぜ俺がこんなところに入れられなければいけないのか。
「あいつのせいだ! あの無能が皆を騙し俺達を陥れた! 絶対に許さねー」
俺は毎日のようにあいつの顔を思い浮かべていた。
「おい、運動の時間だ! 出てこい囚人番号二〇〇五番!」
監獄の監視員に呼ばれる。この監獄では毎日一時間、運動の時間と労働の時間が設けられている。今は運動の時間。
「早く出ろ!」
「分かってるよ」
俺は監視員の指示に従い牢獄の外に出る。隣の牢獄に入っているキリエにライラも同時に外へと出てくる。
「ケイルおはよう」
「おはよう」
毎日、顔を合わせるとキリエとライラが挨拶をしてくる。俺はそれに、
「おはよう」
低い声で答えておく。二人は平気そうな顔をしているが、俺はそんな二人を見て、どうしてそんな顔ができるんだとイライラしてくる。
お前達はマイルの事を恨んでないのかと、あんな卑怯者に復讐をしたいと思っていないのかと。
俺がそんなことを考えて立ち止まっていると、
「早く動け!」
監視員に腕を引っ張られて連れていかれる。ここでは特殊な手錠でスキルが封じられている。その上、監視員として働いているのは元Aランク以上の冒険者。スキルを封じられている状態ではどうしようもない。
スキルさえ使えれば余裕で勝てるのにと思う毎日。
「ねえケイル、どうするの?」
「何がだよ!」
「このまま、大人しくここにいるつもりなのかって言ってるのよ」
キリエは辺りをキョロキョロとして、周りにいる監視員を気にしながら話している。
「んなわけあるか! どうにかしてここを抜け出すに決まっているだろう。だが今はまだその時じゃない」
俺は、タイミングを待っていた。まだ捕まって二週間、一番警戒されているはずだ。そんなかで脱獄を試みても失敗に終わるだろう。だから、もう少し待って警戒が緩むのを待つ。
「分かったわ。ライラにもそう伝えておく。でも、ケイルの言うその時が来たら、私達に声を掛けなさい。置いて行ったら許さないからね」
それだけ言って俺から離れていく。
まさか、キリエ達がそんなことを考えていたとは思わなかった。流石俺の仲間だぜ。だがどうやって脱獄するか、それに関しては今の内に考えておかないといけない。そう思った時、
「力がいるかしら?」
何処からか声が聞こえてきた。俺の周りにいる奴らは何事もなかったかのように走っている。つまりは俺だけに聞こえている声だと言うこと。
「お前は誰だ! 何故俺に話しかけてくる」
「ふふふ、人間は面白いことを聞くのね」
人間は? こいつは何を言っている。
「私はね女神よ。お空の上からあなた達を見守っている存在かしらね」
「その女神様が、なんで俺なんかに話しかけてくる」
「私と利害が一致しているからよ」
「利害が一致しているだ~、何を言ってやがる!」
「だってそうでしょ? 君はマイルて言う人間を倒したいと思っているでしょ? 私もその人間が邪魔なのよ。だから、君に手を貸してあげようと思ったのよ」
面白いじゃないか。マイルを倒す力が手に入る。これが悪魔の囁きでも俺は乗るな。
「いいぜ。その誘いに乗ってやるよ」
「そう。ならもう少しそこにいなさいね。あなたの言うタイミングが来たらそこから出してあげる」
それだけ言って女神を名乗る声は来ていった。
「なんだか知らね~が、面白くなってきやがった。待ってろよマイル。お前は俺が倒してやるからな」
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