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十三、一対二

 昼食を食べ終えた俺達は、モンスター探しを再開したのだが、


「アリスさん?」


 何故かアリスが俺の腕に抱き着いてきて離れない。


「何ですかマイルさん? 後さん付けはやめて下さい」


「あ、ああって、そんなことよりも抱き着かれてたら動きにくいんだが」


 そもそも今は冒険者の依頼で来ている。そしてここはモンスターが出る森の中だ。そんな所で何をしているんだ。


「いいではありませんか! マイルさんが居ればモンスターを見つけることが出来るわけですし」


「それもそうかもしれないが、緊張感がな」


「は~、分かりました。では町に帰ってから一つだけお願いを聞いてくださいますか」


「別にいいぞ」


 俺の言葉を聞いた瞬間、アリスが物凄くいい笑顔になった。その顔を見た瞬間、俺は答えを間違ったのではないかと思った。


 そんな時、


「ここから東に五十メートルの程の場所にゴブリンがいる」


「分かりました」


 気合十分に先頭を行くアリス。だが、


「マイルさん、なんだか体に力が入りません」


 その言葉に俺はスキル付与の制限時間の事を思い出した。そこで、


「最初にスキルを付与してから一時間が経ったから、付与が解除されたんだろう。すぐに掛けなおすら少し待っていてくれ」


 俺は先ほどアリスに付与したスキルと同じ物を付与していく。すると、


「ああ、身体強化使えました! 体が軽いです」


 その場でぴょんぴょんと飛び跳ねるアリス。


「先を急ぐぞ」


「はい!」


 俺の前を全速力で走っていく。そしてしばらく進んだところで、ゴブリンを発見した。


「マイルさん!」


 アリスもゴブリンに気づいたようだ。そして少し驚いている。


「ゴブリンが二体いますよ」


「そうだな」


 さっきゴブリンを発見した時あえて伏せていたが今回の戦闘ではゴブリン二体を相手にしてもらうつもりでいた。先ほどまでは、アリスに自分でもゴブリンを倒せる自信をつけてもらうために一対一で戦ってもらっていた。今回は、戦闘に頭を使ってもらう。どうしたら二体を相手に戦えるのか? そこをしっかり考えてもらうつもりだ。


「アリスもさっきの戦闘で少しは自信が付いただろう。自分でもゴブリンを倒せるんだって」


「はい」


 少し声が暗く小さい。


「今度はその数が二になっただけだ。やることは自体は一体の時とさほど変わらない。そして、相手はアリスより圧倒的に弱い。しっかりと戦えれば問題なく倒せるはずだよ」


 俺の言葉に少し顔を上にあげたがそれでもまだ暗い。どうした物か? 俺は少し悩む。


「まだ自信がないか」


「う、うん」


「モンスターは怖いか」


「はい」


「その気持ちは俺も分かる。だけど、それでは冒険者は務まらない。それは分かるな」


「はい」


「よし。これはいつかは自分で超えられなければいけない壁なんだ」


 そう、この世界にモンスターを怖がらない者なんていない。俺だって怖い。どんな戦闘でも油断すれば負けるかもしれないし、死ぬかもしれない。だけど、ただ怯えていても何も変わらないし、思わぬ失敗を生む可能性がある。だからこそ、自分に自信を持つことが大切なんだ。そして、俺が見守っていて上げられるときに、アリスにはしっかりと自信を持ってもらいたいと思っている。


「分かりました。私頑張ります。これからもマイルさんと一緒に冒険者をしたいから」


「そうだな。俺もアリスと一緒に冒険者の仕事をこれからもしていきたいよ。だから頑張れ」


「はい!」


 アリスは返事をすると同時に茂みから出て行く。その際、


「アリス、短剣を使ってみな。ただし攻撃以外にな」


 一つだけアドバイスをする。そのアドバイスに一瞬頭をかしげていたが、何かの気づいたのか俺の方を見て頭を縦に振りゴブリンへと向かって行く。


 アリスは短剣術のスキルを持っていない。そのため、短剣をうまく操れるかと言うと、少し難しいところがある。そのため俺は攻撃以外に使うようにとアドバイスした。このアドバイスの意味を理解してくれていれば、ダメージを受けずにゴブリン二体を倒すことも出来るだろう。


 俺は、期待を込めてアリスの戦闘を見守る。


 ゴブリンはアリスに気づくと真っ先に一体が向かってくる。それに続きもう一体も向かってくる。それに対してアリスはその場から動かずに魔法を発動するための準備をしていた。ここまで先ほどの戦闘の時と変わらない。ただ、手に短剣を持っている以外は。


 アリスが動かない所を見て、チャンスだと感じたのか前を行くゴブリンがアリス目がけて棍棒を振り下ろしてくる。それに対してアリスは魔法を使うでなく、短剣でその攻撃を受け止めている。それと同時に先ほど準備していた魔法を後方から向かって来ているゴブリン目がけて放った。今回使ったのは水の槍、ウォーターランス。三本のウォーターランスを全て命中させる。それにより、倒されるゴブリン。


 俺は、良い判断だと心の中でアリスを褒めた。俺のアドバイスをしっかり理解した戦闘を見せてくれた。


 残すは目の前で攻撃を受け止めているゴブリン。そのゴブリンに対して、アリスはウインドショットを放って倒す。ウォーターランスを放ってからすぐに次の魔法の準備を整えての攻撃、十分と言える。


 正直な所を言うと、今のアリスならゴブリン二体程度、魔法の火力だけで倒すことも可能だと思う。だけど、もしもの時、自分と同じくらいの強さの敵に遭遇した時に何も考えずにただ魔法を使うようであればそこで死ぬだろう。だからこそ、今のうちにいろいろな戦闘を経験させてあげたいと思ったのだ。


「アリスお疲れ、いい戦いだったよ」


「ありがとうございます」


 俺に褒められてうれしそうだ。


「今のアリスはもっと自分に自信を持っていいんだよ。アリスは強い。これは俺が保証するから」


 アリスはコクリと一回頷いた。


「よしそれじゃあ、ラスト一体のゴブリンを倒しに行くか」


「はい」


 俺の言葉にアリスは笑顔で答えてくれた。

 最後までお読みいただきありがとうございます。


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「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるのっ……!」


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