ナイスバルクスク
サブタイトルは特に内容に関係ないです。でも関係ある時もあります。
「あ!見えてきた!」
家を出た後、僕たちは最寄りの馬車乗り場で近くの大きな街を目指していた。
かなり大きい馬車だが中には僕とレフと運転手のお爺さんしかいない。
まあ僕の村がかなり山奥にあるからだろうけど。
「お爺さん、馬車代まけてくれてありがとう」
「かまわん。冒険者を目指す青年と聞けばつい応援したくなるものよ」
お爺さんは気持ちよく笑いながら言った。
僕みたいな子どもの話し相手になってくれたりお茶を出してくれたり馬車代まけてくれたり、ぐうの音も出ない聖人だった。
僕もこんな人になりたい。
「それに貴重な体験をさせてくれたからの」
お爺さんは馬車でリラックスするレフを見ながら言う。
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レフは僕が五歳の時に拾った魔物だ。
邪腕と言う高位のアンデッドらしい。
近くの森で弱っているのを見かけて家に連れ帰ったときは家族のみんなに驚かれた。
今や大切な家族の一員になっている。
ペットって言うのかな?それとも…まあそれはいいか。
アンデッドのばずなのに普通に日に当たるし、日向ぼっこをよくしていた。
ちなみにレフは地上と地中を自由に行き来することができる。
どっちの状態でも意識はあるんだけど、レフは地上のほうが好きみたいだ。
人がいる場所では、配慮したのかあまりレフは地上には出なかった。
でも大体は僕の影の中に待機していた。
村では周知されているから普通に地上に出ていたけれど。
そんなこんなでレフは僕の相棒みたいな存在だ。
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お爺さんは馬車の中でレフを出すのを快く許してくれた。
最初のころは驚いていたけれど…
「いやーそれにしてもいい筋肉しておるな。荷物運びを手伝ってほしいわい」
今では普通にレフの筋肉を批評している。好評なようだ。
お爺さんの言うようにレフの筋肉は逞しい。
うちの農作業を手伝わせてたらなんか健康的に仕上がってた。
そういえばちょっと前に村で車輪が外れた馬車を持ち上げて運んだこともあったっけ。
そこに村の人々が目をつけて、レフは力仕事で彼らを手伝っていた。
暇なときは僕も便乗してお小遣いをもらってたなあ。
「おーい、着いたぞ坊主」
あ、馬車が止まった。
過去の思い出を浸っているうちに街の馬車乗り場に着いたようだ。
僕はカバンを背負って、レフに影に移動してもらってから馬車を降りた。
そしてお爺さんに振り返って言った。
「お爺さんありがとう!」
「何、儂も楽しかったぞ。頑張ることじゃ!」
そう言ってお爺さんは馬車とともに去っていった。
いい人だったなあ。また会えるといいな。
しみじみと考えながら街の門の前に向かった。
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着いた街の名前はバルクスク、このレミスト王国の中でもかなり発展している。
僕の生まれ故郷のアタカ村に一番近い街だ。
父さんと母さんがたまにこの街に訪れるので、街のことは出発前に色々と教えてもらった。
「はい、次!入りなさい」
さて、僕の番だ。
僕は言われたように城門の中に入る。
二人が一番注意深く教えてくれたのは入街手続きだった。
(緊張する必要はない。別に悪いことをしていたわけじゃないから、堂々としてればいいんだ。びくびくしていたらかえって疑われる)
父さんの忠告に従って、堂々たる態度で臨んだ。
すごくすんなりクリアしちゃった。
名前、年齢、どこから来たかなどの簡単な質問に答えた後、変なクリスタルを触らされたら終わった。
冒険者になりに来たと言ったらすごく歓迎された。
冒険者ギルドの場所を教えてもらった。
加えてギルドに向かう前に宿屋で部屋を確保しておいた方がいいとアドバイスされたので、そうすることにした。
安くて良心的なことで定評のある宿屋の名前と場所まで教えてくれた。
あと蜂蜜味の飴をくれた。
お爺さんといい衛兵さんといい、冒険者に対して優しいような気がする。
そういう風潮なのかな。
ナイス、バルク!!