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しばらくして、抑揚のない、やけに間延びした声が言った。
「打ち子は人足りてるからね」
「じゃあスカウトは。1人入るごとに歩合でいくらかもらえるんですよね。りなから聞いてます」
「いや、りなも本業はプレーヤーだからね。だから顔見せなくなって心配してんだけど。
スカウトねえ……」
値踏みするような視線が色あせた畳の上をまつろう。
もどかしくていらいらしていると、安井さんは煙草を灰皿にもみ消して言った。
「じゃ、こうしよう。りなを引っ張ってきて、もう1回こっちに出勤させてよ。そしたら菜子ちゃんにスカウトの仕事任せてあげる」
「分かりました」
「即答だねえ。自信あるんだ?」
茶化すような、それでいて見透かすような怖い目が言う。
「一応、友達なんで」
と私が言うと、安井さんは「頑張ってね」と猫なで声で微笑んだ。