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「これ、売り上げです」
1万円を手渡すと、安井さんは「お疲れ」とにっこり笑ってねぎらってくれる。
この笑顔が欲しいばかりに破滅した女の屍が、うず高く積まれているのが見える。
「次ちょっと遠いけど、鈴木に車出させるから行ってくれる?」
「どこですか」
「芝公園」
「あー、無理ですね。てか私、そろそろ帰るんで」
「もう帰っちゃうの?今日1本しか行ってないじゃん。行けるとこまで3本でも4本でも行っときなよ」
「門限あるんで。親には部活って言ってあるんですよ」
と私が言うと、安井さんは吹き出した。
「やべー、超ウケるんだけど。菜子ちゃんて意外と面白いね」
「安井さん」
「ん?」
「そろそろプレーヤーは引退して、私もりなみたく打ち子の仕事したいんですけど」
安井さんの目が銃口のように引き絞られた。
まばたきもできないような威圧感、言い終えてしまった後悔が苦く舌を刺す。