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「りなのこと、安井さんにチクったの」
「別に口止めされてたわけじゃないよ。会話の中に出てきたから、普通に喋っただけ。
安井さん今裁判中だっけ、やばいよね」
「彼氏の話は嘘だったってこと?」
「いや、何かー、安井さんに手ぇ出されるのが嫌だから、りなは俺の彼女ってことにしとくんだって鈴木さんは言ってたよ。読モとか何とかっていうのは、完全にふざけでしょ。マジあり得ないっつーか、信じる奴が頭おかしいから」
「鈴木さんて40幾つだよね」
「そんくらいじゃん?」
「奥さんとか子供いなかったっけ」
「子供がね、ちょうどうちらの学年の1個下とか言ってた。娘なんだってー、写メ見せてもらったことあるけど、超可愛いの。溺愛しまくり」
「失明したって聞いた」
「らしいね」
「同じ日の同じ時間に、りながどんな目に遭ったか知ってる?」
沙希はきょとんとした顔をした。
私が睨みつけると、細い白い指で自分を指し、
「え、何?あたしのせいとか、そういう話?」
「ばれたらどうなるか、分かってて言ったのかって聞いてるの」
「何キレてんの?意味わかんないんですけど」
心底わけが分からないという顔で、傲慢な目で、1ミリの罪悪感もなく沙希は小首を傾げている。