スキル便利すぎない?
「マイが洗脳済みねぇ」
「あんまり驚いたようには見えないな」
「だって即戦力の筈の魔法使いがここに来るってのは中々の事じゃない?それに、来たばっかの俺に直ぐに脱獄しよう、とか余程切羽詰まってンでしょ?」
「まぁな。説明はいるか?」
「簡潔に頼めるか」
まず脱獄自体はもっと前に考えていたこと。ケンが来た時点で出ていく予定だった。これを執拗に止めたのはマイ。
俺が考えていたようにこれ以上の戦力なんて期待するだけ無駄だ。そしてこの場所を離れないように誘導をかけてきている。
「決定的なのは俺のスキルの鑑定で所属とか状態、ステータスが見れるんだけど、状態が”洗脳”、所属が”アールベナ王国魔法士団員”ってなってる」
「軍人的な?」
「そうなる。俺が入り込んだ時の見張りが魔法士団員だったり騎士団だったりしたんでな」
「んで、盗賊の俺は嘘を見抜くスキルがある。意外と想像力でどうにかなるもんだ」
「なるほどね。そこまで言うならまぁあれだけど」
「…本当に驚かないんだな、ケンは嘘を見破る前は驚きまくってたが」
思うに、人間持ち上げられて嫌な奴ってのはそうは居ない。それが自信の無い奴ならなおのこと。
一度その才能を誉められもてはやされ、そこからどん底まで来て満足出来る人間なんかいるだろうか。
「少なくとも俺は思わないけど。それにこれ以上戦力なんて望めないんだから、ぶっちゃけスキルの話聞いて直ぐ反対する奴がいても俺は出ていく気だったからね」
「こっわ」
「どうしようコイツ嘘吐いてないこっわ」
「んで脱獄するからには計画立ててんだよな学者殿?」
「マイをどうにかして出ていこうと思ってる。鍵はケンの鍵開けスキル。知識にある武器とかを出せるスキルがあるから、それで外に出ようと思う」
「どうにかって?殺すの?」
「…」
2人共顔を歪めた。殺すのは抵抗あるよな解る。
でも生かしてたら面倒だと思うんだよな、スキルはレンが自分で見つけたものだからここまで対策されてないんだし、生かしておいたらその存在がバレてしまう。それは完全に不利だ。
俺だって人殺しは嫌だがこんなテンプレかまされた挙句役立たずなんて言われて牢屋に入れられて黙っていられるわけもない。
「聞くけど、スキルって職業に合ったものならあと想像力でどうにかなる感じ?」
「ん、そうだな。俺はスキルの存在が解った後にRPG的な事出来ないかなって思ったら出来たよ」
「俺も昔やってたゲームであったらいいなって盗賊の技能思い浮かべたらいけたぜ」
「ふーん。ん~…」
「どうした?」
「”非常食”」
原理なんて考えずに頭に簡単なスープとパン、肉の缶詰を思い浮かべ、イメージ的に非常食と声に出すと目の前に焼き立てのパン、湯気の出るスープ、そして俺がよく食うつまみにピッタリな缶詰が出てきた。
「ま???????」
「レン、話せなくなる毒とか意識がなくなる毒とか知らないの」
「本気か?待ってくれ思い出すから」
「あれじゃね?学者って辞典とかよく持ってるイメージあんだけど」
「ケンお前天才か…?”毒草辞典”」
「強めな睡眠薬もお願い」
「この調理人初日に人使い荒いぞ」
「来た初日に脱獄するとか言い出すからでは?」
「正論がすぎる」
レンが”毒草辞典”と呟くとレンの目の前にモニターのようなものが出た。なんかこんな状況じゃなきゃ素直にすげー!とか言えるのになと少し残念な気持ちになった。
「あ、トモ。これ調理してくんない」
「なにこれ」
「こういう症状。これならなんとかなるかも」
「ふーん、下手したら死ぬけど」
「…諦めるしかないかな、さっき言わなかったんだけど役立たずがもっと増えたら殺されるらしいんだよね」
「は?どこ情報」
「巡回の兵士が、夜中に言ってたんだ。お前等も可哀想なもんだなって。ここにいても殺されるだけなのに逃げれねえんだからって。嘘は言ってなかった」
「そっっっっっっっかぁ~~」
まぁ、どっちでもいい。早く出たいし、情報を流しかねない奴がいるなら、躊躇なんてする方がおかしい。
レンが先程見ていた植物と俺が欲しいと言った食材を出す。ケンが兵士にバレないようにサイレントを張った。匂いでバレないか、といえば匂いも遮断するようにイメージしなおした。
「”調理器具””調味料”」
まな板、包丁、フライパンに鍋にガスコンロ2つ。塩、胡椒と使う調味料が出てきた。イメージ通りになるのって楽しいな
「ま、美味い飯作るから待ってな」
「元の世界でも料理してたんか?」
「一人暮らしだからな、まぁ自炊してたしなんならレストランのバイトしてた事もあんだわ」
分厚いベーコンを焼いていく。カリッとした方が好きなので油は要らない。付け合わせも作るから弱火でじっくり焼こうか。ぶっちゃけ俺はこれだけでもいい。
後ろでぐぅと2つ音が鳴る。まぁここの飯不味いっつってたし仕方ない。美味いもん食わせてやるから待ってろ。
「ところでミコは?」
「この話全部聞いてるよ」
「え?」
「アイツ凄いんだよ。な、ミコ」
『聞こえますか…今貴方の頭に直接語り掛けています』
「ヤバい俺力授けられるかも」
「どこの仙人だよ」
「ミコは”神託”ってスキルで頭に直接語り掛けれるんだけどそれの応用で特定の声が聴けるんだって。知ってる人に限るけど」
『いえーい』
「僧侶とは」
「細かいことは気にすんな、してたらこんなゲームみたいな状況飲み込めねえから」
「確かに。でもミコはいいの?これから俺マイに毒盛るんだけど」
『言っておきますけど、最初に殺しましょって言ったの私ですから。神は殺生を許さないかもですけど、自己防衛くらい許してくれますし』
「女のが思い切りいいよな…」
「同感」
「なぁトモ飯まだ?」
「急いだら毒草と混ぜちまうかもしんないけど」
「おとなしく待ちます」
「もう少ししたら男女間のサイレント解除してマイにご飯のこと知らせようか」
「りょーかい学者殿ぉ」