スキルと魔法と脱獄と
見張りは対してやる気が無いようで、こちらをチラ、と見ると背を向けた。欠伸をする余裕を見せられると腹が立ってくるのは俺だけだろうか?
「……ちょっと待っててな」
「?」
「“サイレント”」
盗賊のケンがそう呟くと薄い膜のような物が俺達を覆った。
「これ、俺のスキルな。膜の中に居ると外に聞こえないんだ、膜は中の奴しか見えないから安心しろよな」
「便利だね」
「だろ。盗賊向いてるかもな」
「説明しちゃうわよ」
マイが話し出す。見張りはやはり気付いて居ないようだ
曰く、この世界には魔法と呼ばれるものがあること。良くある火を出したり、凍らせたりとかのやつだな。それは魔力というものによって出力が変わり、努力で精度が変わる。
ただ、召喚された俺達は“スキル”というものが使える。これも魔力というものから出るものだが、そもそも召喚された俺達は魔力の量が尋常ではないらしい。この世界の人間でスキルを使う者はごく稀ににしか居らず、都市伝説と化しているらしい。レンは御伽噺から見たそれを独学で考えここで広めたらしい。
「てか魔力とかそんなもん測られなかったけど?」
「役立つ組はな。俺やマイは1度中に入ったから調べられて、実際俺も魔力量の見方調べたよ。この中で1番高いのは魔女のマイだけど、なんでかその次に高いのは俺とお前だね」
「魔力量の多い調理人とは」
「料理する人って精神凄く使うって言いますし、そのせいでは?」
「なるほど?」
ミコが「私も初めて作った時なんて集中し過ぎて炭を作ってぶん殴られたものです」とほけほけと笑う。解った、お前には絶対飯は作らせない。
「で、なんだけど。ここって出られるかな?」
「難しいのよ。なにせ見張りが多いの」
「戦闘向きはマイしかいないだろ?だからもう少し戦力を整えてからと思ったんだ。場所も解らないから無闇に歩き回ってまた捕まっても嫌だしな」
なるほど、ただ捕まってた訳ではないのか。
戦力を整えて、というのは解るがなりそうにないからここに送られたのでは?というか。
「そもそもマイとレンはなんでここに?」
「俺は調べすぎたからかな。まぁ元々戦闘に役立つ職業ばっか重宝しようとしてたからか、不穏分子って言われて突っ込まれた」
「アタシは普通にレンに言いがかり付けてるの見て腹が立って大臣の急所蹴っちゃったのよ」
「うわヒュんってしたわ」
「俺も流石にタマヒュンだった。俺の為とはいえ酷いことするな……って感じ」
「て言うか、さっさと出ないか?」
「駄目よ、周りの状況も解らないし、攻撃系はアタシしか居ないじゃない」
マイはそう言って溜め息を吐く。とは言ってもマイが特殊なだけで多分もう戦力なんて来ないだろうに。
「まぁとりあえずトモは来たばっかだし今日は休もうぜ」
皆もそれで良いだろ、とケンが言えば解った、とミコとマイ、俺とケン、レンで別れた。今までも男女を考慮してカーテンを仕切りに、ケンがサイレントをかけていたそう。
「…さて、トモ」
「ん?」
「お前がさっき言っていた話の続きをしようと思う」
「さっさと出ていこうって話?」
「あぁ、とりあえず聞いてほしい話がある」
マイは洗脳済みだ、脱獄は本日実行する