調理人の何が悪いねん
「勇者諸君よ、貴殿等の健闘を祈る」
如何にも王様面したふんぞり返るデブに言われ、困惑した表情の“勇者”と呼ばれた男と“剣士”として呼ばれた男と“白魔導師”と呼ばれた女、そしておびただしい歓声を上げる奴等にそっと溜め息を吐いた。
俺達は所謂“異世界人”である。この世界には魔物が蔓延っていて魔王がうんたらかんたら、予言で異世界の勇者パーティーがうんたら、そうだ召喚しよう。ここまでテンプレ。もっと捻りがあった方がいい。実際体験すると割と異次元なのだが。
さて、呼ばれた自分達に召喚した国の王は言った。
「その力をもって魔王を討伐して欲しい」
反応は様々であった。剣士と呼ばれた男はそれを聞いて「これが噂の異世界!」と目を輝かせていたし、白魔道士と呼ばれた女は家に帰してと泣きわめくし、勇者はそれを宥めていた。そんな勇者に元気付けられたのか頑張ります……と可愛らしく声を出した彼女はどう見てもテンプレヒロイン枠である。
さて、ここまで触れていなかったので俺の職業についてだが。
「では、貴方の職業を判別させていただきます」
「はぁ」
そう、前者3人は予言で確立されていたのだが何故か知らないが俺だけイレギュラーなのである。なんで?仲間はずれ良くないよ?
恐る恐るオッサンに差し出された手を握ると頭上にホログラムのような文字がでてきた。
“調理人”、それが表示された職業。
うわ、と周りの奴らが顔を顰めるのを見た。調理人の何が悪い。てかなんで俺は調理人なの?いや料理好きだけどさ。
「調理人·····?」「言い伝えにもないぞ」「コックで事足りるではないか」「職場にやったところで」「また変なのが来たな·····」
「勇者様方はこちらへどうぞ」
呼ばれた奴らは俺をちら、と見てから案内されるまま着いていった。残った俺を王様(笑)は大きく溜め息を吐いた。
「役にも立たぬ、連行せよ」
また呼ばねばな·····と呟いた王様と、俺を囲むように来た騎士のような奴ら。役立たずは牢屋にでも突っ込まれる運命ですか、はいはい