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殺し屋と白猫  作者: 凍霜
22/26

   第19話

久々に長い(?)

 疑問、という物はいくらでもある。



「シバ、そういえば、何でカノンは盗んでいたか知っているか?」



 これは、昔から思っていた疑問。


 何故盗んでいたかを、私は知らなかった。依頼者のシバなら知っているのかと思い、今回聞いてみた。



「んー、俺は知らない。本人に聞けば?」



 頬に痛々しい傷を負ったシバは、突き飛ばすように言った。


 本人(本猫?)は、その話を耳に挟んでいたようで、食べていた猫まんまを飲み込んでから話した。



「ああ。湿地の魔女の仕業ね」



 意味が分からない。


 私は親父さんから分けてもらったパンを頬張った。普通に美味い。



「うーん、なんていうのかしら。魔女に動物にされたら、100回悪さするようになる、って聞いたわ。実際、貴方に捕まった日、100回目で、それから悪さしなくなったのね」



 湿地の魔女は、人々を動物にしただけでは気がすまないらしく、悪さまでさせるようだ。



「体が操られている、という感じじゃなくて、自分が思っちゃうのよ。『これを盗みたい』『殺したい』とか」



 詳しいことまで教えてくれた。


 

「大変なんだな」


「だからこそ、倒したいのね。自分の記憶も知りたいしね」


「ああ」



 猫は、私に笑いかけた。それに答えて、ぎここちなく微笑む。



「あの。その、ショナさん」



 クレアがオドオドしながら話しかけてきた。猫からクレアへと視線を向けると、何か決心したように立ち上がった。



「あと、お父さんも。あたし、昔から旅に出たいと思っていて……。それで、巫女辞めて旅立ちたいんです。ショナさん、あたしを連れて行ってくれませんか」



 衝撃だった。


 湿地の魔女倒しに人は多いほうがいい。返事をしようと思ったら、親父さんが話しに割り込んできた。



「なっ……! クレア、正気か! 考え直せ、クレア!」



 必死に講義する親父さん。しかし、娘の意思は揺らがない。



「嫌です、お父さん。あたし、昔から旅に出たいと思っていたんです。夢なの。今が絶好のチャンスなの、お父さん」



 負けずに言い返した。


 私は、口を挟まず、じっとして聞いていた。



「それに……。もうこんな生活イヤ! 見物チケットが手にいれられなくて、暴力振るってまで欲しがる人もいるし!」



 クレアの目尻に、涙が浮かんだ。頬を伝わりそうなほどに溢れている。



「クレア、お前……」


「お願い、お父さん! もう嫌なのっ!」



 首を振って、体も振って、拒絶しようとするクレア。


 親父さんは、目を見開いていた。



「暴力……受けていたのか?」


「昨日殺された、あの不良達! あの人達、路地裏であたしに暴力してくるの! 神聖な場所に、彼らを入れたくないから、渡さないんだけど……。ねぇ、お願い。私を連れて行って。戦力になると思うから……」



 親父さんは、目を瞑ってしばらく考え込んでいたが、ゆっくりと開き、私のほうを見てきた。



「……。クレアがそんな目にあっているだなんて知らなかった。アンタ、連れて行ってくれ。クレア、生きて帰って来いよ」


「お父さん……」



 クレアは、父に人目構わず抱きついた。



「分かりました」


「おい、ショナ――」


「別にいい。戦力は増えれば増えるほどいい」



 シバが突っかかってきた。


 ちなみに双子は、手を打ち合って喜んでいた。



「すぐ出発しましょう。私もあまりここにはいたくない。クレア、私達の目的は湿地の魔女退治だ。協力、してくれるか?」


「はい」



 彼女は精一杯の笑みを浮かべた。


 気がつけば、親父さんは食堂にいなかった。

もうすぐ終了式。

……違う。もうすぐではなく、明日だ

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