第13話
あ・・・春休みになったことで早めに更新することが出来ましたw
ハウィン公爵との戦闘、ショボイですが見てやってください^^;注)鮮血などの流血表現ありです
ステージに出てまず思ったのは、人の多さだった。椅子こそないが、詰め合うようにして立っている人々。しかし、ステージの真ん中は、1人の人を遠ざけるようにして、誰もいない。
「どうやら棄権ではないようです!」
私に、スポットライトが当てられる。正直、眩しい。
どんなポーズをすればいいのか分からなくて、私は腕を組んで、頬を膨らませて考えた。目をキョロキョロさせて、何かヒントはないかと見渡す。何もなくて、むすっとした。
「質問を1つします。ファイさんは何故この大会に出ようと思ったんですか?」
司会者からの質問。
「え、ええと……し、仕方なくでてやったんですっ!」
「し、仕方なく……ありがとうございました。次は結果発表です。皆さん出てきて並んでください」
司会者はちょっと残念そうな顔をして、開き直って、言った。
ぞろぞろとゴスロリを着た少女が出てくる。私はステージの端っこに行った。こうすれば、私は邪魔にならないであろう。
「結果はぁぁぁああ……タンタカタ〜ン! ファイさんです!」
はい? というなんとも間抜けな表情で、自分を指差した。
応答はなく、歓声が上がった。
参加者は、悔しがっている者が多かった。
「ショ……いや、ファイ、流石だなぁ……」
「後は、ハウィン公爵を……」
「ですねぇ……」
それを見ていたシバ達。どうやら、本番はこれから、ということで、特には喜んでいなかった。
「ちなみに、優勝の秘訣は、何よりそのツンデレ感!」
え……別に演じたつもりは無いのだが……
「え〜、ではぁ、ハウィン様、どうぞステージへ。ファイさん、真ん中に出てきてください」
素直に指示に従う。ハウィン公爵は、ガラリと開いた真ん中にいた人だった。
シルクハットと、長く伸びた髭、太った体が印象的だった。
対面する私とハウィン公爵。
「貴方がファイさんですネ? 優勝おめでとうございまス。賞金は……あ、あとでこちらに取りに来て下さイ。実は、忘れて来てしまったんですヨ」
ペロリと舌を出す公爵。あちこちから、「またかよ〜!」という声が挙がる。中には、笑っている人もいた。
「では、後で裏庭に来て下さイ」
そいうハウィン公爵の口は、今にも狂いそうに笑っていた。
――裏庭で、任務完了してやる!
† † † † †
大会も終わり、私は裏庭に行った。そこ0には、すでに先客がいた。
ハウィン公爵だ。
「オオ、来て下さったのですネ」
「さて、賞金頂戴」
さて、どのように出てくるだろう――
「オ〜ゥ、その話は嘘で〜す。ファイはぁ、ここで死んで頂きま〜ス。何故なら、1週間に1度人を殺して食べないと、死んでしまうので〜ス。エ? 理由? そういう超能力なのデ〜ス。太っているからッテ、舐めないで下さいネ」
「死ぬのはお前の方だ! 一気に蹴りを付ける……って……!」
私が喋っている間に、ハウィン公爵はこちらに走ってきて、蹴りを入れた。不意打ちで、私はまともに食らう。
地面に叩きつけられる。
「こんにゃろっ……!」
私は全神経を使い起き上がる。こんなに息が荒いのは、何故? そんなに疲れること、したっけ?
刀を抜こうとすると、刀を蹴られて地面に落ちた。銃を取り出そうが何を取り出そうが、結果は同じだった。
地面に落ちた武器を拾い上げようとするも、ハウィン公爵の蹴りで取れない。
それを繰り返すうちに、腹の丁度真ん中に蹴りが炸裂した。宙を飛び、頭から地面に激突する私。
「かはっ……ハウィン……!」
痛みは、半端ではなかった。
手は、はるか向こうにある武器を指していた。どうにかして、倒さなければ……
「貴方は、頑丈ですネ。それに、武器まで所持しているとは……なんという人でショウ」
ハウィン公爵は、私の方まで歩み寄り、倒れている私の胸倉を掴み、ハウィン公爵の顔の付近まで持ってこさせられた。
顔が後ろに垂れる。
「ワタシの奴隷になるというなら、殺さずに済ませますヨ……?」
ハウィンの取引。しかし、応じるものか!
「奴隷なんかに……なるかよっ!」
「ホホ〜ゥ、なかなかいい威勢じゃないですカ。しかし、今の貴方に何が出来ル? 殺して差し上げまショウ」
そう言って、ハウィンはナイフをポケットから取り出す。それを私の頭に当てる。
その顔は、狂って笑っていた。まるで……いや、殺すのが楽しそうに――
何か解決策を立てようと、頭をフル回転させる。
足に力を込めて、ハウィンの足に蹴りを入れた。ハウィンがよろめいた隙に、手の力も弱まる。
抜け出せた私は、武器に向かって走り出す。
――何でもいい、早く武器を……!
適当に落ちている武器を拾おうとした、その時。背後から、ハウィン公爵の蹴りが炸裂した。
宙を飛ぶ私が落ちたのは、不幸にも刀の上だった。
ハウィン公爵は刀を一本手に取り、私の顔をスーッっとなぞった。なぞった部分から、赤い鮮血が出てくる。
横腹にも、顔と同じような事をされた。きっと、私が着ているゴスロリは、血まみれだろう。
「ワタシは、一気に蹴りを付ける人じゃないんですヨ。こうして、ユックリと殺すタイプなんデス」
ハウィン公爵は、刀を投げ捨てた。
どうやら武器に当たったらしく、金属と金属が当たる音がする。
「もう一度聞きマス。ワタシの奴隷になれば、殺さずに済みますヨ」
「そんな取引、応じない」
不意に、あいつ等の事を思い出した。
確か、「ハウィン公爵なんて、3秒で片付ける。だから、先に帰って寝ておけ」と私が言って、帰らせた――今になって、後悔。
私は、最後の力を振り絞り、勝利を確定していそうなハウィン公爵の顎に、一発パンチを入れた。
ハウィン公爵は、吹っ飛んだ。あの、デブの体で、遠くまで飛んでいくのがおかしくてたまらない。笑いを抑えきれず、大爆笑してしまった。
さて、ここらで正体でも明かすかな。もうそろそろ、0時――つまり、『短時間色素変え』の効果がなくなる時間だった。
ハウィン公爵は、気絶している。
私は、髪を見た。暗くてよく見えないが、銀色の髪をしていた。もう、0時を越えていた。
私の赤い瞳が、闇夜を照らす。
「……貴方は誰デスカ?」
ハウィン公爵は、気絶から復帰していたらしい。私を指差して、ハウィンは言った。
「私……? 私はね、ファイという人じゃない。通称死刑執行人、ショナだ。お前が優勝者を殺す、という事を聞いてな……ゴスロリ大会に紛れ込んだという訳。分かった?」
「だから、武器などを持っていたんデスネ……」
ハウィン公爵の声は震えていた。もしかしたら殺されるかもしれないという恐怖感があるのだろうか?
「あれ、もしかしたら殺されたくないの? 死というのが怖いの?」
そう言って、私はハウィン公爵の元へ歩き出す。
ハウィン公爵は、私が一歩歩く毎に一歩退いた。
「なんだ、怖いのね。アハハハッ! 人を何人も殺しておいて……死んでもらうのは当然でしょう?」
私は、しゃがみこみ、そこに落ちていた私の刀を拾った。
「ヒェェエ……」
「何を言おうが、貴方はここで殺される運命なの」
ハウィンは、退くのをやめた。何故なら、そこには建物の壁がそびえたっていたからだ。
「ねぇ、なにか言ってよ……そんなに怖いの?」
とうとう、間が10cmとなった。
ハウィン公爵の顎をクイっと上げ、私を見させる。その目は、明らかに震え、恐怖に満ちていた。
「最期なんだからさぁ……笑いなよ」
そう言って、私は刀を頭に近づけた。
「後、言っておくけどさぁ……」
私は、刀を振り上げる。
「私、貴方と違って素早く殺す人なの」
その瞬間、刀が素早く振り下ろされた。頭に当たり、そこから鮮血がほとばしる。
気づけば、ハウィン公爵の死体が壁に寄りかかっていた。
「終わっ、た」
私は、緊張がほぐれたことで痛みが体中を廻り、ハウィン公爵に折り重なるようにして、倒れた。