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(未完放棄作品)  作者: 小林一二三
第2章:ピツンノイア遺跡
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第6話:不可視の誘い

 5月(篝火の月)4日。      


「……古代ソダン【1】の巨大地下墓地だと聞ゐたが」


 遺跡を前にして、腕を組みながら忍足が呟いた。


 【1】古くからレリゲーオ大陸に住まう種族。特徴としては、輝かしいブロンド、またはルビーのように美しい赤髪、それから、宝石のような瞳をもつ種族。ジェネカ・ゴットシャルもまた、分類としてはソダン人である。


「洞窟探検だ」


 柴島は、重い荷物を背負った我修院や硲を差し置いて、仄暗い世界に先陣を切った。後述の忍足と違い、柴島は2人の苦労人に対して、一度振り返り、あろうことか皮肉な笑みを浮かべて挑発したのだ。


「柴……島、んの……ダラズ……ッ!」

「ワシらの苦労も知らないで……!」


 そして忍足が柴島に続くが、彼はしっかりと2人の肩を叩き、労った。 


 一方、貴族令嬢はというと……。


『……イヤなら来るんじゃねぇぞ。なんてたって、風呂もシャワーもない男地獄だからな』


 という、数分前の硲の一言でたじろいでいた。恐怖心か、羞恥心か、一体どのような感情が彼女を戸惑わすのだろうか。


「い、一週間ぐらい問題ないかと!」


 だが遂に覚悟を決めたのか、香水を取り出して周囲にまき散らし、遺跡に突入した。


「……さて、何時までも秘密を隠してたって、面白くないじゃろう?」

「あ? なに言ってんだ……?」


 我修院が普段はみせない不敵な笑みをこぼすと、辺り一帯は不安を掻き立てる静けさで、2人を包んだ。それまでとは違い、ヘラヘラと笑っていられる空間ではなかった。何かがこの場の空気をかえたのだ。


「わかるか?」


 そして、その瞬間、ついぞ明かされなかった秘密のピースが、硲を前に謎のビロードを自ら取り払った。


「烙印……」


 期待を胸に我修院をジッと睨みつけていた硲には、ただ前に立っている流入者が、右腕を覆うサラシを解いただけに見えた。そして、左腕のサラシも解いて古傷でも晒すのかと思えば、そうでもなかった。


「これからの事は、大体予想がつくじゃろう? 勿論、痛みなくして何かを得ることはできん」


 我修院は自らの右手の甲を、硲に見せつけた。それだけで充分、硲の気を引けた。


「……とまぁ、お前の考えは正しかった、ということを見せるだけじゃがな」


 刹那的な時の流れに、硲は違和感を感じ取った。我修院の右手の甲が輝かしく、まるで太陽のように輝いているのだ。


「ほら、ボーっとしてるな。行くぞ」

「あ、あぁ」


 白昼夢か、はたまた長年にわたる研究で見つけ出した『始祖の種火(オリウス)』証明の確たる証拠が我修院に刻まれていたのか、真偽を問う前にそれは再び隠された。


「……遅ゐぞ。しかして……これを見よ」


 忍足が指を指したその先に、やはり、ドレイドが寝転がっている。だが、侵入者が遺跡に足を踏み入れたというのに、ピクリとも動かない。


「それもそうだが……ほらよ」


 柴島がドレイドの頭蓋を冒涜的に穿ると、棒状の物体を我修院に投げた。


「こりゃ……」


 葉巻か!? そう歓喜する暇もなく、我修院は固唾を飲んだ。


「特別ツアーの招待客はあっしらだけじゃねェようだな」


 柴島はお気に入りの銀のライターを取り出すと、我修院から葉巻を奪い、何事もなかったかのように吸い出した。(18歳の喫煙は問題ない。この星では。)


「その……私達以外に遺跡へご用があるお方は……数時間前に来られたようですね……」


 何を言い出すかと思えば、ジェネカは預言者よろしく、壁に手を当て、瞑目しながら呟いた。


「連れてきて正解だったんじゃないか?」

「へっ、果たして兄貴と落ちこぼれ貴族の女、どっちが上かね? 考えるだけ無駄だが」


 硲は子供のように悪態をつくが、その一方、我修院や柴島、忍足はジェネカの発言を疑わなかった。


「……流入者が4人揃えど、妙魔(2)の知恵とはならなかったであろうな」


 兄の前で駄々をこねる弟のような態度をとる硲に対し、忍足は挑発するように言い放った。


 (2)妙魔神アーディテック。ウステゥラ6大神に属する神。知恵と魔術を司る。


「あ~、少し先にテントでも張ろうかの! もう日が沈む時間じゃ!」


 この面子でもし険悪なムードになろうものなら、すぐにでも取っ組み合いを始めるだろう。何せ、忍足も柴島も、彼を引っ張り出すのに手段を選ばないだろうから。そう憂慮し、我修院は他の4人を率いて歩み始めた。





 一方、そのころ。


「カラカラミイラ共の後に……こりゃあ、神は自分らに情けでもかけてくれたのかぁ……?」

「……どうやらドレイドを過小評価しすぎたようだ」

「俺の筋肉も、これ以上は無理聞かせられねぇ……」


 遺跡内部を進むこと、約1時間。サン、ゾル、アンドレの3人の前に広がったのは、巨大な地下空間だった。巨大といえど、頭上、足元、様々な場所に鍾乳石が見られ、人間の足場を奪っている。だが、むしろこの自然によって創り出された状況が、彼らにとっては都合がよかった。


「おいサン、お前が代表だ。さっきのとこまで戻って水を汲んできてくれ」

「わーったよ」


 自己中筋肉野郎め、と小声で愚痴をこぼすと、サンはスチール製のバケツを手に、回れ右して、湿気と暗闇に姿を消した。

大ッッ変遅くなり申し訳ございません!!!!


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