第1話:光の門出
宇宙。
それは、未だ解明されない未知のエネルギーが漂う暗黒の空。
その未知のエネルギーで満たされた世界が存在する。可能性は無限に広がっているのだ。しかし、これは我々とは異なる次元の物語である。
世界を蝕む深淵が暁光によって照らされ、人の体に宿り、幾千年。
大陸全土で暗躍する影。動き出す光。
そしてここ、大陸の南、サーフル公国はスパニー州、ザフラス市。
市の中心である噴水広場は、友人との集合場所にうってつけの場所だ。そこへ計画を打ち立てた1人、硲鉄郎が遅れてやってきた。
「さてと、これから」
『買い出しだ』と言った瞬間、硲の背後から女性の声が響き、重なった。
「私もご一緒させてください……!」
その女はシルクのレースハンカチを片手に、4人の目つきが悪い男へ向かってきた。時刻が昼過ぎということもあって、暖かい陽光が女性の顔をこれでもかと輝かせる。
「ど、どうも皆様方……」
ここ数百年で斜陽している貴族、ゴットシャル家の令嬢だ。
「ガッシュ、このしつこいお嬢さんをどうにかしてくれ。年長だろ」
短く揃えた刈り上げ頭が、太陽を眩しく反射する。両手にサラシを巻き付けた三白眼のこの男は、名を我修院大和という。
「奇数は縁起が悪いが……、まぁ、大丈夫じゃろう」
我修院は、両手を後頭部で組みながら視線を逸らし、意味ありげに放言した。
「数時間後にあっしらが辿るであろう出来事、それは理解できてンだろーな?」
そこはかとないむさ苦しさ、如何にも自らを飾り付けて、それらしい雰囲気を醸し出そうとしている男。反抗期が遅れてやって来たのは柴島隼人だ。
「……幾ら綿密な調査の上で計画を練ったとして、拙者らが法を犯す事実は揺るがない」
柴島と我修院の陰に隠れ、先祖代々の武具を手入れしている男、忍足肇だ。
「それに、アンタが思うほど、面白おかしい冒険にはならんぞ」
長い話になるとわかったのか、硲は噴水を囲う大理石に腰を落とすと、ヘアジャムを取り出して髪を整えながら、ぴしゃりとはねつける。
「遵法精神が少しでもあるなら、ワシらの話は聞かなかったことにした方がいい」
我修院は三白眼で厳しい視線を送るも、ジェネカ・ゴットシャルが二の足を踏む気配はない。その確固たる意志は染みるように我修院へと伝わる。
「似とるな。お前に」
我修院は硲を肘で小突いて言った。
「いや全然……」
我修院の肘を払うと、硲は立ち上がった。
「……そもそも、これは俺ら流入者の問題だ。アンタが俺らのルーツを知って何になる?」
そう言った直後、柴島が腕時計を見て口を開いた。時刻は15時。30分後にはバスに乗って、サーフル公国の首都であるパイゼングイート直下、国立図書館へ向かわなければならない。
「時間がねェぞ。無駄話は後にして買い出しに行かねーとな」
柴島の一声で銘々が異なる方向へ散っていく。ジェネカは硲の後に続いた。
一同が買い出しを終える頃、1台の高速バスがザフラスの街にやってきた。
それこそ、流入者の技術で製造されたものだが、当時の世俗は受け入れられなかったのか、この数百年で製造されたことはなかった。だが、時代が追いついた今、流入者が残したモデルを基に研究を経て、製造され、今もこうして公共交通機関として国と人々に貢献している。
「馬車じゃなくて残念だったなお嬢さん」
「時の流行に合わせることぐらいできます!」
硲が嫌味たらしく言うも、ジェネカは強い口調で返してきた。結局のところ、粘り強い彼女に舌戦で敵う者はいなかった。その代わり、荷物持ちという新たな役職もできたわけだが。
「はぁ……」
硲は国立図書館についての調査書類を抱き込んで、深い溜息を吐いた。
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