Stage1-2 最強の...ドラゴン?
朝。姉が起こしに来る。
両親を癌と交通事故で亡くしてから姉と二人暮らしだ。
姉は優しいけど厳しい一面も併せ持つ、いつもクールな女子大生。
姉が作ってくれた朝ごはんを食べて、学校に行く。
道中、昨日の夜のことを思い出す。
あれは...夢だったのかな。結局、あの少女に告白された後の記憶はない。気がついたらベッドの中で寝ていた。
俺は昨夜のことを「夢」として、結論付けた。が。
俺のコートに、ドラゴンの鱗と思しき硬いモノが付着していた。
※
学校で。席について配られたプリントをなんとなく眺めていると、親友の嘉山俊仁が後ろから話しかけてきた。
「なあ悠翔、『闇』についてどう思う?」
そう、こいつは本物の中二病だ。中学二年生になってから、急に中二病を発症し始めた。まさに中二病の見本といえる。
見ていて本当に痛々しい...けど、面白い。自己設定に抜かりがないからね。...あれ、俺もちょっと中二病?
まあいいや。とにかく俊仁は小学校からの親友だ。
「闇...?暗い場所じゃねえの?」
「否。我に闇は欠かせぬ...そう、ダークマター......だが今は闇が足りぬ...」
「ふーん...それで......どうした?」
「どうした...?悠翔、お前がそんなに愚かな者だとは...」
この後も俊仁の設定談は続いたのだが...。まあ、割愛ということで。
昼休み。本を読んでいると、とある女子が話しかけてきた。
「悠翔...この問題、わからない。...教えて」
こいつは幼稚園からの幼馴染...相崎翼。おとなしい性格だけど、怒らせると怖い。
「なんだ、また宿題忘れたのか?」
「...宿題はやったもん。やったけどわかんなかったなら仕方ないじゃん...!」
「はいはい」
※
平和な一日が終わって、家に帰る。その途中...あ、あの女子...昨日の夢?の中で。
「......西山悠翔...さん」
急に名前を呼ばれ、驚く。
「なっ...!んで俺の名前...?」
「そ、そんなことはどうでもいいのです。...悠翔、決闘を申し込みたいのです」
急に呼び捨てで呼ばれ、またも驚く。
「えっ...!?ってか、決闘って...?」
いきなりその少女が俺に向かって殴りかかってくる...!
俺は腕をクロスさせてそれを受けようとするが...。
「!痛っ!」
想像以上の衝撃が俺を襲う。
ふとその少女を見ると、腕がドラゴンのように図太くなっていた。
近くに木の枝が落ちている。俺はがむしゃらにそれを掴み、その少女に向かうも...。
ボキッ。
一握りで折られた...!
嘘だろ、あれ結構太かったぞ...!?
パンチの一撃一撃が重い...。多分どっかから血が出てるな。
もう逃げるしかないな...。
あ、石が落ちてる。俺はそれを投げつける。すると...。
ボウッ。
あ、顔が昨日見たドラゴンのそれ、っていうか、もう全身がドラゴンになってるじゃないですか!
そして口から火を吹き出して石を燃やした!
...これは降参だな。相手が仕掛けて来てから五分も経ってないけど。だいたい俺、ただの一般男子中学生だし。ドラゴンに敵うわけないじゃん。
「ちょ、ちょっとストップ!」
「......よ、弱いですね...」
弱くてすいません!
そのドラゴン...もとい少女は姿を完全に少女の姿に戻し、スッと後ろに飛ぶ。
「弱い...こ、これが次の『黒の勇者』第一候補ですか...?」
なんだかよくわからないことを呟いているが...そこ、結構車通りが多い通りですよ...?
「あなたは...おそらく失格だとグエフッ!」
見事に跳ね飛ばされていた。この少女、身長が低めだから、トラックの運転席から見えないんだな...。
※
「だ、大丈夫ですか?」
「...痛い...です」
「っていうか、なんで俺を狙うんですか」
「......す、少し、話をしましょう。あなたの家に案内してください」
え、えぇ...?
とりあえず、家に案内してソファに座らせる。姉はまだ帰ってきていなかった。
「それで、話ってなんですか」
「昔話を...させてください」
長い話が、始まった。