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教師傷害事件  作者: ゆっきー
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篤史と留理の対話

篤史が再び病院に送られて四日が経った。あれから篤史は医師や看護師にこっぴどく怒られたのはいうまでもない。

通常五日ほどで退院出来るのだが、術後に動いてしまった事もあり、もう二、三日延長になってしまった。

留理が篤史の代わりに事件を解決したと聞いた里奈は、私も見たかったな、と羨ましそうに言っていた。そんな里奈に留理は、最後のほうは篤史に助けてもらったから見ないほうが良かった、と言ったのだった。

その日の放課後、部活が早く終わった留理は、一人で篤史が入院している病院に見舞いに行った。

「篤史、入院中に来てくれてありがとう。一人で事件解決するの不安やったから……」

事件解決するために術後まもない篤史が助けてきれくれた事を礼を言う留理。

「いいんや。留理からの話を聞いてたら勝手に体が動いてしまったんや」

篤史は照れながら言う。

「篤史の助けがなかったら二人を認めさせられへんかったと思う。それに篤史があんなに大変な思いをしながら事件を解決してたなんて思わへんかった」

留理は改めて高校生探偵として活躍している篤史の大変さに気付いたと言う。

「別にそうでもないで。事件解決する時はいつも孤独やから……」

篤史はいつものことだとなんでもないように言う。

そう言われた留理は少し安心する。

「ところで留理は川崎がオレの事が好きやって知ってたんやな」

事件解決後に玲奈から嫌味を言われたと聞いて、篤史は察したのだ。

「うん。事件が起こる直前に小川君が好きやからって言われたから……。まぁ、なんとなく篤史が好かれてる事はわかってたけど、直に言われると幼馴染としてはショックな感じがするな」

留理はため息交じりで言う。

留理の言葉に、そんなにショックを受けるものなのか、と思う留理。

「虫垂炎で入院する前に川崎から告白された。でも、断った。断った理由を答えるなら、留理や里奈に対する川崎の態度が酷いところかな」

篤史は自分の幼馴染に取っている嫉妬という名の態度を見ていると、玲奈と付き合おうなんて気持ちにはならなかった。

篤史の言葉を聞いた留理は、有美子が玲奈に言っていた、今の態度だと付き合えない可能性が高いという言葉と一緒だ、と思っていた。有美子が言っていた言葉は的確やったんやな、と留理は思っていた。

「今回の事件の前には川崎さんの気持ちを知ってたんやね。川崎さんの言葉のニュアンスからしてまだ気持ちを伝えてへんのかと思ってた」

「自分の気持ち悟られへんようにしてたんやと思うで」

「そうなのかもしれへんね」

言われてみれば……、と思う留理の中で色んな思いが疼いていた。

篤史にフラれた玲奈の事はもちろんなのだが、フッた側の篤史の気持ちも考えさせられる事があった。まだ育江の事が好きで篤史の心の中にあるんやろう、と思っていた。

転入してきた育江とは一番仲が良かっただけに、二人の交際が純粋に羨ましいという気持ちがあった。諦めたとはいえ、まだ篤史に好きという気持ちが多少なりともあったからだ。

自分が幼馴染じゃなかったら……。ただの同級生だったら……。そんな思いが幼馴染である篤史が好きだという留理の気持ちをより一層複雑にしていた。

「とにかく捜査してた留理の事件の的は間違ってへんかったし、探偵になる素質はあると思うで」

篤史は自分と同じ高校生探偵としてやっていける可能性はあると言う。

「篤史の言葉はありがたいけど、今回限りで止めとく」

フフフ……と笑いながら言う留理は、今回は貴重な体験が出来た、と内心思っていた。

「それより篤史は高校生探偵を辞めようって思ってたりする?」

留理は何気なく聞いてみる。

その問いをされた篤史は、不意を衝かれたようにハッとなる。

「それは……」

戸惑いの表情を見せる篤史。

「江口奈菜の事件で勝手な事をして、おじさんに何か言われたんやろうけど、別に辞める必要はないんと違うかな。富永先生の事件だって病院を抜け出してまで事件を解いたくらいなんやから、篤史にとって高校生探偵はなくてはならへんものやと思うで」

留理は篤史の揺れ動く思いを感じ取りながら、今回の事件で心底、探偵として事件を解くのが好きなんやな、と実感していた。

「育江の時も同じ事を思ったけど、留理には適わへんな。親父に人一人を殺したって言われて、事件を解決に導くのが急に怖くなって弱気になってた。ホンマにオレのやり方で良かったんかなって思ってたんや」

篤史はずっとこれでいいのか悩んでいた事を告白した。

色々悩んでいる篤史の思いを何も言わずに留理は聞いている。

「でも、今回の事でやっぱりオレは高校生探偵をやりたいんやな。好きなんやなって思った。多分、留理がそう言うてくれへんかったらそうは思わへんかった」

篤史は留理だからこそ正直な気持ちを言えるんやな、と思っていた。

「良かった。これで辞めるなんて言われたらどうしようって思った」

安心した留理は胸を撫で下ろして笑顔になる。

(やっぱりオレは事件を解決するのが好きで、探偵としてやっていきたいんやな。今回ではっきりとわかった)

篤史はこのまま高校生探偵を続けていこう、と改めて思っていた。

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