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教師傷害事件  作者: ゆっきー
3/5

留守電に残った脅迫電話

有美子の話を聞きながら、どこからどう事件を解決していったらいいのか焦りながらも悩む留理。

「服部さん?」

そこに玲美が里佳子と共に再びやってきた。

その瞬間、留理はゲッと思う。

「小川君になりきって探偵ゴッコやってるつもり?」

「そうや。どうせ事件なんて解決出来ひんのやからよしたら?」

玲美の後に里佳子も嫌味ったらしく言う。

二人の言葉にイラッとしてしまう留理。

「里佳子の言うとおり、服部さんなんかに事件は解決出来ひん。事件を解決するのは小川君だけやねんで。わかってる?」

玲美は高圧的に腕を組みながら言う。

「別に……いいやない!」

留理は一生懸命やる自分の気持ちを馬鹿にされたような気になって、思わず大きな声を出してしまう。

「まぁ……なんて子なの?」

玲美はクスッと笑っている。

「コラコラ……。さっきもそうやけど、小川君が好きやからって幼馴染の服部さんにそういうことを言うのはアカンと思うし、イジメを助長してると思う。もし、小川君が今の行動を見てたら、川崎さんと付き合いと思う? 逆の立場で考えてみればわかると思うで」

有美子は健一郎からつきまとわれていた経験から玲美に言う。

「先生は私の何を知ってるんですか?」

玲美は強気に聞く。

そう問われた有美子は、相手の気持ちも考えろという思いでため息をつく。

「あのね、人の嫌がる事はしていけないって親御さんから教えてもらわなかった? 小川君が川崎さんの事をどう思ってるかはわからへん。でも、今のこの態度だと付き合えへん可能性は高いと思う」

有美子は自分の中に芽生えた怒りを抑えながら言った。

そう言われた玲美はグッと唇を噛む。

「里佳子、行こっ!」

玲美はバツが悪くなったのか、里佳子と共にその場を離れる。

「先生、ありがとうございます」

留理は同級生二人を見送ると有美子に礼を言う。

「警部! 富永先生の携帯の留守電から脅迫されていたのがわかりました」

現場で捜査している鑑識官が健一郎の形態の留守電を再生した結果を町田警部に報告する。

「脅迫……?」

「はい。しかも、その脅迫は二人からされていたようです」

「二人からってどういうことや?」

町田警部は意味がわからない口調だ。

「脅迫の留守電が五件入っていたのですが、四件は同じ人物で、もう一件は別の人物からでした」

鑑識官は先に留守電を聞いた上で報告する。

「富永先生を脅迫している人物が二人いるんか。とりあえず五件を再生してくれ」

犯人は二人に絞られるな、と思った町田警部は、その留守電を聞きたいと申し出る。

鑑識官はわかりましたと言うと、健一郎はその留守電を再生する。

最初の四件の脅迫の内容は、有美子をストーカーしろというものだ。あともう一件は襲いにいくというものだ。五件とも声を誤魔化している。

「富永先生は誰かに脅されていて、長井先生をストーカーしてたんですね」

携帯の留守電に残されていた脅迫を聞いた後に水野刑事が言う。

「そうみたいやな。それに襲いにいくと言ってる人物もただならぬ感じではないな。声に関しては機械で誤魔化してるから署に戻ったら分析やな」

町田警部は頷きながら言う。

「機械で誤魔化してるからわからないと思いますが、誰の声か聞き覚えませんか?」

水野刑事は周囲のいる教師や生徒に聞く。

だが、知っていると答える人は誰もいない。

それを見た水野刑事は、それもそのはずか、と思う。

(富永先生が脅迫されてストーカー? いくら脅迫されてたからって長井先生をストーカーなんかする? しかも、短期間やなくて一年もの長い期間やし、余計おかしい。脅迫されてたんやったら誰かに相談するとかしなかったのかな? 脅迫されていたとはいえ、ストーカーしてたから相談しにくかったのかな?)

留理は疑問に思う。

(それに留守電に残ってる話し方、機械で誤魔化してるけど、どこかで聞いた事のある話し方や。よしっ! 証拠探し開始!)

誰も答えない中、唯一、四件のほうの留守電の聞き覚えのある話し方に留理は憶測ではいけないと証拠を探し出す。

留理は鑑識官が捜査している男子トイレを縫うようにしてそっと入る。

鑑識官が捜査している中を見たところで、特に何かあると思えない。留理は自分が事件を解決したと言った事を後悔し始めていた。

(やっぱり無謀やったかな。篤史なら簡単に出来るんやろうけど、私なんかが事件解決出来るわけないんやんな。ホンマに川崎さんの言うとおりや)

自分の無力さに気付いた留理は、玲美が言った事が的中していたな、と思う。

それと同時に、篤史が事件を解決するのに苦労しているんやな、と思っていた。

そこに鑑識官が持っているナイロン製のパーカーが目に入る。そのナイロン製のパーカーには少量の血痕が付着している。

「あの……このパーカーって落ちてた物ですか?」

留理は思い切って聞いてみる。

「そうや。犯人が脱ぎ捨てて逃げたと見てる。サイズ的には男性の物やと思うで」

鑑識官はそう答えると透明の袋に入れる。

「指紋は付いてたんですか?」

「簡単にしか調べてないけど付いてたよ」

「誰の指紋かわかってないですよね?」

「わかってないよ」

鑑識官は手短に答えると捜査に戻る。

(犯人はなんでトイレでパーカーなんて脱ぎ捨てたんやろう? このまま着てれば良かったのに……。やっぱり宮永先生の血痕が付いてたからなのかな?)

留理はトイレの中でナイロン製のパーカーを脱ぎ捨てたのか疑問に思う。

そして、留理は男子トイレの前に戻る。未だ男子トイレ間は落ち着いているが混乱した様子が見受けられる。

「今のところ犯人を見たという教師や生徒がいないのが不自然やな」

町田警部は今までの聞き込みで誰も犯人をみたという証拠がない事に疑問を持つ。

「刑事さん、あとどれくらい時間がかかりますか?」

一郎太は男子トイレ前にいる数人の生徒の事を思ってか、どれくらい時間がかかるかを問う。

「もうしばらく待ってもらえるとありがたいです」

町田警部はもう少し時間がかかりと答える。

「富永先生が足を刺された後の姿を見た生徒もいるんです。その生徒からすれば早く現場から離れたいはずですよ」

一郎太は苛立ちを覚えながら二人の警官に言う。

「私も同じ気持ちでいますが、警察のみなさんも捜査してるんですから、もう少し待ちましょう」

有美子は一郎太をなだめるように言う。

「そうですね」

苛立ちを隠せない口調でため息交じりで一郎太は言う。

二人のやりとりで何かを直感した留理は、今までの全ての事を篤史に連絡しないといけない思いに駆られていた。

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