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教師傷害事件  作者: ゆっきー
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入院した幼馴染

ゴールデンウィーク前の水曜日、この日は前日の陽気な天気よりも暑いくらいの天気で、ブレザーを脱ぎたいくらいの天候だ。

つい先日、作家の江口奈菜が殺害された時に哲哉に言われた言葉が、篤史の胸に突き刺さったままずっと過ごしていた。

‘お前は人一人を殺害してしまったんや’という、哲哉が言い放った言葉は、高校生探偵の篤史の心を掻き乱してしまうのと同時に、自分がした事は本当にこれで良かったのかと思ってしまうくらいだった。

篤史は自分の力に過信していた部分もあったのは確かだった。自分の前で事件が起これば、確実に犯人を言い当てて一度も間違えた事がなかったからだ。

哲哉が言った言葉は最もで、奈菜の事件に関しては警察に相談すべきだったと篤史自身、後悔していた。

篤史の胸に突き刺さる言葉を言われたせいか、高校生探偵を続けていけばいいのか。それとも辞めるべきなのか。誰にも相談出来ないで、人知れず悩み続ける日々が続いていた。それほど篤史にとって深い言葉だった。

だが、篤史のその悩みを見抜いている人物が一人いた。

その日の昼休み、篤史は留理、翔也、良子の四人で食堂で昼食を取る事にした。

里奈は高熱が出ているため、昨日から四日間休むと学校に申し出ているのだ。

「里奈が熱で休みか。里奈がいないってだけで寂しいよね」

良子はいつも篤史と留理と共に行動を取っている里奈がいないだけで違和感を覚える。

「確かに……」

翔也も良子と同じように思っているようだ。

「熱が下がれば元気になって来るよ。それにしても里奈がいないってだけでそんなに違うものなのかな?」

留理はそう言いながら首を傾げる。

「違うで。小川君と留理だけやったら空気の雰囲気が違う。里奈がいたら明るい感じがする」

良子は里奈の性格上そうなのだろうと言う。

「それは言えてるかも……」

篤史も頷く。

「食べ終えたしそろそろ教室も戻ろう」

篤史は食べ終えたトレーを持って立ち上がる。

その瞬間、下腹部に激しい痛みが篤史の中で広がる。そして、トレーを持ったまましゃがみ込んでしまう。

「あ、篤史……?」

急にしゃがみ込んでしまう篤史に、留理は何が起こったのかと驚いてしまう。

翔也と良子もどうしたのかと覗き込む。

「い……いたっ……」

「え!?」

「留理……先生、呼んでこいって……」

篤史は下腹部の激しい痛みの中、留理に教師を呼んでくるように言った。











その後、篤史は病院に救急搬送された。その結果、虫垂炎だと判断され、そのまま入院する事になった。

翌日、篤史が虫垂炎で入院した事はあっという間に噂になった。そのせいか篤史と幼馴染の留理は学年中からどうなったのか朝から質問攻めにあっていた。

「服部さん……」

二時間目が終わった後、留理がトイレに行こうと廊下に出ると同時に同じクラスの女子が声をかけてきた。

「昨日、小川君の病院に行ってきたんやろ?」

「うん……行ったけど……」

「小川君、どうなん?」

「どうって……?」

留理は質問の意図はわかっていたが、その女子の強い口調に引き気味になってしまう。

「だから、昨日の経過を聞いてるんやけど……」

強い口調の女子は川崎玲奈でボブヘアの勝気な雰囲気を持っている。

「昨日のうちに手術したで」

「そうなんやね。小川君と幼馴染で一緒にいられるからっていい気にならんといてよね!!」

玲奈はさらに強い口調で留理に言い放つ。

そんな玲奈に一歩下がってしまう留理。

「そうや。大人しそうな顔して学年一の人気者と幼馴染なんてねぇ」

玲奈の友達である野村里佳子は嫌味のように言う。

「私、小川君の事が好きなんやからね!」

「え!?」

突然の玲奈の告白に、一瞬、時が止まってしまう留理。

「幼馴染やからっていい気にならないでよ」

玲奈は留理を馬鹿にしたように言う。

「そういうことは言わない」

そこに偶然通りかかった一年生の副担任をしている長井有美子が言う。

「長井先生……」

留理は有美子に助けを求めるような目を向ける。

「小川君が好きなのはわかるけど、何も幼馴染にそういうことを言うのは違うと思う」

別に留理も幼馴染になろうと思って幼馴染になったわけではないのだから……、という意味合いで言う。

そう言われた玲美は悔しそうな表情をする。

「里佳子、行こうっ!」

バツが悪くなった玲美は里佳子の腕を引っ張って行ってしまう。

(川崎さん、篤史の事が好きなんや。篤史ってモテるから仕方ないないんやけど……。でも、好きやって言われてもなぁ……。そういうことは本人に言ってもらわないといけないんやけどな。私が同じクラスで幼馴染やから言いやすいんやろうな)

二人の後ろ姿を見つめながらそう思う留理。

「さっき言われた事、気にしないようにね」

有美子は笑顔で言う。

そう言われた留理は、はい、と返事をする。

そこに男性の叫び声が校内に響き渡った。その瞬間、その叫び声はどこから聞こえてくるのだろうと騒然となった。

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