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葛葉女史のオカルト事件簿  作者: 蒼藍王国神政省奇発事案記録局一般啓蒙部日本語課
○○
6/7

またせたなぁ。

あ、待ってませんか。失礼しました。

年単位で久しぶりですが、お楽しみください。

「だー。もう。あのおっちゃんはぁ!」

[人間関係で君が声を荒げるのは珍しいけど、料理中は落ち着き給えよ。で、どうした?]

「気にせんといてください、だいぶ落ち着いてきたので。とにかく、明日のカンファレンスに師匠が特別招待となったのは驚きました。」

気にするなと言われたら余計気になるのが人の性であるが、そんな事はどうでもよく、最近の―君は、よく井澄の自宅でお夕飯を食べて帰る。

[まあ、君も最後のカンファレンスとやらだからね。]

先の騒ぎから数年が経ち、宗主の部下扱いになり今の職場を来月退職することになっていた。そして、井澄も。

「師匠は籍はFCN社にあるけど実質的にはさらに上位の会社に移籍ですか。」

[LSN-FNSっていったかな。]

LSN-FNSとLSN-FNS-FCNの関係はNTTとdocomo、KDDIとau、UQmobileの関係に近い。

まあ、LSN(持ち株会社)-FNS(事業持ち株会社)-FCN(事業会社)と言う関係になるだろうか。


とりあえず半年後。(この半年間お話に関係ある出来事がなかったので。)

「師匠、これ見ました?」

[ん~?○県の●海岸に漂着死体?○県って、確か内陸県で海なんて無いはずだよね。]

―君が井澄によこしたのは2日前の新聞記事。

○県は内陸県どころか今井澄が住んでいる県の隣県である。

記事によれば●海岸なる場所へ昭和のお父さんという感じのノーネクタイなワイシャツにスラックス、ジャケットを着た30代前半の男性遺体が漂着しているのを近所の大学生が発見。警察に通報。

図らずも医学部卒業間近だったその学生は所属大学の教授に連絡を取り、警察が来るまでの間に現場保全までこなしたという。

遺体には目立った外傷はなかったものの顔は恐怖に引きつっていたという。

銃を突きつけられてといった類いのものではなく、お化け屋敷で感じる恐怖を濃くしたような、得体の知れないものに対する恐怖を感じたときの表情だという。

記事内の写真は遺体が持っていたカメラに残っていた写真の内、最も新しいとされるもので、奇っ怪な物が写っていた。

一言で言えば人魚のホルマリン漬け。上半身はやせた男性だが、目を剥いたかのように大きな黒目の部分が大きな目と、体と同じ色の紙。下半身はイルカか、鯨のようで、体表部は全部乳白色。それが、カメラへ向けて手を伸ばしてきているような写真だった。

[ん~。どっかで見たことあるような気がするんだよなぁ。こういう写真じゃなくて、絵でさ。]

「その手の情報なら、一也に聞くと手っ取り早いと思います。」

―君が一也にメッセージを送ると、数日後に宗主様へ相談事をするための面会申請が通ったためそこで落ち合い話をしようという返信があった。

二人は相談の上で了承の返事を出した。


その夜井澄は変な夢を見る。

自分は今の今まで地上にいたはず。それも自室でくつろいでいたはず。という自覚があった。

しかし、今いるのは水中である。それも、光がさんさんと差し込むレベルの浅い階層。

ふと、何かの気配を感じてその方向を見ると遠くに何やら黒いものがうごめいている。反対側にも気配を感じ、そちらを見れば、白いものがこちらへやってきている

井澄自身は動いていないにもかかわらず、徐々にその2つとの距離が縮まっていた。

その日はそこで朝が来て目が覚めた。

変な記事を読んだ星だろうと結論づけ、井澄は起き上がるが、視界に違和感を感じる。昨日より、気持ち視界が揺らいで見えるのだ。

転籍疲れもあるだろうし、今日は日曜日。眼科も休みなので明日受診しようと考えた。

次の夜も夢を見た。昨晩の続きだったが昨晩と違うのは白い方の形がはっきりと見えること。おとといの記事にあったようなよくある人魚(男性)形だが魚部分はどちらかと言えば、鯨やイルカのようなのっぺりとした姿。髪はなくスキンヘッド。顔は口だけあるのっぺらぼう。

手は長く細い。それが、おそらく原付レベルの速度でこちらに向かっている。今井澄がいる場所に着くのは相当後だろうが、それでも怖さを感じるには十分だった。

この日はこれで目が覚めた。

朝起きて、―君に相談しようと考えたがそういえば―君下手すると連続した夢を4,5日は見ることがあると言っていたし、これもその類いかなと考え多ので、相談は後にしようと切り替えた。だが、昨日より視界が揺らぐ。

近くの眼科も知らないし(井澄さん、超健康優良児で、現住所近辺はおろか実家近辺のお医者にかかったことがなく本人名義の診察券は一枚もない。)、何より、この視界状態はちょっと歩行がまずいと判断し―君を召喚し、どこか知っている眼科へと。状態を聞いた―君は自信が何度かお世話になった眼科へ。

極度の眼精疲労と涙の分泌が過剰になりかけているという診断を受け、両方を緩和する目薬を処方され使用すると、たちまち揺らぎは収まり、それからあの夢も見ないためああ、やっぱり疲れから見たんだねと。結論づけた。

そして、宗主の元へ行く日になった。


「回復したんじゃなかったの?」

「数日前からこの状態で。会社から出向扱いにしとくから、しっかりとケアしとけって。一応、俺取締役なんですけどね。」

一也の膝枕に顔を埋めるようにして横になる水琴を見て訪ねる―くんとそれにうなずく和泉。

「何でも数日前、離れの研究室にある樽をのぞき込んだら白い化け物がいたそうで。」

数日前の朝いつものように水琴が離れの研究室(新商品開発室)にある商品開発用に用意したたるの横に開けた漬かり具合を見るための窓をのぞいたところ、そこにあるはずの漬物がなく何やら液体がたまっていた。

その液体の中に何やら白いものが浮いていた。何だろうと思ったらその白いものが窓に向かってきた。一言で言えば真っ白な人魚。

上半身は痩せたはげ頭の男性だが、目はなくまぶたを閉じたままのようにも見える。唇は薄く鋭く長いはが並んだ口。下半身はイルカか鯨のよう。肌は全身真っ白。な得体の知れない謎の生物。それが、窓に向かってきた。窓にぶつかると思って、水琴が思わず後ずさり視線が窓から外れた。

もう一度視線を窓に戻せば昨日のように試作中の漬物が窓に見えていた。その後、水琴が母屋の事務所内で震えているところ10時頃やってきた一也に飛びついて、今に至る。

[私たちも似たようなものを知ったのでそういう方面に詳しい一也君に聞きたいと思って。]

井澄が、例の新聞記事を見せる。

「あー。これ、水琴さんが見たってやつの近縁種ですね。ん?○県●海岸?…。これもしかすると、本家様案件かも。」

またかとげんなりする井澄と―君。

「とりあえず、俺が持ってる知識で該当するとなるとニンカンとか、ジンゲン、ニンゲンと呼ばれる類いの怪異です。これを生で直視したものは正気を失い狂死してしまうといわれています。

窓や、カメラのファインダー、画面を通しての場合は問題ないのですが。だから水琴さんはこうして泣いて怖がっていますが正気のままです。」

[あー。まあいいや。それで、そのニンカンとかジンゲンっていうのは本来は見つからないはずなんだね?]

「まあ、これの生息域は南極海の南極寒流内側にある水深3000mの深海域です。また、本来は反走光性を持ち、調査機械から逃げるような行動をとるため、通常の探査では発見できていません。これまでに浅海で見つかったものの大半は外傷性ではない何らかの原因で弱り浅海へ浮上してしまった個体であるとみられています。」

そんな会話を続けている間も水琴のおびえが収まらず、それを相談する意味も含めて本家様へ相談を一也は取り付けていた。


「して、それを相談しに来たと。」

「奥の棟ならば人が大勢いらっしゃいますので、彼女も落ち着くかと思いまして。」

「人多いんは下の棟よ。まあ、ええか。なあ、館林漬物店の近郊に歴史ある神社がある集落とかない?」

宗主に問われて、少し考える仕草をする一也。

「おぅふ。ぉ。」

「あえぐな。水琴君の話が聞こえん。」

あえぎ声を我慢しているだけでした。

そうはいっても一也の膝枕状態で一也の体側を向いている水琴さん、話すたびに口の動きやら、吐息やらが一也の一也を優しく刺激する。そしてご機嫌になった一也の一也は余計にご機嫌になっていく。その過程であえいじゃっている。

「あります。うちのある通りから北西に見える山の麓。山の西側に。なんか言い伝えがあって、集落出身の子に聞いても教えてもらえないけど、守らなきゃいけないって言うものらしくて。」

なんとか落ち着いたので起き上がって話し始めた水琴さん。一也は…あーあ。果てちゃった。

「ただ、関係あるのかどうか知らないけど、乾物や、人の髪をついばむカラスは殺せって言うきまりはあるらしいです。」

水琴さんの話によると館林漬物店の北西方面にある山の西側の地域で昔から伝わる決まり事で上記のことが伝えられてきたという。

「そか。じゃあ、國崎さんにその旨伝えとくので、これからは國崎さん頼って。」


「井澄君は残りためぇ。一也。水琴君を下の棟へ連れて行ってあげなさい。―はそのお手伝い。」

井澄は何で残されたの解らなかったが、気になっていることがあったので相談をすることにした。

宗主が井澄を残した理由はまさしくそのことだったと聞かされ少し安心した井澄。

「ちょっとやっかいなものに魅入られたね。」

[やっかい。ですか。それはあの夢と関係あるのでしょうか?]

夢の説明を促されそれに応じて説明を行うと、

「本当は総家案件なんだけど、準備に時間がかかるなぁ。確か―の家は多少余裕があったよな。」

[そう聞いています。]

「井澄、枕が変わると眠れない質か?」

井澄が否定すると、

「今日から事の目処がつくまでの間―の部屋で寝起きしろ。」

とのお達し。

「やつは前回の魔女事件の関係でそういうものへの霊的障壁がかなり弱っている。

だから、24時間365日の國崎さん達からのサポートがついて、霊的障壁の代わりを担っている。

チッ。なかなかに強力なやつですね。」

部屋の温度が一気に下がった気がする。

「あなたに怒っているわけではないので頑張って聞いてくださいね井澄さん。

あなたは先の新聞記事を読んだせいで、今回の対象事象との縁、パスが結ばれてしまい、魅入られてしまった状態です。

今回の件に関してはあなたにも、―にも責任はありませんが、あなたが結ばれた縁は、館林水琴が結ばれた縁よりも遙かに強く。そしてやっかいです。

あたし達は可能な限りあなたたちを守ろうとしていますが相手方もなかなかに強力です。

この家の敷地は全体を複合的な結界が守護していますが、その結界に干渉し、今小さな穴が開いて相手方の分体がこの敷地内に侵入しました。相手方の目当てはあなたです。

いま國崎さんの部下達が分体駆除と結界修復を行っていますが、開いた穴に相手がとりついており塞ぐことができません。あなたはつらいかもしれませんが、少しだけこの部屋にこもっていてください。」

障子に相手方の影が映るかもしれないけど決して開けないように。あと、―達の声がしても開けないようにといわれた後、宗主は顔をしかめながら部屋を出て行った。

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