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葛葉女史のオカルト事件簿  作者: 蒼藍王国神政省奇発事案記録局一般啓蒙部日本語課
魔女
4/7

射出る

地下へと延びる階段を降りると、そこはまさに中枢といった感じのスーツをぱりっと着込んだ大勢の男女が行き交っていた

どこか、大量の水が落ちる音も聞こえる。地下水でも流れているのだろうか。

「ここが、真奥の棟。あ、そこら辺行き交っているのは今の宗主直属組織の奴らだ。

何かあったら、奴らの詰め所に行くと良い。手を貸してくれたり助けになるから。

下手なコンビニとかポスト以上にそこら辺にあるからな。

いつぞやは、事務所が二桁くらい区画整理で県境とか自治体の境目上になっちゃってどっちに税金払うのかわかんなかったから両方に払ったって位にどこにでもある。下手すると、コンビニと、ポストと、自販機合わせた数以上にあるかもな。

ちなみに、この家がある自治体の行政業務もここで一部代行してる。」

先代宗主に案内され行き着いた先には、庭を望む縁側。

「まあ、一杯飲みなさい。」

渡された湯飲みには透明な液体。湯飲みに入っていて冷たいとなれば、まあ水だろう。そう思って一気に煽り井澄はむせた。そして、気を失う。


『それで…。では…。…ですか。…は…でしょうか。』

うっすらと覚醒した意識の中で初めて聞く声がする。

『そうだけど。あ?ああ。おきたか。』

ゆっくりと目を開け、横を見ると、確かめるかのように手を振る宗主と彼女に似た、帽子をかぶりケープを羽織り、ゆったりとお茶をすする女性が見えた。

「目が覚めたか。全くあのじいさまは時たま突拍子も無いことをされる。

起きるのはゆっくりで良い。

私の後ろでのんきにお茶飲みながら資料を読んでるのが見えるな?」

宗主に問われ井澄は頷く。

「あれは宗主代理してくれる妹。まあ、あれの方が忙しいけど。それと、後ろ向いてみ。」

振り向くと。

「ひゃ。」

「はははははは。さすがにそのレベルの美人となると、心臓に悪いか。」

とてつもない美人がもじどおり、目と鼻の先にいた。

「さて、おふざけはそこまでで。紹介します。我が一族総家当主御屋野様です。」

「総家当主様?あの人海戦術での捜査をお決めになった?」

[はじめまして。ですね。]

柔らかい笑みだ。

[コウ、これが逮捕状です。それと、……あの彼が。]

「同意したと。」

総家当主が頷くと宗主が深いため息をつき、

「○ラギ○ー○を一箱送りますか。」

「なにを。」

某有名肛門周辺薬品の名前に井澄は顔を引きつらせながら問う。

「出会ってからのお楽しみ。」






「やあ。君が、摂津女史の縁者さんかい。僕は、太秦。作家をしている。」

「あまりそれに近づくなよ。ところでキチンと風呂には入ってきたんだろうな。」

スリムラインの眼鏡にスリムスタイルのスーツを着た女性向けゲームの切れ者系を連想させる男性が挨拶をしてくる。

「ずいぶんなあいさつじゃないか。」

「おまえは例え毎日2時間風呂桶に漬けといたって、以下くらいのとれないんだから良いだろう。」

「これまたずいぶんな言いぐさだねえ。まるで僕が四六時中はつじょ「しとろうが!」しかたないか。」

太秦が肩をすくめて用意されていた車の後部座席に収まる。

「他もほれ移動準備。」

徐々に宗主の口調が荒くなり出す。

[葛葉さんは、初めてかもしれないですね。あの子の素の口調。]

総家当主と呼ばれた女性が頭上にハテナマークだらけの井澄のとなりに立つ。

「え。あれが素?感情が高ぶってとかでは無く?」

[あの子はあの口調が素ですよ。]

二人も遅れて―青年の運転する車に乗り込み、3台が発射する。

それにしても、

「なぜに1台は大型バスなんですか。」

[あの子に訊いてください。]

「訊かれても困る。私も、これはなんともいえんのだ。」

その後宗主と―青年の話題切り替えにより車内は盛り上がり、数時間の後、

一行は館林漬け物店の駐車場に着いた。

店の入り口にあるドアに手を掛けると怒声が響いてきた。

「どこの馬鹿だやぁ?近所迷惑だっちゅうの。」

「自分のことは棚に上げて。」

自覚の上で言っていますと胸を張れないことで胸を張る―青年。その上でうなだれる。

井澄が問えば、

「いやあ、こんな10人並みの顔した男が、胸張れないことで胸張ってもねえ、様にならんでしょ。これで見てられるんは「可愛い女の子だよな。とでも言いたいんだろう。」なしてわかりましたか?宗主様!」

[そりゃあ、この子の思考パターンはまるっきりあなたと同じですし。あなた方の親玉ですから、―さんや、小林さんと大体の考え方は同じです。]

うなだれる―青年を尻目に心底うっとうしそうな宗主。


「いい加減立ち退け。ここはすでに豊穣グループの持ち物に「登記上も他の所有情報も全て、5年前に館林水琴さんを経由して小林商事常務小林一也氏の物になっていますね。ここも、我々の考えに賛同いただいているので我々も大いに活動させていただいています。」

店に入るとよりいっそううるささが増す。

「あれが、自分に自信ないから洗脳魔法に頼った盆暗か。」

宗主が、一行から離れて何か手振りと聞いたこと無い言語で何者かに指示を出している

「小林一也、館林水琴は、今後、本件等そなたらと、―、葛葉井澄に降りかかる事案に関して我々の部下より情報が片っ端から集まる。基本的に彼らは荒く情報を集析しておまえ達に渡すが…るっせーな。人が話してる間ちったー黙ってろこの盆暗が。どこぞの覆面ライダーが持ってるベルトじゃ無いんだから黙ったって問題ないだろう。」

そう言って騒いでいる水琴に婚約破棄の手紙を一方的に送りつけた男の背中を思いっ切り蹴っ飛ばす宗主。

「ベ!ヴァー!」

「「いったそー。」」

確かに宗主に蹴飛ばされたあと打ちっ放しのコンクリート床を数m滑り壁に激突した盆暗男。

「ったく。そんな性格がにじみ出たような意地悪い顔してるから、女寄ってこねえんだよ。他人の洗脳する前に自分の性格直せってんだよ。んっとに気色悪い顔しやがって。あ?んだぁ?そん顔したからゆうてきさんが、うちに対して優位に立てるとでも思ってるん?」確かに男の顔は、整っては居るものの、ものすごいイヤーな雰囲気を醸し出していた。

「おまえ何者だ。」

「人に物尋ねる前に…てこれお約束やんね。言わんとだめ?」

好きにしろと一同肩をすくめていると、宗主は一也と水琴を呼び寄せ耳打ちをする。

キョトンとした表情の二人に宗主が頷き、店の外に向かってハンドサインを出すと、二人の平凡顔した男がやってきて盆暗男を立たせ左右から動けないよう固定する。

「まずはお仕置き第一弾。」

「…!」

「「なんかいえよ!」」

何も言わずに盆暗男にライダーキックをたたき込んだ一也に一同突っ込みを入れる。

まあ、一同も、一也の心情を考えその一言でとどめた。

両家公認の仲であり、事実上の婚約状態だったのを、横からかっさわれそれでも水琴の幸せを願いつつ、家同士の契約を律儀に果たしていた時に見た、身勝手な婚約破棄。

重い思いではあるが、それでも即座に、水琴の心変わりが水琴の意思では無く、何らかの手段で表層的に繕われた偽装であると見抜き、その解除方法の探索と、彼女が元に戻ったときのために備えて、彼女が行っていた仕事の大半を自分の仕事をこなしながら行っていた一也を、宗主も―青年もそして、―青年から訊いてきた井澄も高く評価していた。

何か言ってからたたき込みたかっただろうが、人間こういうときになると、どうにもこうにも言葉が出てこない。

そのため、無言のライダーキックとなった。まあ、突っ込みの方もお約束という感じだが。一也が見事なライダーキックをたたき込みやっと整理が付いたのか思いつく限りの罵詈雑言を浴びせかけた。

その中に含まれた言葉に―青年が反応し、その反応に関して井澄が怒り、―青年は即座に土下座して泣いて謝ったという一幕を挟み、盆暗男も落ち着いたところに水琴の番となった。

水琴は男を店の外に出すように指示すると自分はあの蔵に一也を従えて向かった。

「何をするつもりかわかるか?」

「すいませんすいませんすいません……。」

「もう良いから。話を切り替えよう。あの二人が奥に入っていったのは何をするためなのかわかるか?」

井澄に怒られていつもの陽気さはどこへやら小さくなって謝罪を連呼する―青年だったが再び井澄から問われると、

「たぶん、塩を取りに行ったのかと。あと、皆さん入り口から離れた方がよろしいかと。」

水琴は戻ってきた足でそのまま、盆暗男の前に立つと、じっと5分ほど男を見つめいきなり股間をヤクザキィック。

その場にいた男性陣は、総家当主の夫を名乗るイケメンさん以外全員思わず自分の股間を押さえる始末。

その後、水琴は30kg入りの業務用塩化ナトリウムを一升枡ですくってはうずくまる男の上から無表情で淡々と10袋分かけ続けた。

近所の人も事情をわかっていたので誰も男を助けようとはしなかった。


「だいにだーん。」

「むー。さすがにこの男とお話しするのはいくら僕でもいやだなあ。性格がにじみ出ている物。」

太秦が文句を言うが宗主の表情がどんどんとご機嫌斜めになっていくにつれて彼女が距離を開けながら太秦の後ろに回り込んでいるのを一同ただ見ていた。

「い・い・か・ら・き・さ・ん・は・と・っ・と・そ・れ・を・い・じ・く・り・ま・わ・せ」

そう言ってこれまた見事なライダーキック

「いったー。……でも。気持ちいい~!」

宗主の蹴りをきっかけとして、軽く1・2mは飛んだがその飛んでいる間に太秦の容姿は、スリムなスーツを決めたイケメンからTシャツジーパンに服がパッツンパッツンになるほど、ぶっくぶくに太りきった、10人中10人がきもいと第一声を放つようなおデブというのもはばかられる形になんと言おうか。

豚といったら豚にも養豚業者にも失礼だし、オークやオーガ、トロールといったら、該当生物に対して失礼な、それが歩いたあとは、草木は枯れ果て、水は濁り、動物は自殺するだろう容姿になっていた。

「ああ~ん。もっと、もっと激しく僕を責め立てて~ん。あれ~ん?どうしてみんなそんなに離れてるの。もっと僕にKAIKANをちょうだいよ。」

もう言動からして吐き気催すほど気持ち悪い。可愛い女の子がこれやるならゆるされるであろう、両手拳をあごに当ててふるふるしながらの上目遣いをしてきたせいで、井澄は思わず飲んでいた缶コーヒーを投げつけてしまったほどだ。

「あぁん。あつい。あついよう。どんどんたまっていく僕のSHOUDOU。こんなに熱くなっちゃった僕の体。どうしよう、もてあましちゃうなぁ。」

そう言いながらどうやればそんなにスムーズにできるのかと言うほどにするすると服を脱ぎ捨てると、そこの形がわかるほどにぴっちぴちの下着一枚となった一部始終を、

―青年も水琴も一也も水琴の家族も吐き気を訴え店の奥に引っ込ませ、

太秦となじみである宗主とその親類縁者、そして井澄だけが見ていた。

宗主が男を指し示すと、

「ああ、あのこがぼくのこのあつくなってしまったからだをしずめてくれるのねぇ。」

太秦が男に後ろから抱きついて…。








「満足か。」

「まあ。満足したが、君たちは僕をなんだと思ってるんだい?」

「「対勘違い野郎懲罰用戦略兵器&万能作家。」」

宗主とそのの親類8人にサラウンドで言われてうなだれる太秦。

「それでどうするんだい?あれは。」

「あれが言う、豊穣グループとやらの中核企業玄関に、体を金ぴかに塗った上で振動固めで放置予定。」

「それは抱腹絶倒物だろうね。是非噛ませてくれないだろうか。」

太秦がうずうずしつつ身を乗り出す。


翌日、件の豊穣グループ全企業の株価が暴騰したと思ったら暴落し、翌週には黒い噂が流れ始めた。

まあ、創業者一族の次代が、体を金ぴかに塗られて、目隠し猿ぐつわされた上で、本社ホールに[パンツ一丁の全裸]で放置され、どかそうにも、岩盤まで打ち込まれた杭に堅く固定されており、杭も固定している拘束具もどんな手段をつかっても破壊できない代物だったうえに、時折、びっくんびっくん跳ねている。

そして、体中の穴という穴から透明ないし白い液体が垂れている。そんな光景を見たら、誰だってつきあいたくなくなるだろう。

そんな場所に太秦と、宗主がいた。その後ろには葛葉が居る。

「あれも被害者と言えば被害者。ただ自分の地位を錯覚して他者を傷つけた時点で、その被害者という立場は消えて無くなってるけどね。」

「あれが、宗主様にたてついた罰。男としても人間としても終わったな。―、君はああはなるなよ。まあ、ならないようにしっかり私がしつけるから覚悟しておけ。」

「はい!師匠よろしくお願いします。」

冗談のつもりで行った泉だったが思いの外きらきらした目で元気よく―青年が答えるので若干退く。

「くくく。君の親類は賑やかだね。」

「ま。ここらで空元気でも良いから、軽く精を出してもらわんと。遅くとも今年度中には決着つけて温泉行きたいなあ。」

「…太秦さんなんでそわそわしているんですか?」

井澄の指摘に初めて自分がそわそわしていることに気づいた様子の太秦。

「あれ。おかしいな。どうしてだろう。」

「今度はお汁粉か。…葛葉君、あとで温かい甘酒買ってあげるからそれチョウダイ。」

なんとなくやることが見えたので拒否したら、

「それどこで買った?」

「そこの自販機です。かけないでくださいよ。」

「せっかくの職人仕事を台無しにはしないよ。それよりも、あれをもっと跳ねさせたいなあ。あ、ありがとう。」

宗主の妹が買ってきた熱々の缶汁粉を姉に手渡す。宗主はそのまま流れるような仕草で、太秦の背中に汁粉を放り込む。

「う゛ぉぉぉぉおおおおおおん~。な…何をするんだ。そんなにぼきの獣性を解き放ちたいのか。」

「半開放状態じゃ無いとあれのお仕置き強化は出来ない。どうせ掃除もやるんだろう?」そう言って、誰も近づかないお仕置き現場に向かうと、男の前に立ち手を振る。

「強化って言うからには、自分がどこに居るかを目隠しとかはずして自覚させつつ、刺激は続けるのか。って、―良くこの状況でそんなの食べられるな。ん?くれるのかありがとう。オー。相変わらずあごが痛くなるほどの強烈な酸味だ。」


「最近―は厄日が続くな。今日は君が全く関係ないことでお客様のお怒りを受けた上に経緯がわからないから、説明できなかったら今後どうすれば防止できるかを考えさせられたか。

そして、経緯がわからないから防止策も考えようが無いか。

泣くな。全く君は私の前だと本当に弱いな。いつもの底抜けの明るさはどうした。

なに?まだあのときの影響が店の中にあると宗主様が言っていて、近く見に来ると。

わかった。ところで今日のことはどうなるんだ?ああ、ちゃんと、最初に対応した人間に考えさせると、店長さんが言っていたと。

それと明日私も含めた4人でステーキを食べに行く話とどうつながる?なに?今日のお詫び?今日はKさんが居ないから明日その相談も含めてか。そうか。わかった。

ところで、君は今日の経緯なんだと思う?」

いろいろと重なり、―青年に不運が舞い込み続けている。それを慰めつつも、しっかりと前を向かせる井澄。

「そうか。やはり君も違和感を感じていたか。ここ最近携帯コーナー近辺で迷子が多発している。もしかするとホスピタル周辺にも波及する可能性があるので気をつけなさい。」

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