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九十九話

 光と闇の同盟は締結された。

 動きはさっそくあった。

 まずはアムル・ソンリッサがアラバイン王を訪ね、次にアラバイン王がアムル・ソンリッサのもとを訪れた。

 そしてこの大陸はエリルフレルアン大陸と共通して呼ばれるようになった。



 光と闇の同盟が締結した一度目の冬、オーク城の外にアカツキはいた。

 空よりも暗い外套を身に纏い、戟を手に提げ腰には斧と剣が差してある。

 ガルムがいなくなったということはアムル・ソンリッサの国まで魔法陣で行き来できなくなったということだ。

 まぁ、地道な旅も悪くはない。

 既に太守のサグデン伯、ツッチー将軍らには話した。

 アカツキは将軍の座から退き、旅立つことにしたのだ。

 三日月と満点の星々がアカツキを見下ろしている。

 綺麗だ。先行きは良いかもしれない。

 アカツキは空を見上げた後、歩もうとした。

 その時だった。

「アカツキ将軍」

 女の声が聴こえた。

 気付けば後方に一人立っていて、その人物は歩み寄って来た。

 相手が近付く度に月明かりがその顔を鮮明に映し出す。アカツキは驚きの声を上げた。

「リムリア!?」

 相手はクスリと笑った。

「そうだよ」

「馬鹿な、お前はあの時、剣と共に」

「うん! そうだったんだよね」

「ならばどうして?」

「分かんない」

 リムリアは応じた。

「気付いたの今なの」

「本当にお前なのか?」

「アカツキ将軍にはどう見える?」

 リムリアに問われ、アカツキは月明かりを頼りに彼女を凝視した。

「胸が大きくなったか?」

 するとリムリアはバシリとアカツキの胸を叩いた。

「もう! いつの間にそんなこと言う様になったの!? 純朴だったアカツキ将軍は何処へ行ったの!?」

「冗談だ。お前は間違いなくリムリアだ」

 アカツキは確信しそう言った。

 しかし何故? という言葉を飲み込んだ。脳裏を過ぎるのはガルム、いや、運命神サラフィーの声だった。「 運命神とは気まぐれなのですよ」

「奴の置き土産だったのかもしれないな……」

「ん? お土産がどうしたの?」

「いや、何でも無い。ところでお前は俺について来るつもりか?」

「そうだよ。アカツキ将軍、アムル様のところに行くんでしょ?」

「ああ」

 アカツキは頷いた。

 この一年近く悩みに悩んだ。自分の本心は、忠義はアムル・ソンリッサかアラバイン王かどちらにあるのだろうかと。

 その結果、アムル・ソンリッサのもとへ行くことに決めたのだ。一兵士からでも仕官するつもりだ。闇の面々の姿が脳裏を過ぎる。彼ら、彼女らに早く会いたかった。

「アタシもついてくよ。ストームもきっとアカツキ将軍のこと待ってるよ」

「そうだと良いがな。それとリムリア、俺はもう将軍じゃない。ただのさすらい人だ」

 するとリムリアは小さく笑った。

「アカツキ将軍はアカツキ将軍だよ。もうあだ名みたいなものでしょ」

 アカツキは苦笑したが、再び天を見上げそしてリムリアを振り返った。

「話は道すがらにしよう。行くぞ、リムリア」

「うん!」

 二人は寄り添い手を握り、互いの温もりを感じつつ闇の国へと歩んで行ったのだった。



 暁伝 完。

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