うさモフ
「玉藻ー。なんか私ら大変なことになりそうー。二つ名スレ参照。」
「あーやらかした!!早くあそこから立ち去るべきだったっ!!右奥!」
「次は頑張ってくれたまえ。我が作戦参謀殿?後ろ引っかかってるやつよろー」
「いつから俺は作戦参謀になったんだよ…。正面2匹!」
「私に頭脳戦は向かないって気が付いた時から?糸張り直しとくねー」
「ねーちゃんは何となくやってみたらできた~が多すぎるんだよ!左のやつ眷属で足止めしとく!」
「だってそれで何とかなるんだもん。ぁ、レベル上がった~。」
ウサギ大量虐殺なう。
何してるんだって?私が聞きたい。
もともと風の国は森の奥にひっそりとある国で、みんな狩りやすい北の山道の方に行くんだけど、玉藻は遮蔽物があるほうが強い種族だし、私は暗い所のほうが力が増すしで、人があまりいない南の森にレベルアップのために森ウサギ(正式名称フォレストラビット)狩りに来てるんだけど…
「だあーー!!ウサギ多すぎだろ!!」
「ふむ。ちょっと多すぎかなー」
普通はここまで石を投げたら森ウサギに当たる状態じゃないんだけど…
「心当たりは?」
「森の奥にキング系モンスターが沸いた可能性大。」
「根拠は?」
「βの時にあったスタンピードに似てるから。」
あの時はゴブリンが沢山沸いたっけ。
「それやばくね?」
「やばい。βの時は町一つが消えたレベルでやばかった。強い奴は指揮系統がしっかりしてる分やっかい。今回はそこまで強くはなさそうだけど、戦闘できるぐらい動けるプレイヤーが、どれだけいることやら。」
さて、なんとかしますかね。
「玉藻ー。ちょっとギルドまで走って、この状況説明してきて?ギルドカードに討伐数が記録されてるはずだから、見れば異常ってわかるでしょ。」
今の段階で私たちの討伐数は一人あたり三桁を余裕で超えてる
「ねーちゃんは?」
「食い止める。アハハハ!」
ウサギさん私と遊びましょ?
「あ~高笑いしてる。姉貴のスイッチ入ったな。俺が返ってくるまで生き残ってるヤツいるかなー?森ウサギ…南無。」
生態系のためにもスキルをフル活用してギルドまでたどり着いたけど、ギルドが慌ててる様子はない。
大丈夫かこのギルド?
王都出てすぐの南の森であれだけウサギが大量発生してるのに…
「すいません!急用です!ギルドマスターいますか!?」
「用件ならこちらでお聞きしますけど。」
「これはあなたでは処理できないと思いますので、ギルドマスターを呼んでください。」
「生憎ギルマスは席を外してますので…」
「おい、誰がいないって?ここにいんだろうが。それより嬢ちゃん、急用ったあ南の森か?」
カウンターの裏から出てきたスキンヘッドのいかついおっちゃん。流石にギルマスはわかってるっぽい。
受付のおねーさん苦々しい顔してるけど今はそれどころじゃない。
「緊急なのでここで失礼します。南の森でフォレストラビットが大量発生しています。今は姉が街への被害を食い止めている状況です。姉曰はく、スタンピードの恐れがあるそうです。できるだけ早く救援をお願いします。」
「あそこの森はいつもたくさんのウサギがいるわ。新米がその数にびっくりしたんでしょ?わざわざそんなことで…」
「お前は黙っていろ!すまないな嬢ちゃん。それで、スタンピードだったか…。悪いがこっちもいたずらにギルドのメンバーを動かせないんだわ。」
「これを見てください。自分が倒した分だけですが。」
ギルマスが気づいてる割には対応が遅い。
嫌な予感がするんだよな…
早く戻らないと。
「…これは!216!?一日でこれだけの数はあり得ないな。なるほど、これは嬢ちゃんのお姉さんが言うことも一理ある。」
「姉はこの倍は討伐しています。」
「この倍だと!?」
「では自分はこれで失礼します。」
「できるだけ早く増援を送るが…それまで何とか耐えてくれ…済まないな。」
「いえ、自分たち加護もちは死なないので、使いつぶすのは正しい判断ですよ。それと、」
「まだ何かあったのか!?」
「自分は男ですので。お間違いなきよう。」
そんな森ウサギのときより衝撃受けたような顔しなくてもいいとおもうんだ…
「うーさぎ兎何見て跳ねるー。十五夜お月さんミテハーネルッ!キャハハハハ!!!」
俺がたどり着いたときに見たのは、森のいたるところに蜘蛛の巣に捕らえられた蝶のような状態で姉が操る糸により息絶えている森ウサギと、高笑いがとうとう狂気的になり、歌いながら踊るように大鎌を振り、向かってくるウサギの首を次々にはねていく姉の姿…。
怖えぇ…。
無理。
夢に出る。
そこらのホラゲより全然怖いんだけどっ!
血の代わりの赤いエフェクトが暗い森でよりその怖さを引き立ててるって言うか、とりあえず怖い。
これに話しかけるとか無理なんだけど。
「キヒッ。次は~だ~れ?」
こっち向いたーー!!!
「ストーップ!!」
俺はもうほとんど残っていないMPを犠牲に眷属を召喚っ!こいっ!妲己(銀色の狐。かなりのモフモフ、もはや毛玉)っ!
「妲己っ、姉貴を止めてくれっ!【体当たり】!」
「コーン!」
妲己は命令どおりザクロにぶつかった、ぶつかったのだが・・・
ポヨヨーーーン
……モフモフすぎてダメージが無い。もうね、当たった瞬間姉貴がトリップから帰ってくるレベルのモフモフだからね、フレンドリーファイヤーありのこのゲームでもダメージ無いよね。
「ん~?…狐。…モフモフ。」
しまった、妲己が姉貴に捕まってしまった。ムギューってされて丸い妲己が細長い管狐に変形してる。
けど妲己の尊い犠牲のお陰で姉貴が少しだけ人間に戻った!奴を完全に人間に戻すには今しかない!
「おーい姉貴ー、戻ってこーい。」
俺は姉貴が人間に戻ることを祈った。
「モフ…。あ、なんだ玉藻か~。」
「良かった、もどった。ちゃんとギルドに報告しといたぞ。あといい加減に妲己を放せ!そのモフモフは俺のもんだっ!」
「りょ~かい。モフモフ成分吸収完了~。ほら返す。」
この姉貴、妲己を投げ返しやがった。妲己少し泣いててカワユス。
ゴホンッ。覚えてろよぜってー後で仕返してやるからな!
あっ、また妲己捕まった。あんな可愛い顔するから……今度妲己にはちょっといいご飯ご飯あげよぅ。
「よーし、次行くか。にひ。」
「行くってどこにさ、もうちょっと待てば応援来るらしいから、俺がここに結界はって、姉貴が結界の穴を糸で塞いどきゃいいじゃん。」
妲己~。かわいそうに。でろんってなってる。でろんって。(語彙力)
「応援来るならここでウサギ止めてる意味はほぼ無いでしょー。後から来る奴に任せとけばいいんだよ。なら私らがとる行動はひと~つ!」
「…ボス戦っすか。」
「ご名答!さあ行こう?きひひ。」
「この戦闘狂が…」
「ボスに一人で向かっていかなかった私をほめてほしいぐらいだねェ~イヒヒ。」
この頭のおかしい姉貴は…、普通は一人でボス戦なんて行かないっつーの。大体、俺等まだゲーム始めて間もないのにボス戦に行くとか。まぁ、こうなった姉貴は止められないからなぁ。
「はあ…。ボスの場所は?」
「南西方向に真っ直ぐカナ?」
「何でわかるんだよ…。」
「んー、ウサギの流れがそっちから来る気がするカラ?」
「何故疑問形!?とりあえず、結界といたら姉貴が先行して道作って。俺はギルドへの飛脚でMPギリだから、ついてく。」
「おっけ~。ヒヒ。」
またエンジンかかってきてるし…。
ついていくのも厳しいかも…
「いっくよ~。3~2~1~0!!アハハハ!!」
姉貴は俺がスキルを使わなくてもギリギリ追いつけるレベルで走り出した。
「クッソ!俺今MPだけじゃなくてスタミナもあんまし残ってねぇのに!」
あれは聞こえてないな…。
俺は必死に(消費HPを計算しながら)付いていくのが精一杯だった。