キャラメイク(冒険までもうちょい)
そんなこんなでオープン当日。
弟は何とか全クリできたらしい。よくやるよね~
「ところでねーちゃんはアレ何日でクリアしたん?」
「一日。」
「うわぁ。これだからリアルチートはっ!!」
「これ私のギアのナンバーだから、登録よろ。お先っ“ダイブ”。」
「ちょい待て!ああもう!“ダイブ”!!」
こういう時ってなんか連打したくなるよね。
まあ、実際今AFOのスタート画面を連打しているわけなんですが。
「サービス開始まであと3秒…2秒…1秒…」
秒数がゼロになると共に私の周りが暗闇に包まれる。
一筋の光が射したかと思うと、写し出される映像の数々。
それは草原を走るモンスターの群れだったり、空を飛ぶドラゴンだったり、活気のある街並みだったり、おどろおどろしい魔王城であったり。
そして最後に現れたのはこの世界の神話を描いた美しい壁画。
―あなたの人生が素晴らしいものでありますように―
そんな声が聞こえると目も開けられないほどの光があふれ…
「いらっしゃいなの~」
少し間抜けな声が響いた。
「あなたは?」
「わたしは~キャラメイクサポートキャラクターのアリスなの~貴方のお名前を教えてほしいの~」
「私は…そうだなぁ、“ザクロ”だよ。よろしく。」
「よろしくなの~それじゃあキャラメイクを始めるの~ザクロさんは~βテスターの時のキャラをそのまま使うの~?」
「いや。作り直したいんだけどいいかな?」
「了解なの~これはザクロをスキャンした3Dモデルなの~そのままはお勧めしないの~」
「髪の毛のばして髪色は白、目の色は赤で、身長を5cm高く。」
「ふんふん。任せるの~!えいっなのっ!」
私の姿のマネキンがみるみるうちに髪は腰までのび、身長は160cmぐらいに変わっていく。
βの時は黒髪に金色の目だったからばれないでしょ。
「おお。2回目だけど感動するね。」
「朝飯前なの~次は種族を選ぶの~」
「種族はβと変わってない?」
「色々と増えてるの~」
「めんどくさいからランダムで。」
「多すぎるから~人族、獣族、妖精族、魔族、その他から決めてほしいの~」
「魔族で。」
「わかったの~ランダムは3つ候補が出るからそこから決めてほしいの~」
目の前に現れたスクリーンに表示された種族は
マミー、レイス、バンパイア(デイウォーク)
「おめでとうなの~!!このバンパイアはレア種なの~。レア種はランダムでしか出ないんですの~大当たりなの~」
「じゃあそれで。」
「はいはいお任せなの~!!バンパイアは種族スキルが~
・吸血
・催眠
・日光無効
・ナイトフィールド
この4つが固定で~、夜になると強い種族なの~スキルはあと6個選べるの~」
「ランダムで…は怖いから、お勧めで。」
「あいあいさ~なの~」
「もういい?」
「はいなの~ALOの世界を楽しんでほしいの~」
「いってきます。」
そして私はALOの世界に乗り込んだ。
…キャラメイクってめんどくさいのよねぇ。
~弟サイド~
「あんの姉!先に行きやがって、だいたい友達の登録ってどうすりゃいいんだよ」
一応ナンバーは覚えてきたけど、ゲームの注意点とかもっと俺に対してアドバイスあるだろう普通!
「にひひ、何かお困りのようだねぇ」
「誰だっ」
「にひひ、オイラはキャラメイクのサポーターの一人“チェシャ猫”って言うんだ。少しの間だけどよろしくなぁ」
「よろしくなチェシャ猫、それにしてもキャラメイクとかゲームっぽいなっ!」
「ゲームだからなっ!まずはお前の名前を教えてもらおうかぁ?」
「そうだな、“秀”で頼む」
「にひひ、お前さん運がねえなぁ。その名前はもう登録されているから他のにしてくれ」
「くっそっ、先を越されたか!なら“玉藻”で頼む」
「にししし、それなら大丈夫だぜぇ。…よしこれで登録が終わったぜぇ?次はキャラの外見を決めるぜぇ。」
「外見はそのままで、身長も今と同じで頼む。」
「まったく同じにすると危険だからおすすめはしねぇが、それでも同じにするのか?」
「なら、髪の毛の色と目を銀色で。」
「面倒だからもう金色でいいよなぁ。」
「なにその適当な感じ!もうそれでいいよっ!」
「りょうかーい、よっと!」
目の前に現れたマネキンが注文通りに変化してゆく。
「これでいいよな、次は種族を決めてもらおうか。何にするんだぁ?」
「そうだなぁ…、獣族ってあるか?」
「かなりの種類あるからランダムで三種類選ぶぞ。いいよなぁ?」
「頼んだ」
「えいっ」
目の前に現れたスクリーンに表示された種族は、
トカゲ族、犬族、狐族
「おっ、当たりぃ~。狐族は微レア種族だからあんたついてるねぇ。名前のおかげかねぇ?」
「ほんとかっ!ならそれで頼む!狐!!」
「へいへーい。あっ、そういえば言い忘れてたけど狐族が最初から持つ種族スキルは、
・幻術魔法
・眷属召喚
・MP上昇
・結界魔法
の四つでなぁ、視界が悪い場所での戦いなら強い種族だぜぇ。これに獣族全体が持つ『速度上昇』を足した五つが基本スキルだぜぇ。後5つスキルが決められるから後は自分で決めてくれぇ。お勧めはいくつか紹介するからよぉ」
「いろいろありがとな。」
「にししし、なんてこたぁねえよ。最初の客だ、サービスしとくぜぇ。…ALO楽しんで来いよ」
「ありがとう!行ってくる。」
俺の感謝の言葉を聞くとチェシャ猫はニヤニヤ笑い、すっうっと空気に溶けるように消えてしまった。
そして俺はALOの世界に乗り込んだ。
…チェシャ猫は、やる気は無かったが良い奴だったなぁ。




