リアルな講習
や、やっと投稿できた……。
「じゃ、無属性からやっていこうか。無属性と侮るなかれ。属性魔法と言ってはいるけど事実は無属性の応用だからね。」
なんか悲しいことを言われた。とどのつまり、例えば俺の水だったら、無属性で形つくって、無属性で放出、みたいなもんらしい。
「大事なのはイメージだ。自分の繰り出したい技のイメージを細かく鮮明に頭に思い浮かべる。呪文を唱えるのはイメージの補佐のためだね。イメージが弱いと魔法の力も魔力量関係なく弱まるから、頑張ってね。だからといって魔力量を少なくしたら駄目だよ。強い技ほど魔力が多く必要だからね。」
どこかで聞いたことあるようなことを言われた。だが、イメージなら自信がある。暗記や暗算や脳内構築は得意だ。
「強化は、自分の体が自由自在に動いて、俊敏に、岩を壊せるようなイメージを持つといい。あぁ、魔力を身体中に巡らせるイメージは忘れないでね。」
一人一人の目の前に藁を巻き付けた木がある。これで試せと言うことだろう。俺は講師の説明とはさっそく違うことをすることにした。来た意味?あるからな。
俺は目を瞑った。筋肉が膨れ上がるイメージ。魔力は蹴り足に集中させ留めるイメージ。目標に当たる場所を計算、さらにそこに凝縮していく。
「…………シィッ!」
パァン!
木が折れ、倒れる。
辺りが静寂に包まれる。……いや、静寂なのは可笑しいだろ。と思って回りを見渡せば、こちらを注視する大勢。困って講師を見てみれば講師まで目を真ん丸にさせている。本当に、どうしたらいいんだ。
「わー、すごーい。オフィ君それどうやったの?ポッキリ折れてるじゃないですか。」
そこに天の助けのような声。アリィである。
「いや、筋肉のイメージとか、魔力一点集中のイメージとかでかましてみただけなんだが。」
「ほむほむ、そっかー。ねえねえオフィさんや。君の武器の杖貸してくんない?私の武器、この鞭だから一点集中には向いてないんだよねぇ。」
ここでアリィの武器が鞭であることが確定。いや、さっきの会話で教えてもらってはいたんだが。心のなかで信じきれていなかった。だってこの子学級委員長なんだもん。……もんとか我ながらキメェ。
「いいけど、ほら。」
「感謝感謝ー。」
そしてアリィは某流浪人漫画の牙○に良く似たポーズを取った。
「足腰を魔力で押さえてー、肩の筋肉に重点を置きつつ腕の筋肉から杖の先端にかけて魔力を循環させる。そんでもってドーン‼」
ドゴン!
イメージを口に出しながら繰り出した突きは木に先が良く見える風穴を作り出した。またも発生する沈黙。俺達がやったことは異常現象なんだろうか。
杖がへしゃげてないかとても心配になる重い一撃だった。俺は慌ててアリィから杖を返してもらい、点検をする。良かった、細かな傷はあれど真っ二つなんてことにはなっていない。
「いやぁ、ごめんね?魔力通しとかなかったら絶対に壊してたよ。私の判断を称賛してくれてもいいよ?」
これはやばい奴だった。怒りはしても称賛はしない。ちょいとおこ、と言う意味を込めて軽くデコピンをお見舞いする。いたあ!と言う可愛らしい声が聞こえた。これでプラマイゼロだ。
「いや、君らすごいね!それ後でやる応用なんだけど……。」
講師が話しかけてくる。そうか、後でやるはずだったのか。それは少し申し訳ないことをしてしまった。
「今のは部分集中強化というんだ。硬さと威力が通常よりはね上がるってものだよ。これは後でやるから待っててね。よし!じゃ、君達に教える魔法の見本をやってもらおうかな。前に来て。」
……面倒なことを頼まれた。
後ろからアリィに肩をつつかれる。
「ちょっと君が後でやること今やっちゃったせいで呼ばれちゃったじゃないー。」
全く怒りの感情が見られない声で責めるアリィに俺は笑った。
「俺のせいじゃないだろう?ダメ押ししたのはアリィじゃないか。それなのになぁ……。」
ふざけ半分に話しながら肩を竦めさせる。本当になんでリアルでは知り合い程度だったのだろうか。この人すげえ面白い。だが何度でも言おう、俺は彼女持ちだ。フラグはない。
「ま、でも一番に出来るってことだから得の方に考えよっか。」
「まぁそうだな」
「お、やる気になってくれたかい?なら次はアイテムボックス。なにもない空間に穴があって、そこのなかには大きな空間が広がってる、って考えてみよう。」
定番のアイテムボックスは魔法らしい。ウィンドウを開いてしまうってのもリアリティが無いからだろうな……。運営の考えがほんとリアリティという言葉だけで構成されてる気がする。
「アイテムボックス。」
黒い穴がぽっかりとあく。肩の手前まで穴に手を突っ込んで隅を探す。隅を見つけられなかったため心の中でガッツポーズをとった。
「そうそう、そんな感じだよ。皆もやってみてね。」
アイテムボックス!と叫ぶ声がたくさん聞こえてくる。なんで叫んでるのかは聞かないけど結構喧しい。
「頭の中で出したいものを考えて手を入れればそれが掴めるよ。簡単だね。
あぁ、とりあえず突っ込め、ていうのは止めておいた方がいい。アイテムリストなんかはないからねぇ。」
当然の事みたいな口調で言われたけどそれすごい重要な事じゃねえかて思うのは俺だけか?
それからなんやかんやさっきの部分集中強化を含め、無属性の魔法を覚えた。全部説明するのは長い。
「次は属性魔法だ。その属性だけの魔法はここでは教えないから、それは自分で本読むなり師に就くなりして頑張ってね。」
「「はい!」」
それから教えてもらった魔法はボール、ウォール、武器への付与、などだった。本当に基本でとても助かる。と思っていたのだが……。
不満げな顔してるやつは一度痛い目見たらいいと思う。今までの経験が有るからなんだろうが……このゲームのリアリティへのこだわりは始めたばかりの俺でも分かるからな。今までのVRMMOのようにはいかないと予想できる。
「慣れるまでは無属性でのコーティングをして操作をするとやり易いよ。慢心して実践でいきなり属性魔法自体を操作しようとしたら……ちょっとあれなことになるかもしれないから、覚悟は必要だね。」
だからそこのはっ‼それが?みたいな顔してるやつ。マジで痛い目見そうだから止めとけって。
「ねぇねぇ。あのメガネ、馬鹿やらかしそうだねぇ。楽しみ。」
……アリィ!?お前実はSか!
「これで終わり。皆さんよく頑張りました。そんな皆にこの杖をあげよう。」
まさかのご褒美に結構驚いた。
「「ありがとうございました!」」
さっき覚えた鑑定を使って貰った杖を確認する。
『無属性特化の杖』
効果は……はい、名前まんまの効果でした。これは、属性取らなかった奴にすげぇ嬉しいやつだな。だが、これは俺でも使える。武器を新調するまで接近戦の時はこの杖に切り替えよう。
俺は今まで使っていた初期杖をアイテムボックスに放り込んだ。
続々と生徒が講習所から退出していく。アリィが俺を呼ぶ。
「オフィ、私たちも出よっか。」
「おー、と言いたいところだがちょっと待っててくれ。」
「りょうかーい。」
適当な敬礼をきめたアリィを尻目に、俺は講師に近付く。
「あの。」
「お、どうしたんだい?僕からの期待値MAXな新人君。」
俺は講師に聞きたいことが有った。少し違和感を感じたのだ。講師の今までの話し方に。
「先生は、運営の方ではありませんか?」
講師の笑顔が驚きに変わった。
基礎魔法の説明回みたいなので申し訳ないです。感想、指摘でもウェルカムです。