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こちら!メイプル喫茶探偵団  作者: シナモン中毒
ことりの話
5/6

初めての依頼



「探偵団って、具体的に何してるの?」


 優里亜ちゃんに声をかけられて初めてメイプルに行った日の翌日。あたしは屋上で優里亜ちゃんとご飯を食べていた。いつものように一人でお弁当をもって屋上につながる階段にいたら、千里眼で見つけられて捕まった。内心、少しありがたかった。やっぱりぼっち飯はさみしかった。


「んー…なんだろ」

「え、何もないの?」

「だってねー。宣伝してるわけでもないし。お店にちっちゃく『お悩み相談』ってポスター出してるだけだし」

「あったっけ?そんなの」

「うん。お店の端っこに」

「それ、活動してるっていうの?」

「まあ、ないわけではないし。常連さんが颯太にいにぼやいてるのをこっそり解決みたいな?」


 探偵団と銘打って入るものの思ったよりもひっそりしたものらしい。


「…」

「残念?」

「え、いや…」

「探偵団ってのは颯太にいが名前つけてくれただけのものだからね。まだ小さかった優里亜や逸樹を元気づけようとしてくれたんだよ」

「…やさしいんだね。颯太さんって」

「うん。だからみんな颯太にいのこと、だいすきなんだ」


 思っていたものとは違うけれど、探偵団がみんなにとって大切なものだということは伝わってくる。それだけで少しあたたかくなる。


「今日もメイプル行くの?」

「そうだね。お店の手伝いしないと颯太にいから出禁くらっちゃうし」


 と、その時優里亜ちゃんのスマホが鳴った。


「あれ、颯太にいからlineだ。珍しい」

「颯太さんから?」


 なんだろう、思っていると優里亜ちゃんがスマホをみせてくれた。




『今日、店に来い』

『久々の依頼だ』




「依頼って」

「まさか探偵団の!?うわ、えー!いつぶりだろ」

「あ、そんな反応するくらい依頼ってないんだね」




**********




 放課後、あたしは優里亜ちゃんに連れられ、喫茶店メイプルにやってきた。風間君はもう先にメイプルにいるらしい。優里亜ちゃんが『見て』言ってのだから間違いないのだろう。


「颯太にいー!」

「うるせえ!!」

「颯太にいが一番うるさいよ」


 昨日と何も変わらないように見えるメイプルだが、相違点があった。


(うわ…綺麗な人……)


 カウンターにいる一人の女性。すらりと背が高くて手足は羨ましいくらいにほっそりしている。何とも言えない柔らかな雰囲気を持った人だ。颯太さんのギャルソンと同じようなデザインのウエイトレスの格好をしていることからこの店の従業員であるということが分かる。


(あ、もしかしてこの人が…)


「カオルさん!」


 やっぱり、昨日優里亜ちゃんたちが話していた『カオルさん』だった。まさかまさか、カオルさんがこんなにもきれいな人だったなんて。

 そういえば優里亜ちゃんも颯太さんもカオルさんは異能を持った能力者だと言っていたけれどどんな能力を持っているんだろう。


「優里亜ちゃん、いらっしゃい。あら、あなたがことりちゃんね。ようこそ、メイプルに」

「あ、ははは、はい!」

「あはは、ことりんどもりすぎ!カオルさん綺麗だからびっくりしちゃうのも分かるけど」


 同性なのにもかかわらずなんでだろう、カオルさんと話すとすごく緊張する。


「ふふ、天津カオルよ。よろしくねことりちゃん」

「はい!」


「そういえば颯太にい。依頼って言ってたけど…」

「ああ、依頼人、それ」


 そう言ってコーヒー豆を挽きながら颯太さんはカオルさんを指さした。


「え、カオルさんが!?」

「そうなのよ」

「何かあったんですか?」

「実はね…」




**********




「「ストーカー!?」」

「そうなのよ…」


 昨日みたいに優里亜ちゃんと並んでカウンターに座り颯太さんにカフェオレを出してもらった。なんだかんだ今日も無銭飲食。きっとこうしていつも優里亜ちゃんや風間君はごちそうになっているんだろうな。


「ストーカーって大丈夫なんですか?」

「今のところ実害らしい実害はないんだけどね」


 カオルさんはメイプルの近くにある大学に通っているらしい。実家は県外で現在は大学近くのアパートで独り暮らしをしているそうだ。


「カオルさんって大学生だったんですね」


 こんな色気出るものなのだろうか。あたしたちとそこまで年が変わらないというのに。


「そうよー。これでも法学部なんだから」

「法学部…」

「むしろ犯罪増やしてるよね、現在進行形で」

「困ったものね」



「実害らしい実害はないって言ってましたけど何かあったんですか」

「そうなの。これ、見て頂戴」


 そう言ってカオルさんはエプロンのポケットから一枚の紙を取り出した。そこには新聞も文字を切り抜いて


『はやく こっち向いて』


「「こわっ!!」」

「そうなのよぅ。怖いわよね」

「のんきですねカオルさん!」

「これやばいやつじゃん!」

「他にもあるのよ?」



『へんじは まだ?』

『いつも キみを 見てるよ』

『あの 金パツの 男は誰?』



「「こわっ!」」

「他にも隠し撮りの写真が送られてきてたり困ってて」

「なんでそんなにのんきなのカオルさん!」

「実害ないって言ってますけど限りなくアウトに近いアウトですよね!!」

「てか金パツって間違いなく颯太にいのことじゃん!」


 相変わらずのほほんとした様子のカオルさん。


「困っているからね、みんなに助けてほしくて。このストーカーさん、捕まえてもらえないかしら」



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