恋する乙女
はやる気持ちを押さえても、うきうきと弾む足取りは押さえ切れず。必死に冷静になろうとしても、ついつい笑みが零れてしまう。
何ヵ月ぶりだろうか、こうして会えるのは。指折り数えてみると、最後に会った日から三ヵ月強もたっていた。
「あぁ…どうしよ。なんか今更緊張してきちゃった…」
待ち合わせ場所に一歩ずつ近づくにつれて、鼓動が早くなる。きっと顔なんて耳まで赤いだろう。
制服のブラウスの上から片手でそっと胸を押さえ、大きく深呼吸する。
待ち合わせの場所に15分も早く着いてしまった。
相手は、まだのようだ。ほっとしたような、残念なような、複雑なため息を吐いて近くのベンチに座る。
「来てくれるよね…約束したもん。…大丈夫だよね」
大丈夫と自分に言い聞かせるように呟き、ぎゅっと鞄を握り締める。
そわそわと、行き交う人々を見つめ、相手の姿を探してみる。
待ち人はまだまだ現れる様子がない。
出会ってから今まで、ずっと片思いだった。どんなに好きだと伝えても、十近く離れた自分を妹くらいにしか思えないらしく、相手にされなかった。
それが悔しくて、悲しくて、早く大人になりたいと願ってきた。
今日、漸く二人が出会った時の、彼の年齢に自分が追い付いた。
高ぶる気持ちを抑えようと大きく息を吐く。緊張からか手が震えている。
本日、何度呟いたかわからない位に呟いた大丈夫を呟きながら、もう一度ゆっくりと深呼吸をしたその時。
「あゆみちゃん、ごめん待った?」
顔を上げると、トレードマークになった風船を差出し、にっこりと笑う彼が目の前に立っていた。
「誕生日おめでと。今日はどこ行こうか」
優しく問う彼に、胸がじんと熱くなり泣きたいような、疼くような、甘い痺れに似た気持ちが込み上げてきた。
「お?どうかした?俺の顔、なんか付いているか?」
「いえ…そんな事ないです」
凝視しすぎたらしい。慌ててて首を振り、否定する。
そして改めて架の瞳を見つめ、意志を込めて微笑んだ。
「あのね、私----」