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3. 間宮陽日と役員決め    

役員決めるときってこんな感じですよね

 

 私は、ヘタレだ。十七年変わらないし、そんなこととうの昔に気付いていた。だが、落ち込まずにはいられない。



 私、間宮陽日は今日――学級委員長になりました。


「そろそろ役員決めるかー」

 担任がやる気なさげに呟く。

「一応聞くけど立候補はいるか」

 教室は水を打ったように静まり返る。

「予想通りの反応をありがとう。んじゃどうすっか。くじにするか?」

「先生。ここは平和的に話し合いで決めませんか」

 誰だよ。平和的解決法はじゃんけんと決まっているだろ。

「佐伯君は? 頭いいし。リーダーシップもあるし」

「でも佐伯は生徒会だしな。仕事多くて大変だろ」

「じゃあ……」

 あー。やな予感。

「間宮さんは? ほら勉強できるし、責任感もあって安心ていうか」

「確かに間宮なら安心だよな」

「あ、あの私は……」

「だそうだが間宮。お願いできるか?」

 やーだー。

「え、と」

「なにかできない理由でもあるの? 確か文芸部だったよね。運動部じゃないし、間宮さんバイトもしてないから大丈夫じゃない?」

 こわいこわいこわい。ギャル怖い!

「……やります……」

 間宮はギャルの圧力に屈した。

「おう。ありがとうな間宮。みんなも協力してやれよな」

 担任のいい笑顔に殺意が湧く。

「他の役員も推薦はいるか?」

「ねえ、一緒に書記やらない?」

「あー。いいよ。楽そうだし。内申上がるし」

「せんせー。私たち書記しまーす」

「お。立候補か。えらいな」

「じゃあ俺会計やるわ」

「なんだ。みんなやる気あるじゃないか」

 なに。このモヤッと感。一番面倒な役押し付けて、楽なポジションで内申あげる、みたいな。しかも立候補だからいやいやさせられた私がやる気ないみたいな。ま、ないけど。

「あとは副委員長だけだな。どうする。立候補か推薦か」

 あー。微妙な立ち位置だよね。委員長の補佐って言えば楽そうだけど、私が休んじゃった時とか代役しなきゃいけないし。また押し付け合いか?

「俺、やるよ」

 すっと手を挙げたのは、佐伯君だった。

「え。生徒会で忙しいんじゃない?」

「役員会は生徒会側で出ないといけないから委員長は無理だけど、副会長ならできる」

「うそー。佐伯君がやるんなら私も書記か会計やりたかったー」

 女子の本音が聞こえるぞ。楽して佐伯君とお近づきになりたいってか。

「じゃあ決まりだな。間宮、役員の名前まとめて提出しておけ」

「……はい」

 さっそく仕事かよ。てかまとめんのくらい書記がやればいいのに。他に仕事ないんだし。

 担任から書類を受け取り、空欄に名前を埋めていく。が。

「すみません。書記って誰と誰でしたっけ? あと、会計」

 みんながマジか、みたいな顔をしている。

「え。間宮さん、もう忘れたの? 私と杏だよ。会計は拓斗」

「間宮さんて、意外と記憶力ないんだね」

 うーわー。馬鹿にされてるよ。やだなーその見下した感じ。

「いや。名前、教えてくれませんか? 私、あなた方のこと知らないので」

『は?』

 クラス中が疑問符を浮かべている。

「なんで知らないのよ。何回か授業で同じ班になってるのに」

「いや。会話したことないですし。それに私……興味ないことは一切頭に入らないので」

 ぼっちの副作用というか。

 書記の女の子は、顔を怒りで赤くする。

「じ、じゃあ! 佐伯君は? 佐伯君は知ってるのよね? 興味があるってこと?」

 あぁ。あれか。公開告白→公開失恋的な。そんなに辱めたいか?

「いや。佐伯君は部活で何度か絡んでるし。あと、フルネームは知らない」

「言ってなかったっけ? 秋人だ。ちゃんと覚えろよ?」

 佐伯君が読んでいた台本から視線を上げて言った。佐伯君は演劇部で役者をしている。台本はほとんどうちの部長が書いているんだが、私も何作か提供したことがあるのだ。

「忘れないって。あ、各自記入してもらえますか? 名前」

 そっちのが早い。

 書記の子達はイライラしながら女の子っぽい丸文字で名前を記入する。会計の男子のもとへも出向く。

「ここに名前書いてください」

「おー。間宮ってさ、やっぱ変人だよな。なんか今ので納得したわ」

 ……は?

 私は変人の巣窟で苦労している常識人であって、間違えても変人そのものではない。

「そんなわけないじゃないですか。変なこと言わないで下さいよ」

「変人に囲まれてたら染まったんじゃね? 思考とか」

 朱に交われば赤くなるってか?

「断じて、変人などでは、ありません」

「ま、そういうことにしとこーか」

 釈然としない。




「ということがあったんです」

 その日の放課後、部室で事の顛末を説明する。

「そっかあ。確かに陽日ちゃんは責任感強い子だからね。仕事も任せられるよ」

 優しいほほ笑みを浮かべながらそう言うのは、在原先輩だ。こんなに優しいのになぜか部長と仲がいいという、摩訶不思議な。

「てか、嫌なら断れよ馬鹿」

「でも部長、ギャルの圧力には勝てません」

 部長は興味なさげに原稿を推敲している。

「ヘタレが」

 おっしゃる通りで。

「大丈夫だよ。ほら、いざとなったら明がいるし。千里もこうは言ってても陽日ちゃんが困ってたら助けてくれると思うよ。あ、もちろん俺もいるけどね」

 優しすぎる。鬼畜な部長といるとこの優しさのありがたみがよくわかる。

「自業自得だ。自分でどうにかしてろ馬鹿」

 ほらこれだ。

「大丈夫です。これでもパシラレ歴は長いんです」

 私がため息をつくと、在原先輩が無言で頭を撫でてくれた。

「どーでもいいが、原稿だけは落とすなよ。連載は本決定したから」

「はい! 念願の連載ですから!」

「ほんとに良かったね。陽日ちゃんの小説、楽しみにしてるよ」

 あー。癒される。こんな人間いるんだなぁ。明先輩が惚れるのもわかるよ。これぞまごうことなきイケメンだ。顔だけの奴等とは違う。

「じゃあ、体壊さないようにがんばってね」

「壊してでもやることはやれ」

 鬼畜め。

「またそんなこと言う。千里はもっと素直になったほうがいいよ」

「俺は皮肉れてはいるが嘘はつかない」

「そういうこと言ってるんじゃないのに」

 在原先輩は呆れたようにため息をついて、部室を出ていった。

「なんで部長に在原先輩みたいな友達がいるのでしょうか。そしてなぜ部長にも友達がいるのに私にはできないのでしょうか。納得できない」

 在原先輩の去った後を見ながらしみじみ呟けば、後ろから蹴り飛ばされる。


 いつも思うけど、私の扱いひどくないですか!?


新キャラ登場。佐伯は生徒会書記です。

あと、一話でちらっと登場してた在原も登場。


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