(2)急接近
ある月曜日――『J moon』の定休日。
この日、蓮華と奏汰は、昼間から東京で遊び、夜は、銀座のバーへ繰り出すことになっていた。
なんでも、優が以前働いていて、彼の師匠がバーテンダーをしている店だという。
その師匠には、蓮華も、多少、カクテルを習ったことがあるらしかった。
『J moon』と似た、たまにジャズのライブが入るバーだった。
他の店を見ることも勉強だと思った奏汰は、非常に興味が湧いた。
その店へと、向かっていた時には、バー『Limelight』では、彼らの良く知る女性がひとり、既に、カクテルグラスに口をつけていた。
「待ち合わせですか?」
長い、赤茶色のストレート・へアが揺れ、彼女が顔を上げた。
「優さん……?」
私服姿ではあるが、『J moon』で目にする、いつもの人好きのする、穏やかな笑顔だ。
紺色のシックなワンピースと、いつもよりも小振りなアクセサリーを身に付けた、蓮華の友人、脚本家の明日香であった。
「偶然ですね、お仕事の帰りですか?」
「ええ、まあ」
「ここ、僕の師匠のお店で」
「あら、そうだったの?」
「はい。師匠にというより、ここで働いてる友達に会いに来たんですが、休みだそうで」
「そう。待ち合わせじゃないのなら、隣、いいわよ。私もひとりだから」
明日香に促され、優は、彼女の隣に腰かけた。
「今日は、ダーリンはどうしたんですか?」
アメリカ人の彼マークのことだ。
「ちょっと、仕事でドイツに行くって。しばらく、日本には戻らないの」
優は、気遣うような表情になった。
「そうですか。それで、どこか元気がない感じがしたんですね」
「さすがね。バーテンダーの観察眼には、見抜かれちゃったかしら?」
明日香は、いつもの強気な態度ではなく、困ったように笑った。
「マークがいないのもあるけど、仕事で、ちょっと嫌なこともあってね」
「差し出がましいようですが、僕で良かったら、何でもお聞きしますよ」
「優さん、今日はプライベートでしょう? 仕事させてるみたいで、悪いわ」
「構いませんよ。明日香さんの友人として、聞きますから」
明日香は、一瞬、目を丸くするが、「ありがとう」と言って、控えめに微笑んだ。
脚本家の仕事をしていると、その登場人物になり切ってしまうことがある、と明日香が切り出した。プライベートであっても、似たセリフを使ってしまう、など。
「マークや他の人にも、確認したりするの。男の人って、こういう時、こういう風に言う? とも聞いたり。マークは、よく実験台みたいにもなってくれて。ストーリーはもちろんだけど、結構、セリフとか生み出すのって、苦労するのよ。新しいドラマ書く度に、登場人物全員変わるわけだから、性格も、喋り方も、内容も、全部違うわけでしょう? それなのに、一つのドラマで、せいぜい十一回分程度で終わってしまう。打ち切りだと、八回くらいになっちゃったり。たまに、空しくなるわ」
一口すすってから、続ける。
「別に、ネタのためばかりじゃないけど、男女の出会いとか、シチュエーションとかに、常にアンテナが働いちゃうのよね。それで、創作に入り込んじゃうと、実践したくなっちゃったり。私、おかしいのかしら? 自分でもバカなことしてる気がするんだけど」
優が、感心したように言った。
「そういうの、聞いたことあります。役者になった友達も言ってましたよ。その役に成り切ってしまうから、悪役を演じている期間は、プライベートでも、人相まで危なくなるとか。だから、そういうものなんでしょうね」
明日香が、わかると言うように、大きく頷いた。
「そうやって、人が必死に、魂込めて編み出したものをさ、『こんな女はいない』って、演出家の、しかも男が言ったのよ? あんたが、どれだけ女のサンプル知ってるかってのよ。いろんなタイプの人がいるのに。かなりの数のセリフも書き換えられてて、私の気に入ってたセリフまで……! そういうことされると、後のための伏線とか、全部変わってきちゃうのに。だったら、私の名前はスタッフロールに出さないで、って、さっきケンカしてきたの」
「そうでしたか。それは、大変でしたね。多分、その演出家の人みたいな、自分の価値観でしか物を量れない人って、どこでもそうなんですよね、きっと。自分の専門分野でなかったとしても、専門家を前にしていても、自分の考え曲げたくないんですよ。頭の固い人に多いですよね」
明日香は、頷きながら、笑った。
「今日は、ありがとう、愚痴聞いてくれて」
「あんまりたいしたことは、言ってあげられませんでしたけど」
「そんなことないわよ。助かったわ!」
『Limelight』を出た明日香と優が、駅に向かう間、話を弾ませていた。
「そう、そういうことだったの?」
突然、明日香の知らない女が、現れた。
「ああ、こんばんは。ボーカリストのレイナさんです」
優が、隣の明日香に紹介した。
「今日は『Limelight』は、ライブじゃありませんでしたよね? どうしたんですか?」
優は、現れたウェーブ・へアの女に、微笑んだ。
女は、優を睨みつけた。
「その女がいたから、私が散々誘ったのに、応じなかったのね? だったら、そう言えば、良かったじゃないの!」
いきなり直面した修羅場に、明日香は目を見開き、女と優とを見つめた。
優の方は、「そういうわけじゃないんだけど……」と言いかけるが、女は聞く耳を持っていなかった。
「ふうん、なかなか美人じゃない。だけど、あなたみたいな尻の軽そうな女なんか、優さんとも誰とも、どうせ、長続きしやしないわよ」
女のその嫌味は、今の明日香には、無視出来ないものがあった。
「だったら、取り返してみれば? あなたの魅力で」
「なんですって!?」
それが出来ないからこそ、女は、明日香に八つ当たりをしただけなのだが、図星を指されると、わーっ! と、泣きながら走り去った。
明日香の方も、カツカツとヒールの音を立てて、反対方向へと走り出す。
やっぱり、今日はツイてないわ。酒飲んで、寝ちゃおう!
そうヤケになっていた時だった。
「明日香さん」
追いついた優が、彼女の肩に手をかけた。
「ごめん、嫌な思いさせて」
明日香は、申し訳なさそうな彼の顔を見上げた。
「どうして、彼女のこと、追わなかったの? 泣いてたのに」
「さあ、どうしてかな」
優の目が、やさしくなる。
『J moon』での彼とは、違うやさしさに、明日香には思えた。
「多分、きみの方が、淋しがり屋だからじゃないかな?」
目を丸くした明日香が、すぐに笑う。
「そこで、そういうことが言えるなんて、優さんて、いい男ね! 日本人だけど」
優も笑う。
「ダテに年は食ってないからね」
「そんなこと言って、私や蓮華より、二つ上なだけでしょ?」
「そうだね、ははは、まだまだかな?」
ひとしきり笑うと、明日香は、険の取れた顔になっていた。
「仕事で関わる人も、プライベートでも、男女関係なく、私のこと強い女だと思ってる人が多いのに。だから、こういうパターンだと、いつも、相手の女に、皆、気を遣うわよ」
優は、いつもは見せない、勝ち気な表情になった。
「ただ強いだけの人間なんて、いるわけないのに。そんなことも見抜けない人たちは、放っておいたらいいんです」
明日香が笑い出した。
「プライベートだと、結構、辛口なのね。ドライマティーニみたい」
「自称『ギムレット』なもので」
にっこり、優が笑った。
「ギムレットが出て来る小説は、読んだことあるけど、ギムレットは、飲んだことないわ。どんな感じなのかしら?」
明日香が、興味を持った瞳で、優を見上げた。
それは、カクテルにだけではなく、目の前の男に向けられた言葉だった。
「試してみますか?」
優のあたたかい視線から、明日香は目が離せなくなった。
彼の指が、彼女の顎を、やさしく持ち上げると同時に、彼女の瞳は閉じられていく。
明日香の腕が、優の首に回された。
バー『Limelight』に向かう途中の、奏汰と蓮華が通りかかるが、二人の姿を目にすると、立ち止まった。
「あれ? 優さんと、明日香さん?」
抱き合い、口づけを交わす二人の姿が、外国映画のワンシーンのようで美しいと思った奏汰は思わず見蕩れていたが、蓮華の方は特に反応はなかった。
その後、『Limelight』で、二杯だけ飲んだ奏汰と蓮華は、それぞれの自宅へと帰った。
『Limelight』では、蓮華の口数が少なかったように感じた奏汰だった。
どこか上の空のようにも思えた。
それが、気になった奏汰は、思い過ごしでないとしたら、どういうことなのかと、あれこれ考えた。
その結果、一番認めたくない考えが、一番しっくりくることに、愕然とした。
蓮華は、これまで、優とは友人関係にあったが、実は、彼をずっと好きだったことに気が付いたのではないか、ということだった。
優は、女性受けが良いばかりでなく、男の奏汰から見ても、人間的な魅力があった。
その彼と、十年もの間、友人としてでも付き合いのあった蓮華は、彼の良さがを一番わかっているはずだ。
自分など、彼女にしてみれば、一時的にかわいがられている存在なのでは?
優ですら、七歳上の恋人からすれば一時的な付き合いだったと聞いたのを、思い出す。
彼は、またしても自信を失いそうになった。
自分の思い過ごしであるようにと願った。
翌日の仕事後だった。
なんとなく心配だった奏汰は、なるべく蓮華の近くにいるようにしていた。
「蓮ちゃん、なんか、今日、変だったよ? どうかしたの?」
奏汰の思い過ごしではなかったことが、優のその一言で、確信に変わった。
「もうっ、相変わらず、鋭いわね」
蓮華が苦笑いしてから、真面目な顔になった。
「昨日、優ちゃん、銀座にいたでしょ? ある女性と、かなり親密だったようで」
面と向かって切り出した彼女を、焦ったように見たのは、奏汰の方だった。
優は、特に言い訳する様子もない。
「ああ、明日香さんとね、たまたま『Limelight』で、一緒になったんだ」
「へー、あたしの友達って知ってても、たまたまで、ああいうことするんだ?」
横目になる蓮華に、優は悪びれることもなく、笑った。
「なんだ、見てたのか。声かけてくれれば良かったのに」
「こっ、声なんか、かけられるわけ、ないでしょっ!」
蓮華が声を荒げた。
優が不思議そうな顔になる。
「それがどうかしたの? なんか怒ってるの?」
奏汰も、そうだ、そうだと言うように、蓮華を横目で見る。
蓮華が、ムッとした顔になった。
「だって、明日香ちゃんにはマークって良い人がいるんだし、……あたしとも友達だし……、優ちゃんは、あたしの仕事仲間でもあるんだから、その……」
歯切れの悪い彼女のセリフは、彼女自身の言葉を、詰まらせた。
「そういうこと言うのって、蓮ちゃんらしくないよ。きみの恋愛観は常識にはとらわれていなかったはずだよ?」
「そ、そうなんだけど……」
口の中で言葉を飲み込んだ蓮華は、そっぽを向いた。
「私のようなお嬢様には、優ちゃんのヘンな恋愛観なんか、理解できないわっ!」
「えっ!? おじょう……!?」
優がびっくりしている間に、蓮華は、すたすたとそこから離れていった。
「……そうかぁ、随分、長く引っ張ったギャグだったなぁ! これは、さすがに読めなかったよ!」
笑い出す優と、怒っている蓮華の背を見る奏汰は、どちらも普通の人種ではないと思うのだった。
優が先に帰り、奏汰と蓮華は二人きりになるが、どちらとも話を切り出すことはなかった。
蓮華は、これまでになかった感情に戸惑いを感じているように、奏汰には見えた。
いったい、私は、どうしてしまったのかしら?
明日香ちゃんが、二股かけてても、理解してたつもりだったし、今まで、優ちゃんの恋愛沙汰を見てきても、なんとも思わなかったのに……。
なぜ、今、自分はこんなにも動揺しているのか。
――と。
やっぱり、本当は、優さんのことを……?
だが、それは、聞きたくても聞けないでいた。
自分が口に出してしまうことで、蓮華が、優への気持ちを認めることになると、自分とは別れが待っているかも知れないのだ。
優も、蓮華を受け入れてしまうかも知れない。
反対に、優に、蓮華が振られたことになった場合は、自分が彼女をなぐさめるという奇妙なことにもなるのだろうか?
奏汰は、どうしていいかわからなかった。
だから、蓮華に尋ねることも悩みを聞くことも、出来ないでいた。
そのうち、蓮華が、たあいのない話をするが、優のことには触れなかった。
翌日、『J moon』閉店後に、渦中の人、明日香が現れた。
内心、奏汰はドキドキしながら、蓮華と優を見るが、二人ともいたって普通である。
「ごめんね、蓮華、時間外に来て。ちょうど、横浜で仕事の打ち合わせがあって、今終わったとこなの。すぐ帰るから」
「いいのよ。寄ってくれてありがとう!」
にっこり蓮華に微笑んだ明日香は、カウンターの中にいる優に、声をかけた。
「あとどのくらいで出られそう?」
「もうすぐ片付けが終わりますから」
営業スマイルで、優が答える。
「優ちゃん、もう上がっていいわよ」
「えっ、でも……」
「ここは大丈夫よ。せっかくなんだから」
そう言った蓮華に、明日香がウィンクした。
「サンキュー、さすが蓮華! ありがとね!」
私服に着替えた優の腕を取ると、明日香が「仕事が一区切り付いたの。明日、ランチでもどう?」と尋ね、優がいつもの笑顔で「いいですよ」と答える。
明日香が、嬉しそうに彼を見上げた。
それを微かに複雑な表情で見守る蓮華と、そんな彼女を、さらに複雑な思いで見る奏汰だった。
他の従業員は、そんな二人には、まったく気付いておらず、魔性の女と、長身の優のツーショットが意外に似合っていると、呆気に取られるほどに注目していた。
「大分、元気になったみたいですね」
「あなたのおかげよ」
優の腕に手を絡める明日香が、これまで以上に親し気な笑みを贈る。
「それは良かった。お役に立ててなによりです。マークさんは、いつ戻られるんですか?」
「さあね。ドイツに行ってから二週間経つけど、何も言ってこないわ。電話もメッセージも何もないのよ? どうかしてるわ」
視線を落としてから、明日香がからかうような目になり、優を見上げる。
「このまま、優さんに乗り換えちゃおうかしら?」
優が笑う。
「またまた! そんな気ないくせに」
「本当よ」
明日香の表情が、女になった。
「あなたなら、マークを忘れさせてくれるかも」
優の首に腕を回し、引き寄せると、明日香から軽く口づけた。
「今日は、一緒にいて」
一瞬、目を丸くする優だったが、彼女の瞳を見ているうちに、やさしい表情になる。
「いいですよ」
ホテルのベッドでは、優の胸にもたれかかる明日香が、明日香の肩を抱く優が語り合っていた。
「優さんて、やさしいのね。細かい配慮が行き届いてたわ」
「そうなの?」
「魔性の女だからって、物怖じする男もいれば、これまでの私の過去の男たちと自分とを比べたがったりする男とか、外国人と比べてどうだとか、今までは、興味本位な質問する男ばかりでね。私も見る目ないんだか……。結局は、日本人の男って外国人に引け目を感じていて、自分に自信がない人が多いのよ。そういう日本人には、まったくうんざりしていたわ」
優は、明日香の話を興味深そうに、黙って聞いていた。
「でも、あなたは全然違う。私の恋愛遍歴をわかっていながら、……私が外国人好きだとも知っていながら、物怖じすることもなかったし、興味本位でもなかった。引け目なんて、全然感じる必要なかったんだものね。意外と背が高いし、着やせして見えたけど、筋肉もついてるし」
「ああ、学生の頃、水泳は好きでやってたからね。マラソンは嫌いだったけど。今でもたまに泳ぎに行ってるし」
優が笑って答えた。
「その人の過去は、関係ないよ。相手が話したかったら別だけど」
「そうよね、職業柄、聞き上手だから、話し易いのよね。それに、外国人並みに女性を立ててくれてるわ」
笑ってから、明日香の瞳が小悪魔的に、きらりと輝いた。
「相当、遊んできたでしょう?」
意地悪く、明日香が言った。
「それは、お互い様でしょう」
優が、にっこり答える。
「でも、愛情は感じられなかったわ。心はこもっていたけど」
「それも、お互い様じゃないの?」
「魔性の女と、ちょっと前の言葉で言ったらプレイボーイかしら? いいコンビじゃない?」
「プレイボーイなつもりは、ないんだけどね」
「あら、自覚なかったの? まあ、いいわ。本来『playboy』って、多趣味や多才な男性の意味もあるんですって」
「なるほど。じゃあ、そっちのプレイボーイってことにしておこうかな」
優が笑った。
くすくす笑ってから、明日香が再び切り出した。
「ここからは取材も兼ねて、悪趣味なことも聞いてもいい?」
「えっ、なに?」
「男としたことある?」
「うーん、さすがにないなぁ」
はははと、優が笑った。
「じゃあ、蓮華とは? こうなったことある?」
「同じ質問のように思えるけど?」
明日香が顔をしかめる。
「ひどいわねー。あの子だって、女じゃないの」
「蓮ちゃんはかわいいし、なかなか熱いところもあって、面白い子だとは思うけどね。彼女とは、ずっと『男の友情』なんだよ」
「うそっ!?」
明日香が、ガバッと、ベッドの上で起き上がった。
「十年も、男と女が付き合ってて、一度も関係しなかったって言うの!? 『昔恋人、今友達』なら私にもいるけど、そんな男友達、私にはいないし、周りでも聞いたことないわ!」
「そういう関係も、あるんじゃないかな」
ゆっくり起き上がった優が、穏やかな表情になる。
興味津々な明日香が、矢継ぎ早に質問した。
「蓮華が、もし、『淋しがり屋』で、あなたのことを望んでいたら、どうするの? それでも、友人としか接しないの? そんなことが出来るものなの?」
「う~ん、そんなこと、今までなかったからなぁ。考えたこともないけど……。有り得ないとは思うけど、もし、その時、彼女が『女』だったら……、応えちゃうかも。きみのように」
優は、明日香を押し倒した。
「本当のところはどうなの? そうやって、ごまかそうとしてるんでしょう?」
「いいえ、別に。あなたが、かわいいからですよ」
「魔性の女をかわいい呼ばわりするの? いい度胸ね」
「度胸だけは、あるみたいです」
それ以上、会話はなかった。
うっすらとかかるBGMの中、布のこすれる音、囁く声、溜め息が入り混じる——
数日が経った。
『J moon』では、ライブが入っていた。
奏汰のように若い男子が、サックスを吹いていた。
閉店後、従業員たちが帰った後で、蓮華と、まだバーテンダー姿の優が、何気ない会話をしていた時だった。
「今日のあのサックスの子、いいフレーズ吹くようになったよね」
「そうですね」
「優ちゃん」
「はい」
蓮華が、キッと、睨むように、彼を見上げた。
「あたし……、優ちゃんを、誰にも取られたくないわ」
はっきりとした、強い口調であった。
「蓮ちゃん……?」
目を丸くしていた優だが、そのうち、真面目な表情へと変わり、蓮華に向き直った。




